ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第8番 - 15 - (2004年6月)
ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第8番ニ短調
R・コルサコフ スペイン奇想曲
シャブリエ スペイン狂詩曲
バード、ファーナビィ、ブル等によるアン・エリザベス女王組曲
バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 (61年イタリア・ライブ)
(エルミタージュ ERM 181-2 ADD )輸入盤
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我が家の飼い猫は「バルビローリ」と言います。
えぇえぇ、そうなんです、我が隊は大のバルビローリ・ファン。
バルビについてコンニチ迄書かなかったのは、どうしてなんでしょう?
熱くて、歌心に満ちていて、ねちっこいのがバルビ節の特徴。
それだけに一聴してバルビの音だと判然とし、その熱い熱唱に心高ぶります。
本CDは二部構成になってまして、前半は「アン・エリザベス女王組曲」と題して、
バード、アノニマウス?、ファーナビィ、ブルの計5曲をアレンジして弦楽合奏しています。
パイヤール室内管などだったら、さぞかし典雅な音楽になっているんでしょうが、
バルビに懸かると煮えたぎった演奏になっています。
この解釈がどうのこうと言うより、耳を欹(そばだ)ててしまうことは確かです。
そんな事より本題に入りましょう。
本題はヴォーン・ウィリアムズの交響曲第8番。
我が家にはバルビ&ハレ管(56年盤)、スラトキン&フィルハーモニア管盤、
ボールト&LPOと、このバルビ・ライブ盤しか第8番は持ってません。
ですから確定的な事は言えないんですが、このライブ盤は圧倒的な演奏で
目立たない第8番を表現してます。
いろんな批評でハレ管の下手糞さがバルビの価値低下を嘆いていますが、
この大熱演を聴くと別の事を考えます。
例えばバルビがVPOやBPOでブラームスやマーラーを演奏録音せず、
このヴォーン・ウィリアムズ8番をやっていたとする...。
これは無さそうで有り得なくもない夢ですね。
ですが誇り高きVPOやBPOの面々が、ここまで我武者羅(ガムシャラ)に
成り振り構わず荒々しく演奏してくれたかどうか。
第1楽章冒頭で夜のしじまにぼんやりと流れるテールランプ、そんなけだるいドライブに
突如爆走スポーツカーが突っ走って行く様を見事に描写しています(個人的妄想)。
この爆走スポーツカー(高弦部隊)のパワーだけでも、この演奏がただならぬ名演に
なる事を当時の観衆は確信したでしょう。
こういうライブ盤を聴くと、ライブは可能な限り聴いとくべきだなと思う。
ステレオ・ライブと音源は様々ですが、雑音や素っ頓狂なハズシ音があるにも拘らずライブ盤が
絶えないのは、こういった「火事場のクソぢから」演奏がポっと出に出てくるからでしょう。
また、こういった奇跡的な爆演を見つける事で、我々はCD漁りを止める事が
出来ないのかも知れませぬ。
全4楽章どこでも聴き所ですが、第3楽章は私好み。
弦楽合奏のみの美しい「カヴァティーナ」なんですが、交響曲第5番なんかが
好きな方はきっと嵌りますよ。
私は激しくて戦闘的で破壊的な音楽が好きな反面、悲しくて美しくてそれでいて
ひたむきさのある音楽も好き。
後者に当たる第3楽章はヴァイオリン・ソロもしみじみと唱って悲しみを盛り上げます。
後期の作品にも拘らず、平明なパフォーマンスに溢れていて、終楽章トッカータは
打楽器群団大活躍で華麗な大団円を魅せてくれる。