ペルト 「タブラ・ラサ」 - 6 - (2004年3月)
Vn:G・クレーメル Pf:A・シュニトケ 他
Sondecks指揮 リトアニア室内管
(ECM 817 764−2)輸入盤
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【 現代オンガク 】
高一でハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン、
高二でマーラー、高三でブルックナーと勢力拡大にいそしんだ私が、現代オンガクという
怪しげな新興宗教まがいに、興味を抱くのに時間は掛からなかった。
高校時代から陳腐ながら自作をせこせこと作り始めていた私は、
やはり同時代の「周り」が気になり始めた。
今考えると、当時のNHK−FMは元気なもので、定期的な現代音楽番組をかなり放送していた。
採算度外視、見上げた根性だ。
ドイツ各地の現代音楽祭や「東京の夏」など、訳も分からず聴いている自分に酔ったものだ。
そのままその方向へ進んでいたら、私は今以上に社会から孤立していただろうが、色々考えもし、
現代オンガクと距離を置くようになった。今、愛聴しているプロコやショスタコも
「現代音楽同然やん」と言われたら、実も蓋も無いが、私なりの基準で現代音楽は聴かなくなった。
そして大学に入って、大学オーケストラに入る。
やっぱり大学というのはいろんな人間が集まっているもので、
私よりクラシックに詳しい人もいたりして、
彼らに追いつけ追い越せと、ますます音楽にのめり込んだ。メリメリ。
そんな或る日、ある先輩から「私向きの現代音楽があるぞ」と薦められた。
それが本日お話します「CD感想」です。
先輩には多くの曲を紹介してもらったが、この1枚は一生忘れがたい音楽であり、
今でも無駄金と想像しつつ、現代オンガクを購入している私がいる。
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【 CD感想 】
「こうやってな、膝小僧を抱えて聴くんだよ。電気を消してな、
目を閉じる。一人で聴くんだぞ!
そしたらいろんなモノが見えてくる。
いろんな事を思い出す。そう言う曲だよ。」
そういって、先輩はこのCDを貸してくれた。
今は随分有名になった?ペルトだが、
当時は新作がリリースされるハシリだった。
ジャケットの表紙が美しい配色と構成。
その裏ジャケットは、公園でテント生活しているような
オッサン(ペルト)の惚けた表情。
CDは4曲からなる小曲集だが、終曲の「タブラ・ラサ」が断然好きだ。
弦楽・独奏ヴァイオリン(2本)そしてプリペアド・ピアノからなる峻烈かつ静謐。
ある時は、チベットの山奥で響いているような。
ある時は、ガムラン音楽と同化したような。
こんな感動的な現代音楽があったのか、と恐ろしく嵌ってしまった。
プリペアド・ピアノなるものも、この時が初体験だった。
J・ケージによる作品が相当ある事は知っていたが、知っているだけで聴いたことはなかった。
いざ、聴いてみて、なんとまぁ美しい響きか。
鐘のような、琴のような、繊細で幅の広い表現力。
それに2本の独奏ヴァイオリンがたゆたう様に絡みつく。
全体は二部構成だが、Pピアノが活躍するのは後半部。上昇音型で現れる
が、一瞬で世界が変わる。素晴らしい手法だ。