(隊長作)

マイ・ベスト・コンサート      - 17 -   (2007年5月)   訪問者数
  
  みなさんにとって、ベスト・コンサートって何ですか?
  私にはベストと言えたコンサートが2つありまして、
  このコンサートは腰が抜けるような涙目になってしまような、
  今、想い返しても甲乙付けがたいとは、あのようなコトを云うのだろう、と思う。

  そんな体験が自分にはある、それだけで自分の人生は良かったよなぁ、
  と幸せになれます。

  第三のベスト・コンサートに出くわすべく、今もコンサートに行くのですが、
  なかなかあの2つのコンサートに匹敵できる演奏会には、
  なかなか簡単には会えないものです。
  ベルリン・フィルハーモニー・ホール
「アルペン・シンフォニィ」と云うのが、
マイ・ベストコンサートの一つです。

初めてベルリン・フィルハーモニー・ホールに
乗り込んで、ベルリン・ドイツ響、
指揮は何とアシュケナージの演奏でした。

アシュケナージでそれほどの感動が?
私は当時アシュケナージに縁があったのか、
2回も海外(ウィーン)で

  アシュケナージのコンサートを聴いてるんですが、どちらも何ていう事のない演奏だった。
  オケはチェコ・フィルやウィーン響だったように思います。

  そんなアシュケナージだったのですが、その日のプログラムが
  ブラームスの第4番とリヒャルトのアルペンという、欧米ならではの体力演奏会。

  日本じゃこんな重たいプログラム自体出会えません。
  この日は何か特別な演奏会だったようで、楽団員も観客も異様な熱気があり、
  こりゃ何か起こるぞという期待が、確かに開演前からホールには漲ってました。
  
  初めてのフィルハーモニー・ホールだから、特にそう感じたのかもしれませんが、
  この変の異様なザワツキ感は、コンサートに頻繁に行ってる方には
  判って貰えると思います。
  (隊長作)

前プロのブラ4。
  これが凄絶な白熱演奏で、これだけでもこの時の
  ベルリン旅行の元は取れた快演でした。

  現にこの終演時は文字通り割れんばかりの拍手喝采で、
  立ち上がる人まで出る始末だ。   (隊長作)

前プロなのに...。
  これが本当にアシュケナージなのか?
  彼は結構小柄な人で、指揮台でピョコピョコといった感じで、
  どうしてこんな指揮振りからアレ程のうねる様なブラームスが搾り出されるのか、と
  全く感心してしまった。
  
  
  そして本命のメイン・アルペン。
  これがブラームスを遥かに凌ぐ世界で奏で始めたのだった。
  忘れられない、あの冒頭のアルプスの森の響き。
  最初の響きからして、これは当たりだ、と確定したような演奏だった。

  演奏を聴きつつ思った事は、
  ヨーロッパ人にはアルペンと云う誇れるモノがあってイイな、
  これは二重の意味で羨むべき事で、アルプス山脈とアルプス交響曲の、
  大自然とそこから産まれた大芸術。   (隊長作)

しかもそのスコアを楽譜以上に昇華してしまう演奏力を持った人たち。
  
  アルペンの前には、ドイツ人だとかフランス人だとかの垣根は無くなってしまう様だ。
  ヨーロッパ人全体が、俺たちの山々だといった共通の誇りと愛着があるようなのだ。
  
  アルペンの前では、人々は日々の小異は捨て去って、大同に帰す。
  会津磐梯山も薩摩桜島も、富士山の前では一人の日本人に戻ってしまうような
  圧倒的な連帯感が生まれてしまう様なのだ。

  あのオケがどの様な国籍で構成されていたのか知らないが、
  一致団結が究極に達した時とは、斯くアリケリ。
  
  日本には富士山と云う世界に誇れる大名山があるのに、   (隊長作)

富士山交響曲と云う大交響曲は無い。
  これでいいのか!
  全く、アルペン・シンフォニィが高らかに誇らしげに、ヨーロッパ人の
  聴衆たちを熱狂させながら大団演に突き進むのを聴きながら、
  私は激しく自問自答し続けるのだった。
  ベルリン
終演時は観客が一斉に立ち上がって
拍手する様は、マジで恐かった。

しかしここまで大人数を
完全に盲目にさす音楽と演奏とは、
なんと恐ろしい世界なんだろう。

しかしそんなコンサートに立ちえた自分も、
なんと幸運だったのだろう。


  大名演とは、あれくらいのモノを指すのだな、と自分の尺度が出来た日だった。


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