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コンサート感想


2011年2月26日(土)14:00  狛江エコルマホール
オーケストラ・ナデージダ / 渡辺新 指揮
 ペルト : ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
 ボルトキエヴィチ : ピアノ協奏曲第1番(日本初演)
 アッテルベリ : 交響曲第2番(日本初演)
 シベリウス : 春の歌

(隊長作)
狛江

久々の狛江。
もしかしたら、2004年10月31日の管弦楽団「響」(ニールセン交響曲第2番)
以来かもしれない。

それだけ狛江に来ることが無かった。
ミスチルが狛江を舞台に歌ってた曲があったけど、狛江と言えば
「響」演奏会とミスチルしか想い出せない。

そして今、実に6年半ぶりの再訪だ。
折角だから旨い物を食べようと、駅の周辺を大きく一周した。
東京の衛星都市、私鉄の主要駅らしいよくある街並だが、
ちょっとお洒落でお金持ちそうな安定した住宅街。



駅から一本入った飲食店が並ぶ小道に、日本料理「扇屋」がいい感じ。
夜はちょっとした和食の店なんだろうけど、ランチは良心的コスパ・メニュー。
すきやき定食やカキフライも捨て難いと迷いましたが、
あれば必ず喰っときたいのが煮魚。

居酒屋で思い出してください、焼き鳥・焼魚・フライなんかは
どこでもあるが、煮魚はあまりない。
煮過ぎると煮崩れするし、私が好きなほど一般には好まれてないの?

(隊長作)

魚料理は焼き・煮・刺身とありますが、私は煮魚が最も好き。
子供の頃は小骨が多くて薄味の煮魚が嫌いだったが、
大人の今は魚の旨みが最も味わえる煮魚が一番。

ここで食べたのは、その煮魚の中でも豪快さとお得度が光る荒煮。
大根が煮汁をたっぷり吸ってて、白髪ねぎを添えて食べるこの旨さ!
小皿や茶碗蒸しまで付いて「荒煮定食」900円。
実に旨かった、また狛江に来たらココで食べたい。

荒煮定食

さて、ナデージダは今回で3度目の突撃。
第1回定演(アッテルベリ第8番)、第3回定演(アッテルベリ第4番)、
そして今回が第5回定演(アッテルベリ第2番)だ。

行っていない第2・4・6回はアッテルベリの交響曲を採り上げておらず、
次回第7回や第8回定演もアッテルベリ交響曲の演奏は無い模様。

ミャスコフスキーやアルヴェーンのCDは持っていて結構聴いているけど、
ライヴで聴きたいとまでは思わない。

団内でのアッテルベリ勢力が弱ってきたのか?
アッテルベリ交響曲はまだ演奏されていない第3・5・6番も
素晴らしいので、今後の採択を強く希望します。

逆に今回メインとなったアッテルベリ第2番、
わざわざ前述第3・5・6番より先に採り上げる楽曲なのか?

今日ブックオフで立ち読みした北欧音楽に関する本では、
アッテルベリの代表作として第2番が書かれてあったが、
第2番より第5・6・8番の方が名曲じゃないのか?

第6番は「ミリオンダラー交響曲」などと蔑まれているが、
純粋音楽として聴いてみればその真価は容易に解るはず。

アッテルベリと言えば、聴いた事もない知識自慢が
「金目当てにコンクール優勝した時代遅れの作曲家だろう」と
もっともらしく語るが、この作曲家ほど再評価が望まれる人はいない。

狛江エコルマホール

私は今、このアッテルベリのほか下記作曲家を愛聴しており、
みなさんにも早く聴いて貰いたい。
バターワース、マリピエロ、パリー、ステンハンマル(アルファベット順)。

バターワースと言えば「青柳の堤」だが、「シュロップシャーの若者」や
「2つのイギリス田園詩曲」も良い。ただ、WW1で31歳という若さで
戦死してしまったので、作品数が余りに少ない。

一方マリピエロは長寿だったが、全作品が素晴らしいとは言えない。
ただし弦楽四重奏全8曲の内第6番までは恐ろしいほどの出来で、
私の中ではベートーヴェンよりプロコフィエフよりショスタコーヴィチより
弦楽四重奏のジャンルにおいては彼が圧倒している。

パリーは何と言っても交響曲だが、最後の第5番、せめてこの曲だけでも
メジャーになってしかるべき。全編ブラームスの二次創作みたいな基本設計に
チャイコフスキーの技法が多用され、彼のアイデンティティが本来ならば
失われるはずだ。ところが不思議なのことに、パリーの味が下から下から
滲み出てくる。

ブラームスとチャイコという二大作曲家に似ているのに、
パリー独自の味が浮かび上がる。余程の才能が無ければこうはいかないだろう。

最後になったがステンハンマル。最近は彼の交響曲第2番やPコンが
採り上げられ結構なことだが、プロオケではまだまだ採り上げ頻度が少ない。
広響が第2番をやってくれたのが唯一じゃなかろうか。

N響&ブロムシュテットあたりがニールセンと組み合わせてやってくれれば
悶絶演奏会になるのだが・・・。

録音をしたヤルヴィ親子がよく来日しているので、奇跡が起こって
ステンハンマルを採択してくれる可能性に期待しているのだが・・・。

狛江エコルマホール

脱線から戻りまして、アッテルベリ交響曲。
彼の交響曲CDを求めるならラシライネン盤がベターにしてベスト。
中古屋で見つければ買っているんだが、Frykberg、Bu"hl、広上、
Jurowski、Westerbergなどの指揮者の盤が出ている。

彫りの深さ、緩急の自在、楽曲の妙味を遺憾なく把握しているのは
全集を完成しているラシライネンにとどめを刺す。
彼の他作曲家ではハウゼッカーの自然交響曲なんかが面白く、
良いオケさへ持てたら相当期待できる。

アッテルベリ第2番は全3楽章。
彼ならではの冒険RPG風は色濃く、私はRPGを全くやらないし
ファンタジー&冒険小説も全く読まないので萌えないんだが、
この楽調はその手の人にはたまらない世界だろう。

全楽章とも強烈な個性があるが、どれも若書きだけあって大仰で誇大妄想。
これでもかとのた打ち回り、このナンバーで彼が死んでいたら
消えた作曲家になっていた可能性も否定できない。

しかし後の名曲(第3番〜第8番。第7・9番は除く)を知った身としては、
彼の大袈裟ぶりも微笑ましく見守って上げられる。

第2楽章なんてマーラーの緩徐楽章に匹敵する美しさとネチっこさで、
木管を小鳥たちのさざめきのように使うところはシベリウスも顔負け。

ピアノがゴングのように沈む落とし方は二十世紀らしく、
民謡を多採したメロディアスなラインがこの楽曲を
軽んじさせているんだろうが、解りやすい音楽の
何がいけないと言うのか!

(隊長作)

どの楽章も後の彼を彷彿とし、ある意味ブルックナーのように、
若くして書きたい方向性がガチガチに固まっている。
言いたい事は決まってる、ただその術を模索しているのだ。
そんな作曲家人生だったのが、アッテルベリという人だった。

アッテルベリの交響曲第2番がようやく日本初演された。
ナデージダは大幅なメンバー・チェンジでもあったのか、
初演奏会と比べられないほど上手くなっている。

ロシア北欧の珍しい楽曲を専門に演奏するという趣旨に、
多くの名プレイヤーが集まって来ているのかもしれない。

ラシライネン盤ほどの冒険演奏ではなかったが、
安定した手堅い演奏で初演を楽しめた。
その初演に立ち会えた事を誇りとし、今後も何かにつけ
彼の交響曲を宣伝してゆきたい。

(隊長作)
狛江エコルマホール

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