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コンサート感想


2012年1月29日(日)14:00 かつしかシンフォニーヒルズ
東大フィル・グラデュエイト・オーケストラ / 三重野清顕指揮
 パリー : 交響的変奏曲
 ヒンデミット : 交響曲「画家マティス」
 ベートーヴェン : 交響曲第7番

(隊長作)

今回は東大フィルの御隠居オケ、グラデュエイト・オーケストラ。
グラデュエイトとは「卒業生」という意味ですね、そのままやん。
いっそ、「オーケストラ僕たち東大卒ですが、なにか?」
みたいな挑発的なネーミングだったら面白いのにな。

弊紙メルマガでは東大ネタが多いですが、残念ながら
東大と一切関係はございません。

結局、偏差値の高い大学&OBオケほど、プログラムが
面白くなっている傾向があるのか?

いないな選曲と学歴・偏差値は一切関係ない!
と文句のある人は、是非ご自身でそんな都市伝説を打ち破って下さい。

メインはベト7ですが、今回はパリーだからこそ、行って来ました。
場所は東部の、葛飾青砥です。



青砥は京成本線と京成押上線の乗換ターミナルで、
はやりのスカイタワーにも行ければ、成田や羽田にも行ける。
再開発著しい日暮里も行けるし、終点は上野だ。

これが新宿か渋谷あたりまで延伸してたら、京成の運命も違ってただろう。
将来性の高い駅なのに、いつまでたっても下町さを失わない。
十年前は良く来たが、あの頃とさして変わっていない。

かつしかシンフォニーヒルズはそんな下町にあるホールなんですが、
名前に恥じぬ壮麗にしてゴージャス。



杉並公会堂やめぐろパーシモンより、よほど金が掛かっている。
置き引き注意なんて案内があり、音楽を楽しみつつ、気を抜いてはいけない。
私は京都のはずれ(下町)で育ったので違和感ないが、下町は良い人が多い。
困ってる人もいるけど。

さて、パリー。
パリーについては何度も書いたが、どうしてこれほどの芸術が普及しないのか。
こうして前プロながら採り上げて下さった見識ある楽団も現れたが、
パリーとかアッテルベリとかマリピエロとかラターとか、まだまだ、
まだまだ採り上げられていない天才がある!

これらが選曲された演奏会は、出来る限り聴きに行きますんで、
よろしく選曲して下さい。

(隊長作)

パリーの交響的変奏曲を私は現在、ボールト盤、バーメルト盤、ペニー盤と
持っていますが、最も愛聴しているのはボールト盤。

木管ノンビリ始まったと思いきや、弦がどんどん興奮してホルンが第一主題を
再現する時にはすっかりハイテンション。でも木管に戻れば、また初期設定。
再びワクワクさすようにテンポを上げてゆき・・・と、ボールトの演奏は
まさにマジックが続く。このCD演奏を聴いて、喜びを感じない人はいないだろう。

ショスタコやプロコを拒否する人は何十年クラシックに親しんでも
駄目なままだが、このパリーは違う。

ブラームスとチャイコフスキーがイギリスで生まれ変わったような音楽で、
ブラームスやチャイコが大好きな人ならきっとパリーも好きになる。
それでいて英国の香りもあり、ああ、実に佳い曲だ。

楽器経験の長いベテランから大学デヴューの若者まで様々な人達の混成団だが、
大きなうねりを産み出す表現力があり、何度も鳥肌の立つ演奏だった。
弦の演奏にもどかしさを時に感じたが、そこに全体を合わせようとせず果敢に
テンポを揺さぶり突進してゆく覇気があった。

出来ない箇所を最小限にみせようとするのでなく、出来るために
挑戦してゆく音楽造りが芸術を創造している必然性に繋がっている。

画家マティスはバーンスタイン盤に魅せられてCDではよく聴く音楽だが、
実演はあまり聴いていない。

作曲家ヒンデミットがヴィオラ奏者だった親近感もあるし、
暗く冷たい基調がなんとも言えず、白鳥を焼く男(ヴィオラ協奏曲)は
何百回と聴いた。この演奏会後、画家マティスの素晴らしさを再認識し、
新宿ディスク・ユニオンでオペラ原曲CDを買ったのでした。

ただし、オペラ原曲より、この交響曲版の方が楽曲としては集約されているな、
と感じています。



中プロ・メインと聴き進んでいって、意外に感じたことがある。
普通なら、メインに進むほど演奏錬度は上がってゆく。

特に管楽器は1st、2ndとパート内の技術序列が暗黙の内にある事が多い。
トリプル・タンギングやハイトーンの可否、ヴィヴラートや音色の差など
どうしようもない技術の高低がある。
そんな序列に従って、メインほどトップクラスが集まることが一般的だ。

ところが、大変失礼だが、今回の三曲では嬉しいことに
パリーが一番のデキだった。

前プロとしては非常に珍しくかつ難度も高い曲なので、
上手い人がメインを譲ってパリーを奏したのではないか、
と想像してしまった。もし違ってたら、すみません。

演奏技術面だけでなく、楽曲に対する熱意も伝わる事が多く、
パリー・ファンも納得できる演奏で嬉しかった。

ちなみに、この演奏によってパリーを知った団員は多いはず。
中にはパリーが好きになって、交響曲も聴き込んだ団員もいるかも。

そんなパリー教徒が、パリー交響曲を実現しよう♪となってないかな?
と思い、時々グラデュエイトの次回演奏会をチェックしてるんですが、
一向にその気配はない。

2013年はリスト、シューマン、リヒャルトだし、
来年はベトベンにドヴォルザークだ。
パリーは一回こっきりだったのかなぁ。

(隊長作)

もう一つ感じたこと。
大好きなパリーを採り上げてくれたからヨイショする訳でなく、
こういった珍しい楽曲を組み込んだ演奏会は、えてしてアツイ演奏会が多いこと。

なんじゃコノ曲は?と思う演奏会があったとしよう。
そういった曲を組み込むには、影ながらかなりの労力と極秘工作が施されている。
演奏成果が次なる布石に影響するので、折角嵌め込んだ渾身の一滴が
それっ切りにならぬよう張り切っちゃう。

今回はまさにそんな効果があったようで、実に楽しい仕上がりだった。
ただし、次の布石はまだ見えてこない・・・。


過去のコンサート感想。

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