ムストネン - 13 -
とうとう、コンサートを聴くのは、最終になります。
「とうとう」と言っても、今回の旅は、3日しか聴けないショボイ旅だったのですが・・・
3日目にして、やっと念願の2階席!
Balkon Noord rij3 stoel20
おそらく北側バルコニーの3列20番という事でしょう。
北・南で別けているのは、面白いですね。
普通、右・左ですよね。
まぁ、扉のところに記されてはいますが、どっちが北なのよ?と、ちと迷う。
サントリーホールで例えるなら、RBブロックか、RCブロック辺りな感じです。
贅沢を言えば、左側(南側)の方が良かったな。
ムストネンの指揮を聴くのは、初めてでした。
CDでも聴いた事がありません。
ピアニストとしてのCDは1枚、家にありましたけど。
オケは、ヘルシンキ・フェスティヴァル・オーケストラ。
聞いた事ないオケだな〜?
フェスティヴァル用の夏限定オケなのか?
この謎は、意外にもN響の2004年5月定期のプログラムで解決しました。
Bプロにピアニストとしてムストネンが出演していた訳ですが、その紹介文の中に、
「2002年に自身でヘルシンキ祝祭管を設立」と記入されているではありませんか。
マイ・オーケストラだったんだ。
ネットで検索した所、2001年のヘルシンキ・フェスティヴァルから活動をしていて、
夏だけではなく、2004年は4月にケルンでコンサートをやったりした様です。
この旅行に行った時は、そんな事は露知らず、なんか胡散臭い名前だな〜と。
大体、兼業している人って、中途半端であんまり好きじゃないのよね〜、
などと思っていたから大間違い。
この3日間で1番良かったのは、このムストネン様だったのです。
今、どんどん良い指揮者を排出しているフィンランドパワー。
恐るべし、ヘルシンキ。
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この日のムストネン指揮ヘルシンキ祝祭管の演目は、
ムストネン:3つのミステリー
シベリウス:交響曲第6番
ベートーヴェン:交響曲第4番
特にシベリウスは期待と予想を軽々と越え、「良かった」の一念。
「ドイツの作曲家の曲は、やっぱりドイツのオケに限る」等とは、
根性ひしゃげてますんで余り思わないのですが、シベリウスは不思議。
フィンランドのオケ&指揮者で聴くと、もうどうしようもなく、
「敵わない」と思ってしまうのです。
あの、なにかヒンヤリとした爽やかな・・・。
夏、アイスを食べようと冷凍庫を開けた時に流れ出てくる白い冷気の様に心地良い。
ひややや〜ん、ふわわわ〜ん、という雰囲気がなかなか出せないもの。
フィンランドのオケは、いとも簡単にその音色を出せてしまう。
ヘルシンキ・フィルの日本公演を聴いた時、楽員の顔が、
「僕達、シベリウスを弾く為に生まれてきました。」と
言っている様にさへ見えました。
それほど自信を持っていて、確信を持って音符を弾いている様に見えたのです。
実際、出てくる音も、ものすごくて、どこぞのアクションだけが大げさで、
出てくる音は実態がともなっていないオケとは、雲泥の差だ。
ヘルシンキ祝祭管もご多分に洩れず、このひややや〜ん、ふわわわ〜んが
出まくっていた演奏だった。素晴らしい!
この時点でようやっと「あぁ、オランダまで来て良かった〜」と
心の底から思えたのでした。
コンサートって、どうしても後半に力を貯める事が多く、
曲も当然デカイものがメインに据えられているもの。
ですがこの日は、前半戦にして全く満足してしまった希有なコンサートでした。
「のっけからパワー全開でなんて、疲れちゃうのよ」というのが、
演奏されてる側からのご意見かと思われますが、極まれにこの
「のっけからパワー全開なコンサート」というのが存在します。
特に肉食王国のオケは、ヘルシーな日本食人種には考えられない体力が
備わっている場合があり、非常に驚かされます。
聴いている側からすると、そんなコンサートに当たった時は、演奏開始早々、
心の中で「やったー!ラッキー」と小さくガッツポーズをとっているものです。
しかし、また稀に、前半に山場がきてしまう困ったコンサートもある訳で。
このコンサートでは、そんな心配事はご無用なのでした。
mumumumumumumumumumumumumumumumumumumumumum
ムストネン&ヘルシンキ祝祭管の後半は「ベト4」です。
我が隊はひねくれ者なので、メジャーな曲に抵抗感があります。
「名曲は、名演に成りづらい」と、某評論家(伏せている訳ではなく、
純粋に誰だか忘れました)がおっしゃられておりました。
ワタクシもこの言葉には、大いに共感いたします。
やはりベートーヴェンはプロの方ですと、それこそ音大生の頃から
散々繰り返し演奏されているかと思います。
「慣れているからミスも無く、より濃厚な表現が可能」というより、「慣れてしまって、
緊張感が無くなってる・・・あれ?」という演奏が多い様に感じられます。
過去にスゴイ指揮者に振ってもらっている経験があって、「こんな若造の指揮者
なんかの解釈にゃ、共感できないね」と思ってるんじゃ?と思う事もしばしば。
聴く側も、名盤がゴマンと存在し、実演で無いにしろCDで名演を
聴きまくっているので、そんじょそこらの演奏にゃ感動しない。
しまいにゃ、「今日の演奏の4楽章の冒頭、フルヴェンの解釈のパクリだよね?」
などと言い出したりなんかして。
とにかく、新鮮味が薄れている事は確かだ!
ムストネンのコンサートは、シベ6でもう大満足♪な状態だったので、
例えメインのベト4がコケたとしてもぜんぜ〜ん問題無しだったのです。
正直申し上げますと、ベト4は我が隊的には、好きな曲ではない訳です。
それがですよ、楽しいのなんのって、すっかり演奏に引き込まれてしまいました。
テンポの速い、ピチピチした、「今が旬だよ」って感じの活きの良い演奏でした。
終演後も、頭の中をベト4の旋律がくるくる、クルクルと鳴り響いておりました。
今年は、ピアニストとして来日していたムストネンですが、
是非とも今度は、「指揮者」として来日していただきたい!
隊長の事前予想では、感動ランキング
1位 ゲルギエフ 「幻想」
2位 シャイー 「マラ9」
3位 ムストネン 「シベ6」 でした。
それが、予想を覆す結果は、
1位 ムストネン 「シベ6」「ベト4」
2位 ゲルギエフ 「幻想」
3位 シャイー 「マラ9」
ほんと実演って読めないわ・・・むむむ。
指揮&ピアニストという
「兼業」に疑問を抱いていた隊長ですが、
考えを改めさせられた一夜でございました。
(次ページへつづく)