(隊長作)

マリピエロ   交響曲第6番「弦楽のための」 (1947)  - 35 -  (2008年3月)     訪問者数


マリピエロ   交響曲第6番「弦楽のための」 (1947)

  イタリア合奏団

  ( デンオン COCO-70720 )  国内盤
  1994年コンタリーニ宮、ピアッツォーラ・スル・ブレンタ、イタリア録音

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  音楽に出会った頃や、若き青春時代は日々新しい感動の連続だった。
  そもそもクラシック音楽は名旋律や完成された芸術作品が多く、
  普通の感受性があれば打ちのめされないはずがなかった。

  それが歳とともに、感動する力は弱まり、自分の嗜好も特化し、
  なかなか「すてきだ」とまでうっとりする事は少なくなってきた。
  それだけに久々にうっとり出来る瞬間は、自分の若さを再確認できる貴重な体験。
  
  若い頃に素晴らしいと思えた作品群も大切にしたいが、この歳になって
  感動できる作品はそうそうないだけに、これは少し奥行きが違うのかな、
  なんて思ったりする。
  (隊長作)
この作曲家と作品に出会えたのはほんとに偶然で、
このCDを安いから買ったからにすぎない。

  もともと弦楽演奏が好きな私だが、弦楽四重奏より弦楽合奏の方が
  より弦の美しさは例えようもない。
  しかし管弦楽でも弦楽四重奏でもない弦楽合奏は、
  思っている以上に演奏会も少なく作品も少ない。
  しかしこういった隙間に、想像を絶する名作が埋もれていることも、
  また事実。
  
  
  モノを語るにおいては、それなりに識ったうえでないと、語ることは恥ずかしい。
  このCD紹介においては、その点だけは自分なりに慎重になって書いてきた。
  
  しかし、今回のマリピエロについては、本曲と弦楽四重奏(全8曲)しか知らない。
  一目惚れといった出会いは私的には珍しく、出会ってから半年ほど経ったが
  未だにその美しいフォルムに陶酔するばかり。

  たまにはこういった一目惚れ状態の感想も、正直な感想でいいかも知れない、
  と書き出している。
  
  雨の降る夜道を歩きながら、偶然この曲を聴いた。
  なんて美しいのか。
  京都の寺社庭園、緑色の陰、しっとりと降る雨。
  そんな世界が浮かんでくる。

  色にたとえれば濃淡の色綾なす緑の世界。
  限りなく黒い濃緑から、光に透かされた爽やかなエメラルド・グリーンまで、
  変幻に折り重なるような緑の世界。
  身も心も美しいグリーンの世界に浮遊するような音楽だ。
  
  それよりも、まだまだ自分が新しい見知らぬ世界でも激しく
  感受してゆく激しさに、嬉しくて興奮してしまう。
  禅問答のような音の流れ。
  しかしそれはひと筋ひと筋に硬い意思があって、響き合い、溶け合い、
  反発し合う中で見事なハーモニィが移ろってゆく。
  
  楽曲は4つの楽章から構成。
  特筆すべきは、第2楽章「Piuttosto lento」。
  この美しさを知らずして、この歳までクラシックを愛好しています
  なんて、よく言ってたもんだ。
  素晴らしすぎる音楽に出会うと決まってこう思ってしまうが、今回は新しい
  カタチの美学に心奪われているだけに、そんな新感覚が自分でも楽しい。

  今回ご紹介のCDは、デンオン千円CDシリーズなので購入も容易、
  かつイタリア合奏団の演奏も超秀逸。

  イ・ムジチのようなイタリア特有の弦の美しさを持ちつつ、
  激しい合奏と歌いっぷりは圧巻。
  合奏団の興奮や陶酔感がモロに顕われていて、音楽に対する熱中度が
  非常に高い。


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