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コンサート感想


2010年9月20日(月)14:00  かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
オーケストラ・エクセルシス / 大浦智弘 指揮
【オール・ステーンハンマル・プログラム】
 序曲「エクセルシオール!」
 ピアノ協奏曲第2番
 交響曲第1番

(隊長作)



弊紙メルマガで採り上げること3回目、かつしかシンフォニーヒルズに
行ってきた。

開場時間より早く着いたので、青砥駅界隈やホール周辺をうろうろ。
ちょっとした駅前にスーパーや商店街もあるのだが、入りたい店はなし。
近隣には金町や綾瀬といったもっと大きな街があり、京成線としては
重要な乗換ポイントな青砥駅なだけに、もっと発展しても良かろうに。



青砥駅から少なからず歩くと、かつしかシンフォニーヒルズがある。
道すがら店舗が少なく、住宅街をノンビリ歩くから遠く感じるのだろう。
大変どっしりと立派な箱物だけに、あまり活躍していなさそうなのが残念。
青砥駅の真上に駅ビルを造って、その最上階にあったりしたら便利だったろう。

開場され意気込んで入場したが、二階席は閉鎖。
二階バルコニー席を狙ってたので、残念。
二階席も含めて借りると、ホール料が高くつくのでしょう。
こういった「良い音響で音楽を聴く」設定を台無しにする料金プランは、
一体誰が考えるんだろう。1階だけ解放するのも、1・2階解放するのも、
料金をアップするほどの事なのか?

ここ最近、ステーンハンマルの交響曲演奏会が続いた。
2007年のけいはんなフィルは想い出深いが、
2009年東京理科大や東京外大の交響曲第2番演奏会に
行けなかったのは悔しい。

「知られざる作品に光を当てるオーケストラ」として当楽団が
発足した事を知り、しかもステーンハンマル第1番を採り上げると聴き、
これは上京せねばと思った。こういった楽団はどんどん発足して欲しい。
しかも次回第2回演奏会は、カルウォヴィチの交響曲「復活」。



前プロは、ステーンハンマルの隠れた名曲「エクセルシオール!」。
正直、難しそうに聴こえた。この曲は非常にキャッチーなんで、
もっと演奏会に採り上げられるべきだが、実演してみると意外と難しい曲。
CDで聴くと難しそうに聴こえないが、実際には凄く細かいパッセージが
多い。コンマスはソロや、中間部のモヤモヤ感は上手く雰囲気が出せていた。
滅多に実演で聴けない曲だけに、演奏してくれた事はありがたい。

新造オケとしての性能はどうだろう。
運命や新世界といった名曲なら、楽々仕上げられるレベルを持っている。
しかしステーンハンマルは独特の個性があるし、彼の音楽を初めて
取り組んだという楽団員も多かったろう。
中プロ(協奏曲)も手が抜けないし、メインはかなり凝った交響曲だ。
三曲を堅実に仕上げる事は、想像以上に大変だったろう。

中プロ、ピアノ協奏曲第2番。
マーラー第5番やブルックナー第4番の前座に、無理矢理モーツァルトの
Pコンを付け合わせた演奏会が多いけど、あんなプログラムにするんだったら
こういった意欲的なPコンと組んで欲しい。
シベリウスの交響曲第1・2番の前座はシベリウスのVコンやグリーグの
Pコンばかりとせず、ステーンハンマルの協奏曲を組み合わせて欲しい。



メイン、交響曲第1番。
素晴らしい素材と展開がゴロゴロ散らばっている。
煮しめて再構築すれば、相当な傑作になるだろう。
第1楽章終盤、神の恩寵を音楽化したような、厚い雲間から
光の筋が次々と降り注いでくるような荘厳な世界が浮かび上がる。
マーラーやリヒャルトだったら、きっとここにパイプオルガンや
児童合唱も加えてグランド・スペクタルに仕上げただろう。
そこまで徹底せず、通常オケ編成の範囲内で表現しようという
慎ましさが北欧らしい。

第2楽章、これも良い。
むかし、「ムーミン」の放送時に流れたパルナスのCMを思い出す。
北欧らしい寂しげで哀しげで、それでいて愛らしい旋律。
もうひと手間工夫されれば、どんなに有名な楽章になっていた事だろう。
素材が素晴らしいだけに漫然と使ってしまった、そんな感が残る。

第3楽章、これは駄作。
それを挽回するかのように颯爽と溌剌とした終楽章が、
この交響曲はやっぱり素晴らしいと思い直してくれる。
全楽章を細部まで煮詰め直して再構築し、第3楽章はごっそり
取り換える大工事をステーンハンマルが晩年やってくれていたら、
この曲は新生第1番として十二分に名曲となっていたんじゃないだろうか。
現行のままでも十分好きだと思う人がいることも分かる反面、
ここまで素材がいいだけに歯痒くてならない気持ちも残る。



演奏面での感想。
今回の演奏プログラム3曲とも初めて演奏した、といったメンバーが
多かったろうが、それにしては上手い演奏だった。
さすが「知られざる作品に光を当てるオーケストラ」の名の下、
腕っこきが集まってきた猛者達だ。

ドヴォルザークの第6番以前とか、シューベルトの「未完成」以前を
採り上げました、といったアマオケをチラホラ見かけるが、楽譜問題を
無視すれば、こういった「知られざる作品に光を当てるオーケストラ」
の方が余程有意義だ。CDでは聴き出せない音の動きが
無限に発見できただけでも楽しかった。

北欧の音楽全般に感じることだけど、大自然を大らかに歌い上げる楽曲が
多いだけに、ホルンと弦楽器が相当上手くないと仕上げるのは大変だ。
単に音程を取るだけでなく、柔らかく大らかに歌い上げないと
その世界観は伝わらない。ここの金管陣はふんわりとした音色が
出ていたので、北欧モノは良く表現できていた。
また、打楽器が強音を殊更強く強調してくれたので、
いいアクセントが出て良かった。

最後に。
シベリウスが好きな人は、ステーンハンマルも是非聴いて欲しい。
特に交響曲第2番は掛け値なく名曲なので、何の不安もなく推奨できる。
これほどの完成度を持つのに、まだまだ無名というのは理不尽極まりない。
また、ステーンハンマルも大好きだという人は、アッテルベリに進んで欲しい。
交響曲第3番、第5番、第6番、第8番あたりなら、どのCDを買っても
失敗は無いと思う。

(隊長作)
 

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