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コンサート感想


2012年4月30日(月祝)14:00  相模女子大学グリーンホール
厚木交響楽団 / 田久保裕一指揮
 モーツァルト : 交響曲第36番「リンツ」
 ブルックナー : 交響曲第5番

(隊長作)



新宿以西の街といえば、吉祥寺・立川・八王子と言われていたけど、
最近は、町田も匹敵するほど凄いんですよね。若者・ヤング・ユング。

とにかく学生が多い。JRと小田急が交差してて、小田急百貨店、
マルイ、ルミネがある上に、109や東急などもある。
私の好きなブックオフも大型店があるし、高原書店と言う超弩級古書店まである。

今回行った相模大野は、そんな町田から一駅となり。

大型ターミナルの隣駅は寂しい駅が多いが、ここ相模大野はあにはからんや。
北口はズドーンと商店ビッシリの大通り、その先は伊勢丹が構えている。
左手にはボーノ相模大野というタワーマンションが乗っかった大型複合商業施設が控えている。

川崎で馴染みのモアーズもあるし、ラック相模大野もある。
それでいてゴチャゴチャ感もあって、わあ!と感じてしまう。
相模女児大学グリーンホールは、そんな街の先、伊勢丹の裏にある。



ちなみに2012年時は、相模大野グリーンホールという名称でした。
今、はやりのネーミングライツで2013年4月以降、相模女子大に変わったようです。

伊勢丹に行けばホールは見つかるだろうと思ってたら、
「グリーンホールはこちら→」という表示が矢鱈ある。





ここまで行き先表示されているホールはチト珍しい。
杉並公会堂なんて、初めての人は見つけづらいだろうに。

(隊長作)


相模大野グリーンホールは音響重視の造り。
昔ながらのサイド席なし、ウラ席(P席)なし、ちと古臭い造りだが、
音響が一番重要。ウラ席が無いかわりに音響は手堅く、
年代を刻んだ建物に音の響きがまろやかになっている。

ホワイエには造花が飾られ、街が栄えているだけに、田舎臭い。
トイレの前には自販機があり、広いホワイエにはソファーがたっぷり。
杉並公会堂のあのせせこましさと好対照。

ホワイエに自販機があるというのは田舎ホールの象徴ですが、助かります。
お高いホールにはドリンク・コーナーしかなく、一杯4百円のオレンジジュースだとか、
グラスちょっぴりで6百円のワインとか、もうボッタクリです。



さて、感想。
ブルックナーの付け合せといえば、もうすっかりモーツァルトが定番に
なってしまいました。ブルックナーは1時間以上、今回の第5番になると
70〜80分は掛かる大曲。

出来るだけ体力は温存しておきたいが、楽器のアップはしておきたい。
そんな思惑にピッタリなのが、モーツァルトなのでしょう。集客面でも手堅いしね。

当然ながら、私的にはこの安直なカプリングは不満です。
モーツァルトを外せないとしても、滅多に演奏しないナンバーにするとか。

出来ることならシューベルトの初期交響曲にするとか、「生演奏は聴いた事が無いぞ」
といったプレミアムが欲しい。でも大方は有名曲の方が、集客するのかな。
選曲会議で有名曲の方が、人気投票で勝つのかな。つまんないよ。

1stヴァイオリンの走りが爽快で力強いけど、他の弦が付いていけない。
前へ前へと推進力はあるのに、後ろ髪惹かれるようなアンバランス。

ゆったりとした緩徐楽章は良いだけに、全体がテンポに乗った演奏を期待したい。
ただし、管楽器は上手い。これはブルックナーに期待できる。
それにブルックナーは高弦の神々しさも重要だから、1stの良し悪しは如実に表面化する。

ブルックナー、第5番。トランペットが異様に上手い。
金管全体がハイスペック、かつ演奏がイキイキと躍動している。
これは単に上手い集団てなだけでなく、ブルックナーが演奏したがっている人が多い証左。

実に豪快で意欲に富んだ演奏だった。金管がイケイケなため抑えることを知らず、
弦重視のブルックナー・ファンなら顔を顰めるかもしれないが、
ブルックナーへの愛が伝わる演奏なので、私には楽しかった。
高弦ばかり褒めたが、ブルックナーはチェロも良かった事を付記します。

ここでブルックナーの金管爆発問題についてひとこと。
よく「ブラス上がりは吹きたい放題」と言われますが、必ずしもそれだけではありません。
小中高とブラスで鍛え上げてきた人は、吹かしまくるがアンサンブルも高い。

今回のブルックナーで実感したのですが、金管が音量MAXなのに、
金管一色に塗り潰されない。これはアンサンブルの精度が高いため、
木管や弦も透き通った水底が見通せるような現象です。

金管に負けぬくらい鳴り響けば理想的ですが、大音量の金管が透き通っているので、
木管や弦の音も聴こえてくるのです。

弦楽器は美しく柔らかく深い音を出せば、音は遠くまで飛ぶと言われますが、
時としてはグイグイ&ゴリゴリ自己主張をすることで音楽にアクセントが生まれ、
より美しい音色が際立つと思います。静と動、清と濁。
時として濁った音は清らかな音を際立たせるのです。

さて、八十分近くもかかるブル5ですが、この音楽は達成感が凄い。
長い永い旅路の終着点のように、探し求めた究極に至る過程が実にカタルシス。
八十分もかかる交響曲と聞けば、この音楽の凄みを知らない人は
選曲会議で否定論ばかり羅列しますが、今回みたいな実演を聴いてしまえば
考え直すでしょう。

こういったブル5演奏を経験してしまえば、きっと中毒になるんじゃないでしょうか。
拒否反応を示す人もいるでしょうが。



(隊長作)

過去のコンサート感想。

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