(隊長作)

シベリウス  クレルヴォ交響曲   - 25 -  (2004年12月)
   訪問者数 クレルヴォ交響曲



サロネン指揮  ロス・フィル  ヘルシンキ大学合唱団
(ソニー SRCR-9469)(国内盤)

  momomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomomo

  シベリウスの全作品中、シベ6と優劣をつけ難い、私の最も愛する一曲。
  
  今年最後のメルマガを記念して、今日はこの曲、
  そして超絶名盤をお薦めしたいです。
  
  我々はどうあがいても日本人なのですが、
  この年になってきて早くも演歌の良さが分かり始めてきた。
  八代亜紀の「舟歌」などはその最たるもので、
  楽曲の中に舟歌を挿入する曲中曲とも云うべき手法はうなるべきものがある。
  
  そんな日本の演歌の中にも素晴らしい琴線があるのだが、
  シベリウスの初期の作品は日本的情緒が感じられる。
  英国や北欧の音楽は、欧州中南部の国々にはさほど受け入れられていないようだが、
  日本ではエルガーやホルスト、シベリウス、ニールセン等かなりの人気がある。
  これは心の琴線に触れる何かが、我々の国と彼の国には在るのだからと思う。
  そしてそれが明確に、はっきりと解るのが、
  今回お薦めするクレルヴォ交響曲であり、サロネン盤なのです。   (隊長作)

そうです、この曲を聴くならサロネン盤が大プッシュです。
  サロネンは自らも作曲しているだけあって、全く素晴らしい指揮者。
  中堅層で最も私が期待している指揮者でして、
  ラトルなんかよりサロネンの方が数段実力が高いと思うのは私だけでは無いでしょう。
  
  このサロネン盤では、シベリウス初期のむんむんと匂い立つような香気がたまらない。
  特に演歌調な節回しが絶品で、この演奏を聴いたとき、これこそ日本とフィンランドが
  モンゴルを介(かい)して繋がっている事を音楽的に理解したほど。
  雷鳴に打たれるような思いだった。
  
  この盤以外にはベルグルンド盤は勿論のこと、ネーメ・ヤルヴィ、
  パーヴォ・ヤルヴィ、パヌラ、サラステ、コリン・デイヴィスなど
  クレルヴォ交響曲と見つけるや、可能な限り収集してきた。
  この中ではコリン・デイヴィス盤が最もサロネン盤と伯仲しているが、
  私のベストと云えるのはやっぱりサロネン盤になる。
  
  息遣いやフレィジングといったオーケストレィションが美しくしなやかで、
  こう演奏してこそこの曲が音符以上の魅力が増す事が分かっているかのような指揮。
  
  第一楽章で特徴的な演歌調な節回しがあるのだが、この演奏だけがこの箇所はパーフェクト。
  他の演奏ではどの盤も此処をサラリと流していて、なんとも寂しくなる。
  
  サロネン盤では此処で聴く人の心を鷲掴みに捕まえてしまう。
  
  この楽章を聴いていると、
  鉛色の空を伴った荒々しく波飛沫をあげる日本海を想い出さずにいられない。
  NHKの大河ドラマのオープニングで使っても、
  一向に違和感を思えないほどの稀有な日本的世界。
  
  また合唱が良い。
  この交響曲はソプラノとバリトンの二人の独唱と、男声合唱団が異様な兄妹間の世界を
  謳い上げているのだが、はらわたに染み込むような迫力がある。
  そんな絶唱の中でもオーケストラはグイグイと底流を掻き回してくれて、
  歌と楽器が渾然一体となって、異常世界をより一層に異様な興奮にいざなってくれる。
  
  終楽章でも演歌調の歌いっぷりが再現され、涙を誘う。
  この楽曲のテキストはフィンランドの叙事詩から編まれているようだが、
  内容はかなり滅茶苦茶できわどい。
  オルフのカルミナと併せて、テキストは度外視して音楽を純粋に楽しみたい。
  もう少し普遍的で純粋なテーマを扱ったテキストだったら、
  シベリウスの第九的代表曲になれるのに、と残念に思う。
  
  シベリウスの交響曲全集などでは含まれていない楽曲だし、作品番号7番
  という若書き(二十代)だがベルリオーズの幻想交響曲と並んで、
  青春の突発的天才音楽です。

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