デンマーク国旗(隊長作)

ニールセン  交響曲第4番&第5番  - 12 -  (2004年6月)
   訪問者数 ニールセン  交響曲第4番&第5番


 ブロムシュテット指揮  サンフランシスコ交響楽団
 (LONDON F32L-20251)国内盤
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  【 洗脳 】
  
  大学時代、私は大学オケでヴィオラを弾いていたんだが、弦楽器ってのは野郎が少なかった。
  弦の同期は男私一人で、本来なら楽しい環境になるはずなのだが、揉め事ばかりだった。
  それだけみんなが皆、音楽に真剣に取り組んでいたからで、
  今考えるといとおしいまでの仲間達である。

  そんな私にも後輩が入ってきて、後輩こそつるめる野郎を、と弦楽器男子を待望。
  無事玉のような男の子がヴィオラにもチェロにも入ってきた。
  
  今日はそんな後輩チェリストのお話。
  彼は経験者で音楽的センスが抜群で、ふと耳にしたメロディや譜面を
  事も無げにチェロでらくらくと弾きこなす。
  私がショスタコのチェロ・ソナタが格好イイと聴かせると、即チェロ・コピーで弾いてしまう、
  まぁそんなレベルの腕前だった。
  
  こういった先天性楽器奏者によくありがちな、「弾くのは好きだけど、聴くのは普通」
  というのが、奴にも傾向が見られた。
  「これではイカン!!」傾向には対策が必要。
  私はこの後輩を洗脳しようと思った。

  今までも多くの友人が私のクラ・オタ洗脳計画の被害を受けてはいたが、
  そこそこ聴く奴は抵抗力があるし、一家言も持ち合わせて生意気な反論などする。
  「うーむ、マーラーと言えば、ワルターだろう」とか「第9はフルヴェンしかないっしょ!」
  と言った、何処かで仕入れてきたような持論を開陳する。
  その出典が権威ある評論家や雑誌からであるため、尚更やっかい。

  こういった小生意気で汚れた心には私の愛が伝わらん、と思っていた頃に、
  この後輩チェリストが現れたのだ。
  
  いろいろなCDを定期的に貸し付けて、日々気に入ったものは無かったか
  聴いていったのだが、暫くは何も反応しなかった。
  「うーん、よく分かんないっすね」と笑顔で返答。
  やはり先天性楽器奏者はダメか...と思い始めた頃、
  「ニールセンは凄いっすね、俺、これは気に入りましたよ!」
  いつもはクールというか大人しい奴が、いたく興奮気味だ。
  「ニールセンって、どれよ、どの番号よ」
  もちろん交響曲第1番から第6番の事だ。
  「やっぱ4番が最高ですね、これは凄いですよ」
  やっぱ4番か、まぁいい、最初はそれでもいいんだ。
  私はニッコリ微笑んだ。
  「そうか、気に入ったか、じゃぁ他の指揮者の盤も聴き比べてみるか?」
  
  私もありったけのニル4(不滅)の盤を貸したし、
  年中貧乏の後輩もニル4未聴盤を購入していった。
  
  彼が特別に気に入ったのは結局ニールセンだけだったが、
  マーラーやショスタコを期待していた私には、今も意外で思い出深い1曲だ。
  うしし(隊長作)
みなさんもどうでしょう、マーラー、ショスタコ、
ブルックナーといった交響曲新御三家に馴染めない方、
意外とニールセンが捜し求めていた1曲かもしれませんよ、グフフフ...。
  
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  初めて入手した同曲CDが本盤であるが、結局これが現時点でのベスト盤。
  
  カラヤン盤を筆頭に、ヤルヴィ、ベルグルンド、サラステ、ギブソン、
  メニューイン、リーパー、シュミット、メータ、ブロムシュテット(旧盤)
  と全11種が我が隊にあるが、極め付きがこのブロムシュテット(新盤)。
  
  新盤といっても1987年録音なので、再録音を渇望するが、それにはまず
  ニールセン・ブームが始まらなくちゃぁネ!
  
  この曲は「不滅」とか「滅びざるもの」といった副題を持つが、全く滅びざる音楽である。
  逆に何ゆえ大ブレイクしないのか、わしゃ不思議でならんです。
  壮大なスケール、波乱と冒険に満ちた活劇、清澄なる精神世界、
  どこを取っても最高の音楽の連続。
  楽想や展開は全く自由自在、それでいて音楽は流麗に流れるべくして流れる必然性を伴う。
  これはモーツァルト等ごく一部の天才作曲家のみが、具現しえている表現と同じだ。
  
  ニールセンはデンマークで最も有名な作曲家であるが、日本のクラシック
  界はまだまだデンマーク等の北欧各国をシベリウス独りで十分としている。
  
  しかしそんな時代も、そろそろ終わりにしようよ。
  て言うほどシベリウスが、認知されていないけどさ。
  ベートーヴェン、ブラームス、ドヴォルザーク、
  チャイコフスキーはもう十分満喫したじゃないですか。
  
  特に今年2004年はドヴォルザーク・イヤーのため、ドヴォルザーク・コンサートばっかり。
  どうしてこうした「皆と一緒」風なプログラムに満足できるんだろう。
  世界は広いんだし、優れた芸術なのに光が当てられていない曲は、ゴマンとある。
  
  話をニールセンに戻そう。
  この曲は緩慢な箇所が全く無い曲なので、アマオケ等で取り上げるには最適だと思うが、
  大きな問題が一つある。
  それはダブル・ティンパニだ。
  終楽章はまさに「太鼓連打」さながらで、2つのティンパニが競い合い・
  絡み合い・釣瓶打ちしまくりの劇的な取っ組み合いが行われる。
  
  ここを太鼓も破れんばかりに目ん玉燃やして、連打しまくってくれたら最高の音楽になるし、
  ここまでダブル・ティンパニを徹底的に使っている交響曲を私は知らない。
  マーラー第1番もダブル・ティンパニだが、使い方や発想が全く異なる。
  
  ニールセンは今迄のドイツ・オーストリア系譜での音楽流儀とは完全に逸脱した
  思考回路で作曲されており、それが逆に時代が追い着いて来ない要因なのかもしれない。
  
  同曲のCDで、サロネン盤とヴァンスカ盤を持っていないのは大きな手落ちだが、
  この2枚を除けばブロムシュテットが完全独走状態だ。
  サンフランシスコ響にデンマークや北欧の香りが出せているのか
  不安な方もおられるかもしれぬが、心配無用です。
  逆にデンマーク放送響との旧盤の方が、録音のせいかモヤが懸かったぼやけた印象がある。
  
  (追記)
  推薦したCDは4番&5番のカップリングだが、第5番はもっと好きなので、
  今回は敢えて第4番のみの記事と致しました。
    
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