(隊長作)

2009年1月17日(土)  16:00   - 244 -    訪問者数

     名古屋フィルハーモニー交響楽団  K・イシイ=エトウ指揮
     愛知県芸術劇場 コンサートホール


     ベートーヴェン   弦楽四重奏曲第15番(弦楽合奏版)
     レスピーギ     アダージョと変奏
     チャイコフスキー  ロココ風の主題による変奏曲
     ブラームス     ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編曲)

  xawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxawxa   (隊長作)

今年に入って、不思議と目に止まり出した演目。
  ブラームスのピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク・オケ版編曲)。
  R・シュトラウスのアルプス一万尺。←?
  ショスタコーヴィチの交響曲第10番。
  
  私が上記の曲が好きなゆえ、注意して拾っているから
  見つけているだけかもしれませんが、数年前までは
  これらの曲がポンポンと演目に上がる事は無かった。
  
  今シーズンの名フィルはちょっと異常だったので(来期はグっと変わってしまう)、
  異色プログラムに一つではあるんですが、それにしても面白い意欲的プログラム。
  知性と好奇心に満ち溢れていて、こういうプログラムなら
  名フィルでも聴きたい。   

愛知県芸術劇場

ちなみに本日の演目で好きな楽曲は、
ベートーヴェンだけ。

ブラームスはラトル&バーミンガム盤を
唯一持っているんですが、
このCD演奏はかなりひどい。

世界中でラトルの才能は認められて
いますが、私は認めません。

(隊長作)

  ラトルのバーミンガム時代、随分意欲的なCDをどんどん出してくれたので
  好みの楽曲は幾つか買ったんですが、どれ一つ感心した演奏はナッシング。
  
  どれ一つ無いとは、ある意味、相当好みが合わないだけなのかも。
  とにかく、あのCDは駄演、と斬って捨てても間違いは無いでしょう。
  
  そう思ったのが、ピアノ四重奏の原曲を聴きこんだせい。
  ラトル盤を聴いただけでも「何だかピンボケてるなぁ」とは思ってたんですが、
  室内楽のハッキリ・クッキリした演奏を聴いてしまえば、   (隊長作)

もうその歴然たる違いに唖然。

  ちなみに私が聴いている原曲・室内楽版はルービンシュタインのピアノに
  ガルネリSQが加わったもの。ルービンシュタインはショパンのPコンで
  ゾッコンになって以来、実にわたし好み。

  激しい情熱と猪突猛進な演奏は、味わい深さまで求める向きには
  合わないかもしれませんが、老境に達したアルトゥール翁が
  若きブラームスの情熱をこれでもかとばかり立ち向かって行きます。
  終楽章の猛烈なロンドには、これぞ若きブラームス!と
  思わずにいられません。
  
  ブラームスの室内楽は実は好きでして、自分がヴィオラをやっていたこと、
  ブラームスがクラリネットやヴィオラにも愛情を向けていた事を知り、
  交響曲よりも室内楽に共感を感じていました。
  クラリネット五重奏のあの何とも言えない美しさ。
  ピアノ五重奏やヴァイオリン・ソナタの美しさ。
  
  こうやっていろいろ思い浮かべてみると、シェーンベルクが何ゆえ、
  敢えてピアノ四重奏曲第1番をオーケストレィションしたのか・・・?
  あの冒頭の不安定な主題提示が、いかにもシェーンベルクには受けそうですが。
  
  そりゃ、ものの本には御尤もな事は書いてございますよ。
  でもそれを書くなら、クラリネット五重奏でしょう、
  と思うのは私だけでは無いはず。

  ただし、クラリネット五重奏はシェーンベルクの音彩で
  オケ化されては滅茶苦茶かもね。
  その辺をシェーンベルクも自重したのでしょう。
  
  どうです?誰ぞクラリネット五重奏をオーケストラ化して、
  著作権など放棄してネット公開してみれば!
  世界では既に誰か実行しているかもしれませんが、何万回と
  演奏されているブラームスの交響曲より、よほど聴いてみたい事か。
  ピアノ四重奏でもあれほど面白くなるんだから、クラリネット五重奏や
  ピアノ五重奏、弦楽六重奏に弦楽五重奏、弦楽四重奏・・・。

  いくらでもブラームスらしい音彩でオーケストレィションされていれば
  聴いてみたいでしょう。原曲は原曲のままでこそ美しい、
  と仰る方も多いでしょうが、ブラームスの交響曲はあまりにも少ない。
  (隊長作)

やっぱり交響曲は十五曲くらい無きゃあ、ね!
  

愛知県芸術劇場

さて、名フィルの演奏会。
冒頭は大好きな
「病癒えた者の神への聖なる感謝の歌」。

これは大病から回復したベートーヴェンが
書いた弦楽四重奏の一章なんですが、
実に味わい深い。

こういった心が洗われる音楽は、アベ・マリアとか
バーバーの弦楽の為のアダージョとかばかり
やってないで、灯台下暗し、ベトベンのSQにこそ
宝物がこぼれている。
  
  ちなみに、私はベトベンSQは後期派です。
  なんだ、お前もか、と笑われそうですが、やっぱりまだ中期は判らない。
  しかし後期、第12番以降はどれを取っても素晴らしい。
  交響曲第8番がどうだこうだと言ってるヒマがあるなら、
  後期四重奏曲を聴くべきですよ。

  不滅の9曲なんて言われますが、ベトベンに再編曲の時間があったれば、
  きっと第12番以降の幾つかでもって、優れた交響曲にまとめ直したんではないか?
  
  これまた弦楽合奏版ばかり演奏されますが、誰か素晴らしい
  オーケストレィションしてくれたら、シェーンベルク並に名前が
  残せるでしょう(これはシェーンベルクに対する、私からの嫌味です)。
  
  お次のレスピーギとチャイコは、まったく判らず。
  チャイコのロココ風なんて、言わば「チャイコのチェロ協奏曲」みたいな楽曲。
  
  本来ならヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲みたいにバンバン
  CD化されたり、演奏会での常連曲になったって良い資格がある。
  しかし、そんなに演奏されて無いですよね。
  チャイコフスキーが大好きな御仁にはロココ風も良いのでしょうが、   (隊長作)

そうでも無い人にとっては、これはキツイ。
  ベートーヴェンやブラームスの陰に咲く花と並べられたら、
  本当に力の差が浮き彫りになって可哀そう。
  題名がロココ風と華やかなだけに、一層楽曲のみすぼらしさが惨めです。
  
  ブラームスのピアノ四重奏曲第1番、聴いた事が無い人は直ぐにCD買って
  聴いて欲しいんだけど、オケ盤でのオススメ盤を知らない。
  逆に、誰か決定盤を知っていれば教えて欲しいくらい。
  

ちなみに肝心のイシイ=エトウの演奏は、
なかなか良かった。
生演奏という事もあるが、響き過ぎる
愛知県芸劇において適度な引き締めた
管弦の鳴らし方は上手くいっており、
いつもよりクッキリした演奏となっていた。

それでいてシェーンベルクならではの
原色じみた派手な音響も豪快に出し、
ブラームスだったら「絶対にやらない」
オーケストレィションが、
なぜかにんまりきた。
  
  真のブラームス・ファンは、こんなオーケストレィションも
  「あり」と思うんでしょうか。
  私はハンガリー舞曲みたいなドンチャン騒ぎが、
  ある面ではブラームスの一面でもあり、しょうがなくもない、と思う。
  しかし、もう少し、侘び寂や渋い音色にコラージュしていれば、
  もっともっと採り上げられているだろうに。そこが残念。
  
  

  ** 追記 **
  
  ブラームスのピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編曲)に
  興味を持たれた方にお知らせ。
  

  3月14日(土)19時、杉並公会堂
  早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団、征矢健之助指揮
  
  ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番
  フンメル/トランペット協奏曲
  ショスタコーヴィチ/交響曲第10番
  

  全席自由、無料♪
  タコ十だけでも大変なのに、ブラームスのこの曲だって、
  結構きついと思うんですよ。
  そこをやってのけるのは、若さゆえのパワーなのか。
  当日は外せない用があって東京に行けないんですが、
  大成功演奏会を期待しています。


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  *** 過去の 『早稲田大学フィル』 なコンサート感想。

    * 小林研一郎指揮 早稲田大学フィル / マーラー 交響曲第1番 他


















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