さくら(隊長作)

ビゼー  「アルルの女」組曲 第1番&第2番 他  - 8 -  (2004年4月)
   訪問者数 ケーゲル アルル


ケーゲル指揮 ドレスデン・フィル
 (ベルリン・クラシックス 0094772BC)輸入盤

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  【 CD感想 】

  数年前、許光俊の音楽ブッタ斬り論が持て囃された。
  我が隊もお恥ずかしながら、随分、氏の著作を読み、かつ推奨盤を買いました。
  音楽に対する批判精神は、氏の影響が大きいんだろな。
  音楽・芸術っつったって、所詮は商売。
  売れなきゃ一文にもならないのが、悲しい運命(さだめ)。
  音楽情報誌は音楽産業と持ちつ持たれつで、タイアップにならざるを得ない。
  誌面で絶賛し、演奏会やCD販売に繋げる。
  音楽興行主やCD販社は、音楽情報誌に広告を依頼する。
  
  どの誌がどうのこうのと書けないが、こういった商業誌が真実だけで記事
  が埋まっているかは...賢明な読者ならご推察のとおりでしょう。多分。
  
  こういったモドカシイ現実に風穴を開けた論調が許氏だった。
  そんな氏が絶賛推薦していたのが、東ドイツ崩壊とともに
  ピストル自殺を遂げたヘルベルト・ケーゲルでした。
  当時のお茶の水や外資系CD店では続々とケーゲルCDを煽り立て、
  我々の購買意欲を掻き立てた。
  ケーゲル・コーナーなんて在ったもんナ。
  カラヤンやバーンスタイン亡き世紀末、
  日本クラシック亡者の格好のターゲットとなったんよね。
  
  今でもケーゲルのCDは売られているが、
  死んじまってる事が彼の更なる飛躍に大きな障害となっている。
  埋もれていても生きていたら、大手マネジメント会社が黄色いレーベル辺りで
  大々的に売り出していたんじゃないかしら?
  「最後の巨匠、ついに東の国から現れる!」なんてキャッチ・コピーで。
  しかし彼は自殺してて、生きていない。
  
  あの、ブーレーズでさへ、売り出したんだよね。黄色いレーベルは。
  結果はご覧の有り様だったけど。
  
  ところで、ケーゲルが自殺せず、生きていたらどうなってただろ?
  ウィーン・フィルやベルリン・フィルで華々しくマーラー全集なんかリリース。
  いや、それよりショスタコ全集だったかな。
  しかし、彼は手兵のドレスデン・フィルやライプツィヒ放送響だからこそ、
  あれほどの鉄壁演奏がなし得れたんだろう。
  ムラヴィンスキーがレニングラード・フィルでやったように...。
  
  ようやく本文です。
  ビゼーなんて...聞きます?正直な話。
  聴き始めの超ビギナー時代、カルメンと併せて楽しんだのも事実だけど。
  
  今頃、アルルについて熱く語るのもチョッピリ恥ずかしい。
  しかし、語っちゃいますよ、これを聴けば。
  て言うのも、かなりビゼーじゃ無くなってるんです、マジで。
  
  「アルルの音楽」って悲劇なんですが、どことなくカヨワクて寂しげで可憐なイメージ。
  正統派美少女って感じで、あんましいじくっちゃいけないキャラ。
  そんな先入観をぶち壊してくれます。
  それどころか、全く新しい物語が始まりそうなワクワク感で横溢。
  こんな演奏でこのオペラ観たかったなぁ。
  誰かやってくれよ、こういう演奏で。
  
  冒頭の前奏曲。
  この弦がしなりうめくさま、この身もよじれんばかりです。
  第3曲アダージェットは、マーラーが指揮したらこうなるはずです!?
  単純なものほど、物事の本質を描いてるといつも書いてますが、
  アルルのアダージェットはマーラーの先を行っていたかのよう。
  ビゼーとマーラーが繋がるなんて。
  第4曲カリヨンも戦闘行進曲のような、ひたむきで悲劇的。
  それでいて歌わせる所ではしなやかで艶やか。
  う、美しすぎる...。
  なして「アルル」ごときでここまで感動するんだろ、ってビゼーに申し訳ない気持ちで一杯です。
  この演奏においては、ケーゲルがビゼーを完全に昇天させてしまってます。
  欧州では三位一体思想が盛んですが、この演奏はまさにそうだ。
  作曲家・指揮者・奏者の三位が一体となって初めて成し得る奇演。
  
  1,300円余なので、大型CD店がお近くにある人は買った方が早い。
  確かに買っても損じゃないよな、と思いますよ。

  既に持ってるよって人は「そんなにいい演奏かなぁ?」というご意見でもいいですよ。
  かなり偏り過ぎな解釈には違いないので、好みが別れるでしょうからね。
  隊長は私ほど熱くなってませんしね。
  
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