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コンサート感想


2010年9月19日(日)17:00  しらかわホール
アンサンブル・エネルジコ / 加藤晃 指揮
 ブラームス : 悲劇的序曲
 ブラームス : ドッペル協奏曲
 マーラー : 交響曲第10番(アダージョ)

(隊長作)



名古屋で最も熱い指揮をする加藤晃。
この人が熱いアンサンブルを自称するアンサンブル・エネルジコを
振る訳だから、今年も楽しみにして聴きに行った。

名古屋はそこそこのオケになるとどこもかしこも弦が断然安定している。
旨い奏者は勿論、音色豊かな奏者が多いのが特徴で、
これは名古屋アマオケ界が都市レベルでは最もハイクラスな要因だと言える。

一方、管楽器。
正直、管楽器の良し悪しでオケのレベル差が出てしまうのが名古屋で、
管さへ向上すれば鬼に金棒、名古屋一のオケとなるだろう。

このオケは毎回プログラムに凝っていて、前回もプロコフィエフの
ピアノ協奏曲第1番を採り上げたから聴きに行ったのが所縁だった。

そして、今回はマーラー第10番。
第1楽章アダージョのみ、と云うのが非常に残念であり、
近い将来全曲版に挑戦してくれる事を望む。

全曲版はマーラーによる完全作曲では無い、なんて面白くない御託を
垂れたくなく、純粋に面白い傑作だと思う。

特に終楽章、これはマーラーがもし自筆で完成してくれていたら、
一般に流布されている補筆完成版を更に深化推敲した完璧版が
完成していたとしたら。
第10番終楽章が深化推敲された結果、いよいよ肥大膨張して
第6楽章に分派して完成したりしてたら・・・。

もうその完成は決して聴くことが出来ないだけにどうしようもないが、
補筆完成版だとしてもその変貌が味わえる全曲版は十分に素晴らしいと思う。




さて、前半はブラームス。
しらかわホール(693席、馬蹄型2フロア)というキャパによって、
爆演はますます轟くこととなり、ここでの演奏会はいつも楽しめて聴けれる。
悲劇的序曲では弦のうまさを堪能できたし、ドッペル・コンチェルトでは
チェリストが特に良かった。

ブラームスの今の人気要素「渋さ」から考えると、
このドッペル・コンチェルトを残したよりも、チェロ協奏曲を
残しといた方が、ブラームス・ファンの多くが喜んだだろう。

でもブラームスは金のためとか出版社に催促されて書いたのでなく、
自発的にドッペルを書いたのだそうで、その割には、VコンやPコンほど
成功していないのは何故だろう?

Pコンのチェロ独奏など、ときどき無性に聴きたくなるけど、
ドッペルを無性に聴きたくなることは無い。



マーラー十番。
不協和音でも果敢に大音響で突入し、脳がピリピリするこの感覚。
これを「たまらん!!」と味わえるか、不快と感じるかは人それぞれだが、
マーラーは第10番を聴けば聴くほど彼のその後の世界を聴いてみたくなる。

そう考えると、ショスタコーヴィチの15作は本当にお得。
笑激的な第9と、傑作の第10番。

もしあそこで彼の交響曲レパートリーが完結していたら、さぞかし
第11番以降はどうだったのか?と想像が尽きないのだが、現実には
超傑作第11番が控えているし、第13番も忘れてはいけない。

マーラーもあと5〜6作交響曲を造って残してくれていたら、
ショスタコ第15番のようにお腹いっぱいにはなるにはなるけど、
考えてもせんないことに煩わされることもない。

ちなみに第10番第1楽章、この楽章だけだったら中型ホールでも
十分音響的に無理は無かった。

それにしてもクドクド書いてしまうが、第1楽章だけで終わったのは、
消化不良でモンモンとしてしまった。

(隊長作)
 

過去のコンサート感想。

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