(隊長作)

2008年11月25日(火)  19:00   - 236 -    訪問者数

     愛知県立芸術大学管弦楽団    外山雄三指揮
     愛知県芸術劇場コンサートホール


      山田耕筰      交響詩「曼荼羅の華」
      マーラー       交響曲第5番

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  メルマガ開始以降に限定してしまえば、意外にも音大オケ演奏会は、
  昭和音大・桐朋学園大の合同演奏会しか行っていない。
  これはどうしてかと考えてみるに、音大オケの演奏日が、平日開催が
  多い事が思い当たる。聴衆は音大関係者や一族郎党がほとんどだろうから、
  一般聴衆の集客はそれほどいらないのかもしれない。
  将来関東に戻った際は、面白いから音大オケもスケジュール工面して、   (隊長作)

訪問しよう。
  
  もうひとつ思い当たるのは、選曲。
  音大っちゅうのは、音楽を勉強する大学なわけで、私から言わせればさぞかし
  高等な音楽を習熟してらっしゃるのかと思うのだが、それが私好みに直結は   (隊長作)

していないよう。

  ある意味、音楽でメシを喰ってかなきゃならんわけだから、プロコだとか
  ショスタコなんかでは喰っていけないわけで、モーツァルトだとかショパンを
  みっちり習得した方がいいのでしょう。私としては詰まらないが。   

そんな中、愛知県には県立芸大というのがある。
愛知、特に名古屋は俗称「白い街」
(これは白いビルがいっぱい建っているだけで、
デザイン性や独自色のある街並みが無い、
ということを揶揄されている)返上に、
昔から躍起となっている。

それゆえか、名古屋の街は妙にデザイン性を重視し、
一生懸命頑張っている感はある。

  そうはいっても、伝統ある京都や、横浜神戸といった世界には遠く及ばず、
  まだまだ数十年の積み重ねが必要だろう。
  
  しかし、音楽は違う。
  関東や関西といった大都市圏と比べると、さすがに小振りになってしまう
  中京圏ですが、人口比で鑑みるにクラシックの盛ん度は関西以上だと思う。
  関西は「それだけの金を払う価値があるのか」を重視してしまうばかりに、
  結局採算性の合うものばかりに流れてしまい、採算度外視の企画が減って
  いっているように感じる。
  
  最近は混沌としてきたので興味深いながらも、関西の選曲はなかなか保守的。
  それを言っちゃぁ東京だって保守的な選曲が多いかもしれないが、数が
  モノを言い、膨大な演奏会が催される結果、珍奇な演奏会も登場してくる。
  (隊長作)

ところが名古屋。
  ここはヴァイオリンが盛んな様で、アマオケの質が本当に高い。
  旧帝国大は勿論のこと、全国区では知名度が危ぶまれる私大なんかでも
  演奏レベルは高い。それに社会人アマオケの選曲の質。
  これが非常に凝っており、来春1月のオストメール・フィルなんぞ、
  プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」をするんですが、本当にバレエと
  合体してやってしまう。バレエにオケが付属するのでなく、
  バレエとオケが対等なレベルで開催されるところに意義の高さを感じる。
  

だからして、名古屋きっての芸術系大学、
愛知県立芸大には少なからず関心はあった。
しかしここもやっぱり平日演奏会開催。
この点はがっかりです。

県立(公立)なんだから、一般人も聴きに
行きやすい休祝日の演奏会開催を考えてもらいたい。
平日に演奏会に行くのは、非常に大変なんです。

さてさて、そうやって無理をして出掛けたコンサート、
こういうのは期待も上がるし、私の中の判断基準も
上がってしまうんです。

  無理にムリを重ねてやって来た、さあ、どれほどの演奏をやってくれるんだい?
  演奏者にとっては厭な客ですよね、分かってはいます。
  しかしですね、音大と云う格式や平日演奏会乗り込みといった「私の困難」
  を加味した挙句でも、非常に素晴らしい演奏内容だった。
  
  まず、選曲。
  音大オケのプライドを感じさせる、山田耕作の交響詩「曼荼羅の華」
  (演奏時間約十分)を初聴き。
  しかし無名な作品だけあって、作品価値は疑問符。
  簡単に云えば、リヒャルト・シュトラウスのパクリもどき。
  どうせ日本人作曲家を採り上げるんなら、伊福部昭とか芥川也寸志の方が
  自分好みなんだけど、山田耕作がショボイってことが解かっただけでも良かったのかも。   (隊長作)

え?違うって?
  
  メインはマーラー第5番なんですが、芸術を学問している大学がやるということを
  考慮すれば、あと少し。どうせマーラーなら第6番あたりで攻めて欲しいし、
  大編成が無理なら第9番という手もある。しかし今回の第5番、冒頭のトランペットは勿論、
  全楽章どこを取っても滅茶苦茶難易度の高い楽曲なんですよね。
  
  しかも指揮者外山雄三がいつもと違う。
  私の知っている外山雄三は、N響で泡の抜けたビールみたいな
  退屈な演奏しかしない指揮者。それがどうしてどうして、
  もの凄く面白いマーラー解釈なんですね。おそらく同じリハ&本番で、
  N響とやってもああはならなかったでしょう。
  
  県立芸大生が外山先生の一挙手一投足を完全音楽化したから、
  あんなオモシロ・マーラーに仕上がったのでしょう。
  具体的には「酔っ払い」感の高い、うねり揺れまくるマーラー解釈。
  こういうのは生理的に合う合わないがあるんだろうけど、私的には大賛成。
  
  マーラーはやっぱデフォルメですよ。
  あの振幅の大きい、大仰で起伏の激しい感情変化にそこ真髄があるわけで、
  そこをクールに見ちゃいけません。マーラーの着いて行けないばかりの
  精神構造にとっくり没入してこそ、驚愕演奏が誕生するわけです。   (隊長作)

外山雄三マーラー、実に良い。
  
  ただし音大生、少し厳しくも言わせて貰うと、第1・2楽章まではメクルメク
  新鮮なエッセンスが横溢していたが、第3各章以降はどうしたことか。
  第1・2楽章に彫琢時間が取られすぎたのか、第3楽章以降は平穏な演奏。
  前半のノリで全楽章突っ込めていたら相当な怪演になったのに。
  練習配分責任は指揮者にあるのだから学生は可哀そうかもしれないが、
  もし可能だったら後半楽章も磨き上げて、もう一度演奏会に載せて欲しいくらい。
  

要するに、指揮者外山雄三が考えているマーラーは、
完全音楽化すれば非常に凄いってこと。

この人はもっと歳を取って、プロオケの団員も
畏怖感を感じさせるようになれれば、
カリスマ度が上がれば凄い指揮者に
昇華するんではないだろうか。

彼がやろうとしていることは凄いんだから、
あとはその指示にどこまで楽団員が附いてこれるか。
そう云う意味では、音大オケは理想的なカップルかもしれない。
外山指揮&音大オケという組合せは、絶対聴きモノ。


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  *** 過去の 『マーラー』 なコンサート感想

    * 齊藤栄一指揮 水星響 / マーラー第1番、 ウォルトン:ヴィオラ協奏曲

    * デプリースト指揮 群響 / マーラー第5番、 ハイドン第88番「V字」

    * 十束尚宏指揮 慶應ワグネル / マーラー第9番

    * 遠藤浩史指揮 厚木響 / マーラー第2番「復活」

    * サラステ指揮 N響 / マーラー第6番「悲劇的」

    * 小林研一郎指揮 早稲田大学フィル / マーラー第1番 他

    * ベルティーニ指揮 都響 / マーラー第9番

    * 山岡重信指揮 豊島区管 / マーラー第5番

    * 尾高忠明指揮 札幌交響楽団 / マーラー交響曲第6番「悲劇的」、武満徹「死と再生」

    * デプリースト指揮 東京都交響楽団 / ベルクVn協「ある天使の思い出のために」、マーラー交響曲第1番

    * バルシャイ指揮 群馬交響楽団 / マーラー 交響曲第10番(バルシャイ補筆完成版)

    * 金子建志指揮 千葉フィルハーモニー管弦楽団 / マーラー 交響曲第10番(全5楽章版、クック版に準拠) 他

    * 松沼俊彦指揮 TAMA21交響楽団 / マーラー交響曲第6番「悲劇的」 他

    * バレンボイム指揮 ベルリン・シュターツカペレ / マーラー 交響曲「大地の歌」 他

    * 長田雅人指揮 フライハイト交響楽団 / マーラー 交響曲第2番「復活」

    * 外山雄三指揮 NHK交響楽団 / マーラー 交響曲第5番、 尾高尚忠 交響曲第1番(第2楽章付)

    * 若杉弘指揮 NHK交響楽団 / ウェーベルン パッサカリア、 マーラー 交響曲第9番

    * 京都フィロムジカ管弦楽団 金子建志指揮 / 伊福部 交響譚詩、 マーラー「巨人」(ハンブルク稿)

    * 豊田フィルハーモニー管弦楽団 八城崇幸指揮 / マーラー 交響曲第1番「巨人」 他

    * SNS管弦楽団 森和幸指揮 / マーラー交響曲第5番、 ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」

    * オストメールフィルハーモニカー 角田鋼亮指揮 / ショスタコーヴィチ P協奏曲第1番、 マーラー交響曲第6番「悲劇的」

    * オーケストラハモン 長田雅人指揮 / マーラー 交響曲第2番「復活」

    * FAF管弦楽団 森口真司指揮 / マーラー 交響曲第9番 他

    * フィルハーモニア・エテルナ 十束尚宏指揮 / マーラー 交響曲第5番 他

    * シャイー指揮 アムステルダムコンセルトヘボウ管 マーラー交響曲第9番(旅行記)












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