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コンサート感想


2011年11月27日(日)14:00 武蔵野市民会館
武蔵野市民交響楽団 / 角岳史 指揮
 モーツァルト : ピアノ協奏曲第20番
 ブルックナー : 交響曲第5番

(隊長作)


武蔵野市民会館といえば、三鷹から歩いて十数分、吉祥寺からは二十分。
どっちにしても、そこそこ歩く。

上京した頃は、格好つけて吉祥寺から歩いて行ったが、
なんせ歩道が狭く、チャリやらおばあさんの押し車やらで
オシャレな吉祥寺サンポどころでは無い。

そこで今では三鷹駅から裏道を歩いて北上するのだが、
この三鷹が実に変わった。

みなさん、最近三鷹に行ったことありますか?
総武線の始発駅であるにも拘らず、三鷹は昔から微妙な街だった。

この最大の要因は隣駅がザ・キチジョージである以外
なにものでもないのだが、同じ隣駅でも西荻は随分と
個性を出して頑張っている。

吉祥寺の隣だから駄目なんです、なんて言っていては、
西荻に笑われてしまう。三鷹駅と呼ばず、
連雀駅としたら格好良かったのに。

ところがどうだ、ここ最近の三鷹は。
北口に関してではあるが、高級高層マンションがズラリと並び、
凄いハイソに変わった。

お陰で庶民的な面白さは無くなったが、金持ち予備軍が
ゾクゾクと移り住んでるニオイを醸し出している。

三鷹と一口に言ってますが、三鷹駅北口は武蔵野市、
南口は三鷹市と言うように、全く異なる市制になっている。



南口の三鷹市はちと野暮ったいが、落ち着いた安心感がある。
一方武蔵野市は吉祥寺を丸抱え、武蔵境も抱え、
成蹊大や亜細亜大まで抱えている。

有名企業の本社が多いため財政安定が有名で、
横河電機をはじめすかいらーく、ジョナサン、モンテローザ、
松屋フーズ、小僧寿し、大戸屋といった外食産業がズラリと
集中している。何で?

杉並区や中野区に住むより、武蔵野市に住んでます、
と言った方が「金持ちかな?」と思われる特殊な雰囲気がある。

これは武蔵野市をブラブラ歩いてみれば感ずることで、
余裕ある間口の戸建が多く、どの家もちょっとした門と塀を備えている。

できるだけ樹木で緑を添え、道路の区割りも碁盤目だ。
ただし東西南北に対して三十度ほど傾いているのが難点で、
東へ歩いているつもりがすっかり南東に下っていることが多い。

三鷹駅からメインの三鷹通りを歩くと、昔より小粋なカフェが増えている。
そんな中で立ち寄るべきは武蔵野市の喫茶店でありたかったが、
この日は食べログで高評価だった武蔵小金井駅北口のフレンチ
「ヴァン・ド・リュ」に行った。

武蔵野市民響を聴くんだから、武蔵野市で食べないと話が繋がらないのに、
どうしてもヴァン・ド・リュに行ってみたかったのだ。

ランチは840円で選択の余地ないワンプレート・ランチ。
質朴な木のカウンター席だけで、キッチンにはマスターが独り忙しげに
立ち回っている。

カウンターには「この店がいいんだよ」みたいな客が居並び、
運良く店を出るカップルと入れ違いで着席できた。

小金井丼フェアなるものをこの時は小金井市全体でやっており、
我がヴァン・ド・リュも参加していたため、不本意ながら
その小金井丼を食べた。

野菜のクリーム煮込み丼といった按配で、クリームソースが旨かったが
出来れば子羊とか子牛の柔らかソテー(赤ワイン風)なんてのを
食べたかった。

ちなみにこのランチが人気なのは、この840円で
ケーキと本格コーヒーが付いているのだ。

ケーキはちゃんとした大きさのカット・ケーキで、
選択の余地なくアップルケーキだった(できれば、紅茶シフォンが良かった)。

絶対また来たいと思ったが、ムサコにはホールが無く、
あれから1年以上経つがまだ行っていない。


+*------*+:*:+♪+:*:+*------*+


さてさて、感想。まずは前座のモーツァルト。
珍しくコンサート・プログラムに走り書きを残してあったので、
一部書き出してみよう。

「弦の刻みで短調の調べが始まったが、ナマ音ってこんなに汚かったかしら。
最近はCDくらいでしかモーツァルトを聴いていなかったこともあろうが、
モーツァルトは各パートの音が素で聴こえてしまう箇所が多い。
大曲ブルックナーの付け合わせとしてモーツァルトが選ばれたんだろうが、
逆にこれが命取りとなってしまった。本命のピアニストに頑張ってもらおうと
思ったんだろうが、演奏会は最初の最初はやっぱり大事。
出だしからガサガサした序奏では、不愉快にして心おだやかではいられない。」
などと辛辣な走り書きが残ってたが、ほじくり過ぎては不愉快なので、
メイン・ブルックナーに移ろう!



今回ばかりは、武蔵野市民響の選曲に拍手を送りたい。
ブルックナーといえば未だに第4番、第7番、もう一丁踏ん張っても
第9番あたりの演奏会が多いが、第5番とか第6番がなかなか出て来ない。

それを言ったら第1〜3番はもっと出ないが、これらはどれも珠玉の名曲。
ドヴォルザークの第5〜7番やベトベンの第1・2番をやる暇があるんなら、
是非ブルックナーのマイナーに目を向けて欲しい。

もうそれだけでひれ伏してしまう。
それを選んだ、というだけで、その見識の高さと意識の革新性に共感してしまう。

また、武蔵野市民会館というホールがいい。
我々がクドクドと述べているワンワン・ホール(響き過ぎる残響過多)でなく、
音符の一点一点が聴き取れる響きの少ない硬派だ。

それだけに演奏のアラも目立つが(モーツァルトが悪い例)、
それを恐れては上達しない。霧と靄の中では、白鳥は見つけられないのだ。

ブルックナーやマーラーの交響曲ではよく対位法が特徴に挙げられるが、
ブルックナーもこの対位法、複数の流れが描かれる並行世界を堪能したい。
それにはどうしても残響が邪魔で、クリア・サウンドでこそ音楽の真価が見通せる。

モーツァルトのアインザッツでは不満を述べたが、ブルックナーでの弦は驚くほど
美しい箇所が何度も聴かれ、フルートの美しさや金管の気合も嬉しかった。

ブル5の面白さを何度も体感しているリスナーには楽しい演奏だったが、
そうは言ってもブル5を余り知らない聴衆が多かったようだ。

終演時、終わった〜といった安堵感が会場全体を包んだことには苦笑した。
ブル5終楽章は何度も山場があり、初心者はどこがクライマックスか
分かり難いんだろう。

武蔵野市民会館の聴衆は、日頃から肥えた音楽を吸収していることで有名だが、
ブル5までは聴いてないようだ。

残響の少ないホールでのブルックナーは演奏者にとって厳しいが、
シャキシャキとした音楽、ストラヴィンスキーとかプロコフィエフとか、
ニールセンの太鼓合戦交響曲なんかだとその力を発揮できるだろうにと感じた。



(隊長作)

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