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コンサート感想


2010年4月11日(日)14:00  杉並公会堂
アイノラ交響楽団 / 新田ユリ 指揮
 シベリウス : 「ラカスタヴァ 愛するもの」
 メリカント : 交響詩「レンミンカイネン」(日本初演)
 シベリウス : 交響組曲「レンミンカイネン 4つの伝説」

(隊長作)


2010年アイノラ響の目玉は、シベリウス中心オケと銘打ちながら、
メリカントを混ぜ込んだプログラムにある。
シベリウスの交響組曲「レンミンカイネン」繋がりを狙った、
メリカントの交響詩「レンミンカイネン」。なんと、日本初演。

勉強不足でお恥ずかしいが、メリカントという作曲家も知らなければ、
彼の「レンミンカイネン」も当然聴いた事がない。
今回はCD予習することも無く日本初演に挑み、
初聴きの感想となった事をお詫びします。

そのメリカント。
何度も何度も大爆発と大響宴に包まれて、
一大スペクタクル音響に包まれる。
しかし、心に残るメロディやリズムが一つも届かない。
オーケストレーションは稚拙に感じられた。
神秘掛ったり、対位法による二・三本の流れが不思議な交わりを
醸し出すといった、神が降りてくる瞬間もない。

アイノラ響という、日本でも指折りに数えられるシベリウス研究集団が
採り上げたメリカントという作曲家。

決して「レンミンカイネン」という繋がりだけで選曲したのでは
無いのだろうから、この楽曲の本質が理解できなかったのは
私の感受性の乏しさと、予習(CDを買って、事前に聴き込む)を
怠ったせいだろう・・・か。

唯一、ティンパニの硬い打撃音が演奏的に心に届くだけで、
楽曲が優れているとは思えなかった。当時も今も評価されてない音楽を
敢えて採り上げた試みは大賛成。それだけに、とても楽しみにしていただけに、
つまらなくてガッカリだった。30分越す長さ。


前プロに戻って、「恋人たち」。
この曲って、実にネーミングが良い。

クラシックってロマンティックの極限なのに、交響曲第3番「愛」だとか
交響詩「初恋」といった露骨なタイトルが記憶に無い。

もしそれがあったとして、その副題に相応しいまでの噎せ返るような名旋律が
あれば、それはきっと愛聴されているでしょう。
今思いついたけど、ベートーヴェンのピアノ・ソナタに、熱情や月光があるが、
やはり表現(題名)は直球ど真ん中とまでは言えない、奥ゆかしさがある。

しかしこの「恋人たち」。
実に良い題名と思いませんか?
「恋」だと恋そのものについて述べなければいけないが、
恋する二人「恋人たち」とすれば、二人の後姿を大きな枠組みで
捉えた風景を描いても音楽として間違いにはならない。

楽しそうにしていても、喧嘩をしていても、恥ずかしそうに少し離れながら
歩いていても、二人が「恋人たち」だったら、音楽は無限の可能性を描ける。

ちなみにアイノラ響プログラムでは、「Rakastava」「愛するもの」と訳されている。

しかしこの「愛する」という表現より、「恋する」という日本語表記の方が
音楽の持つ美しさを純化していると思う。楽曲も思春期に恋を知った若者の
切なさを歌ったような美しい三曲からなっている組曲。

「恋人」「恋人の小路」「こんばんわ・・・さようなら!」の三曲。
さて、演奏の方はというと、弦のハーモニーが微妙に不調で残念だった。


メインはシベリウスのレンミンカイネン。
前2曲と全く違う演奏の仕上がり具合。
ここまで前中プロとメインの仕上がり格差があるのは、ちょっと問題だ。

特に私のように、今回のプログラムから見て「恋人たち」と
メリカントに食指が動いた人間には。こういう演奏になってしまうなら、
二曲プログラムに詰めた方が良かったのでは?

折角のメリカント日本初演とぶち上げたのに、奏者の強い共感は得られて
いなかったのでは?同じ題名で以ってしても、シベリウスとメリカントでは
こうも違うんですよ、と突きつけられたような気がして。

そりゃメリカントの方が楽曲そのものが悪いけど、
せめて対等の演奏仕上りで聴きたかった。

(隊長作)
 

過去のコンサート感想。

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