月(隊長作)

6月27日(日)  14:00  - 32 -   訪問者数
    米津俊広指揮  高田馬場管絃楽団
    練馬文化センター

    ベートーヴェン   交響曲第1番
    R.シュトラウス  交響詩「英雄の生涯」
  
  babababababababababababababababababababababababababababababababababababa
  練馬文化センター

今回は東京でも屈指の老舗オケ「ババカン」です。

十年ほど前、私が東京で働くようになって、
とあるアマ・オケに入団した時、
中年の団員さんに聞いた事があります。

  「東京には山のようにアマ・オケがありますが、
  どこが一番うまいんですかねぇ?」

  「上手いかどうかはその時々だけど、有名オケってのはあるね」

  「どこです?」ペット(隊長作)

うちだよ
  「あはは...、そうですけど他には?」

  「ババ管とかくにたちとか渋響とかかなぁ」
  
  なんせ10年前の話ですので、余り気になさらないで頂きたいのですが、
  そんな訳で私は「ばばかん」をインプットしたのでした。
  
  全国何処でもそうだろうけど、アマ・オケの発祥には2種類あります。
  一つは地域集合系。なんとか市民管弦楽団という奴ね。
  でも実際には学閥があったりします。
  
  も一つは大学OB系。大学OBがそのまんま受け入れ態勢で待ち構えている奴。
  これは伝統があるオケほど厄介です。
  
  最近はそんな閉塞感を打破しようと一発オケが花盛りですが、
  意外とこんなオケが結束力を発揮して続いたりしています。
  地域にクラシックを普及させよう、なんてコンセプトはもう達成してるよ
  うですし、趣味の時間まで上下関係に縛られるOBオケも何だかなぁ。
  ですが、やりたい曲をやっちゃおう!というオケは勢いがあって、
  集中力とやる気度は半端じゃありません。
  
  ですから、伝統ある老舗オケの「やりたい曲をやっちゃおう!」的な
  プログラムには目を瞠(みは)りました。
  と云っても当団のリヒャルト歴は凄まじく、「ドン・ファン」「死と変容」
  「ティル」「ばらの騎士組曲」といった中規模の名作は大方演奏済みです。
  
  きっと当団には頗るリヒャルト・ファンがいらっしゃるのでしょう。
  念願叶(かな)っての「英雄の生涯」です。   すし(隊長作)

リヒャルトの最高傑作を選ぶとき、人々の意見は分かれます。
  私は「アルペン」ですし、隊長は「ばらの騎士」。
  「エレクトラ」だと叫ぶ方もおられるでしょうし、今回の「英雄の生涯」だって無論です。
  リヒャルトの作品群は、決定打が無いのではなく、どれもが拮抗せんハイレベルな世界なのです。
  そのタッチ(筆致)は似ていますが、「ばら」や「死と変容」はたまた
  「エレクトラ」等は全て描く対象やベクトルが異なります。
  異なる中で、殆どの作品を傑作に持って行ってしまう彼の力量は素晴らしいです。
  
  当日の演奏では、まずベト1でした。
  こうした大作前のベト1等はついつい「点け合せ」風になってしまう
  のですが、この日の演奏はのっけから感心しました。
  純粋に上手いです、良いです。
  かつて俊友会管でブル6前にベト1を聴いた感動に匹敵する溌剌さがありました。
  これは本編リヒャルトにも、大いに期待してしまいます。
  
  リヒャルトはドイツ音楽ですが、縦の線より横の流れ、そう、歌の流れが重要です。
  しかしその複雑なテキストから、こまごまとした音型を縦の線を
  気にせず歌い紡いで行く事は非常な冒険です。
  何が云いたいかと言うと、歌の流れより「いち・にぃ・さん・しぃ」
  といった縦のラインが勝った演奏になってしまっていました。
  
  ですから演奏は決して淀んだり滞ったりすること無く、確実に前へ進んでいきました。
  ですが、残念だなぁという感が拭えませんでした。
  一つ一つの音や難所はクリア出来ているのに、
  それが傑作たらしめる快演に結びついていない。
  あそこが吹けてない、ここが弾けてない、なんて下らないレベルでは
  無いだけに、全く持って残念な気持ちを更に深める次第でした。

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