ボンの夜道は暗かった - 32 -
ドイツの片田舎の23時、ポツンと街路灯が不安を掻き立てる寂しいプラットホーム。
「22」と「大丈夫、問題なし」という二つの言葉と、
23時に途中下車をさせられているこの状況を踏まえて、推測してみた。
1、23時22分に次の電車が来る。
2、それに乗ればボン(我らの宿がある)に行ける。
3、問題ない。
という事だろう。
しかし、また食い入る様に時刻表を覗き込んでいる隊員が、
「22分の電車なんか、載ってないよ〜」と泣きそうになっている。
だが私は、おっさんの「カイン・プロブレ〜ム!」を信じていたので、
「大丈夫だよッ!来るよッ!!」
と言い、待つつもりでベンチにどかんと座った。
時計を見ると22分まで、20分くらいあった。
がーん、さ・寒い・・・・
5月だったのですが、ドイツの春の夜は寒い。
歯がガチガチいっちゃう程の、寒さだったのです。
すぐにじっとしている事に、耐え切れなくなってきた。
日本の鉄道と違い、改札は無く勝手に駅の外に出て行けるので、
出てみた。
さっき降ろされた「駅前にいきなり家!」という状況ではなく、
店はあるのか無いのか、良く分からなかったのですが、
駅前が広く、バスターミナルのようになっていた。
そこにタクシーが!
でも、たったの2台・・・。
なんてショボイんだ・・・。
たとえ電車で行けたとしても、ホテルの最寄り駅からは、
また15分も歩かなきゃならない。
と考えたら、タクシーにするりと乗り込んでしまった。
タクシーの運転手さんに、チェック・インした時にホテルの人がくれた
住所やホテルの名前などが入った紙を、見せると
「オッケ〜、おっけ〜♪」と自信ありげにうなずいた。
「ほっ、これでやっとホテルに帰れる。」
しかし、この運転手、全然「オッケ〜♪」でなかったんである。
mnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnmnm
まーーっ暗な道を、だい〜ぶ走ってから、運転手さんが車を止め、
通りすがりの人に、なにやら語りかけている。
1人だけではなく、4・5人に車を止めては尋ねて、を繰り返している。
最初は、たまたま知り合いが通りかかって
「やあ!」とか言ってるのかと思った。 ら、
「ただ単に道に迷ってるだけじゃないか〜〜っ!」
聞かれた方も無愛想ながらも、みんな道を教えていた。
そんな通りすがりの人達のおかげで、無事ホテルに着いた。
タクシーのチップは、「料金の一割程度」とガイドブックに書いてあったのですが、
知らない道を一生懸命、走ってくれたので、「ありがとう」という意味で2割くらい渡した。
すると、運ちゃんはびっくりした顔をしていたのだが、
「えー、こんなにくれるの?」という顔だったのか、
「え゛ー、こんなに頑張ったのにこれだけカヨ!!」という顔だったのか、
未だ不明。
高いホテルに泊まりたくなくて、ココにしたのに、
たぶん、その「高いホテル」に泊まれたのでは?
というコトだけはハッキリしている。
ケルンへ行く時は、特急に乗っちゃってるしね〜。
とりあえず、ホテルに無事到着した事で、
そんな事は、どーでもよくなっていた。
(次ページにつづく)