プロコフィエフ 弦楽四重奏曲第1番ロ短調
プロコフィエフ 2つのVnのためのソナタ
プロコフィエフ 弦楽四重奏曲第2番へ長調
- 23 - (2004年10月)
エマーソン弦楽四重奏団
(グラモフォン POCG-1446)(国内盤)
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【 弦楽四重奏 】
弦楽四重奏(SQ)って、とても思い入れがあるジャンルです。
私は、高校・大学・社会人と中途半端に作曲の真似事(勉強)もやってみてるんですけど、
一番本格的にじっくり長期間に亘って取り組んでいるジャンルが、この弦楽四重奏です。
まぁ、オケでヴィオラをやっていたって事もあって、
イメージもしやすいし、音楽として聴くのも大好き。
ベートーヴェンの後期SQを筆頭に、ブラームスのクラリネット五重奏や、
ショスタコやフランスもの(ラヴェル・フォーレなど)SQなど、
紹介したい曲は山とあります。
ニールセンのSQも変わってて良いしねぇ。
ところが、今、隊長が大音量で流している音楽がプロコフィエフのSQ。
ですから、今日はまた、プロコのネタなんですけど、よろしくお付き合い下さい。
さて、私の「爆音系」メルマガをお読み下さっている読者のみなさんは、
SQに対してどんなイメージをお持ちでしょうか?
オケは何十人もの合奏な訳でして、打楽器や金管もあって音色・音量そのものが違う。
弱音から爆音まで変幻自在なオケに対して、
音色モノトーンのSQに愛着が深い方って少ないかな、と想像してます。
私自身も室内楽のコンサートなんて、数える程しか行ってないですしね。
ところが、まだあんまり聴いてない方がいらっしゃったら、これは勿体無い話ですよー。
オペラにしろ、室内楽やピアノ・ソロにしろ、知らない事って罪なことで、
自分が知らないまま、どんどん年だけ取って頭が固くなって、
新しい感性に対応できなくなっていく。
恐ろしくて悲しい事です。
また、SQってちょっと高級チックな所で、
BGMとして静かに流れている事が多いような気がする。
これこそSQの面白さを貶めている一因、だと思う。
SQこそ大音量でガンガン聴いてこそ、本質が味わえるジャンルなのに。
と云うことは、ライブこそ面白いとも云えるんですよね。
我々が想像している以上に「デカイ」音です。
たった四人の奏者だけど、ビシッとトゥッティで決めてくる所なんか、
カッチョ良すぎです。
さて、今日のお薦めはそんなSQに対して、
先入観を吹き飛ばしてくれるような爆音系SQです。
ただ五月蝿いだけじゃなく、カビ臭いイメージがガラリと変わるようなヤツ。
スポーティーで、お洒落で、颯爽として。
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ワタクシゴトで恐縮なんですが、このCDの影響が大きいです。
バッハにも2つのヴァイオリンのためのソナタという形式はあったと思うんですけど、
このプロコの曲でもって、たった2人でこれ程までの表現が可能なんだと、
身震いしました。
最終的にはSQになるんですけど、私も最初はこの「2つのVn」のための
ソナタを作って、それを「ヴァイオリンとヴィオラ」のためのソナタに書き直して、
更にそれをSQに拡張拡大した作曲経験があります。
ですから、その変形の都度、このCDから音楽を参考にしてるんで、
このCDは聴き込みましたし、思い入れも大きい一枚です。
ある曲を作ろう!とまで思わせてくれた程の影響があった訳だし。
また、それに答えてくれるだけの、内容がどっさりと詰まっている音楽だと断言できます。
SQ第1番。
疾走感といいましょうか、燃焼度が高いと申しましょうか。
この音楽を聴くにつれ、プロコは現代のROCKシーンでも十二分に
ヴィヴィッドな音楽を作りえた人なんじゃないか、と思います。
冒頭から突っ走る、駆け抜けるようなドライブ感が堪らなく、古臭い形式となっている
弦楽四重奏というジャンルを、全く新しい音響とスタイルに放り投げてくれます。
我々は、クラシックという音楽に何を求めいるのか。
人それぞれではあるんですけど、クラシックによる「駆け抜ける疾走感」を
表現し得た音楽って、希少だと思う。
これがポップスやフュージョン、ロックとなら、
軽快なナンバーが多いんですが、クラシックでこれをやってる。
否、それ以上に、完璧に成功している音楽も珍しいと思うんです。
また、このエマーソンSQによる演奏力による点も大きいと思います。
他の演奏ではこれ程まで高度で、なおかつハイ・スピードなアグレッシブな
「攻め」の演奏は聴けませんから。
このメルマガを通して、「お薦め楽曲買いました〜♪」なんて嬉しいお便りを頂く事も
ままあるんですが、この楽曲だけはこのCD「エマーソンSQの演奏」で買って下さい。
音楽自体が滅茶苦茶テクが難しいせいもあるんですが、これだけ攻撃的で
且つ滑らかで颯爽と演奏し切っている盤は無いんじゃないでしょうか。
エマーソンSQは4人の立場を平等にした現代的なグループでして、
第1Vn主導型ではありません。
プロコが意図したとおり、4人があの手この手でしのぎを削り合う切磋琢磨が魅力です。
隙あらば、どのパートも一角を顕したい野心に満ち溢れていて、
それでいて組む所はガッチリと噛み合う。
SQ第2番。
民謡を素材としてるので、メロディアス溢れてるんですが、
一筋縄ではいかないのがプロコヒエフ。
さまざまなハーモニーや味付け、高度な転調や役割の変転で聴き手を飽きさせません。
だけど第1番よりは保守的な作風に仕上がっています。
プロコは前半期の作品の方が、戦闘的で攻撃的でトンガッテます。
そこが痺れるんですが、受け付けられない人もいるようです。
ところが、ロシアに帰り支度をし、ロシアに帰り、
ロシアにどっぷり安住していくプロコの中・後期は作品がどんどん変わっていく。
その過程で生まれるのが、交響曲第5・6番という2大傑作なんですが、
このSQ第2番はその前哨戦ともいうべき作品。
プロコの交響曲第5番がお好きな方なら、この作品もイケルんじゃないでしょうか。
最後に、2つのVnのためのソナタ。
こんなソナタが弾けれたら、どんなに格好いいかしらと憧れるんですが、
聴いてて時々、不思議な感覚に捕らわれる。
あれ?ここってほんとに2人なの?って。
よく聴けば確かにそうですし、コンサートで観れば
そのとおりなんでしょうが、上手く書いたものです。
よくモーツァルトは天才だ、と述べられますが、
プロコフィエフも間違いなく天才です。