かぶ(隊長作)

9月19日(日)  15:00   - 45 -   訪問者数

    サンティ指揮  NHK交響楽団  NHKホール
  
    ロッシーニ    「ウィリアム・テル」序曲
    モーツァルト   交響曲第35番「ハフナー」
    ドヴォルザーク  交響曲第9番「新世界より」

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  【 感想と批評と批判 】
  
  若い頃は、音楽評論家が嫌いだった。
  そもそも人様が一生懸命やってることを、肘枕(ひじまくら)しながら
  聴いてる奴が何を偉そうなゴタク抜かしてんのん!と思ってた。
  だから私は自らオーケストラに飛び込み、溺れながらも懸命に足掻(あが)いた。
  
  しかし、それから二十年。
  こうやってメルマガで、人様の力演をぐだぐだ書き散らしている自分がいる。
  ときには虚しくなったり、無意味極まりない事のように考える。
  だけど、オーケストラの中から外を見た昔の自分と、オーケストラの外から昔を想う今の自分。
  見えるもの、聴こえるものが、かなり違う。
  それをなんとかして伝えたい気持ちが、今はまさる。
  
  弊誌創刊時は、誹謗中傷だけは避けようと思ってた。
  人は真剣な諫言には心を動かされても、衝動による悪態には気分を害するだけ。
  だから、できるだけ弊誌は朗らかで聴きたくなるような感想を目指そう、
  
  そして、多くの人にコンサートに足を運んでもらえたら、と考えていた。
  
  ところで、プロの評論家による音楽商業誌がある。
  学生の頃は、純粋に音楽批評に感心し、大いに参考にした。
  だけど人の数だけハートがあるように、音楽から受ける感受性は千差万別である。
  できるだけ嗜好が近い友人同士で聴きに行ったコンサートでさへ、感想はさまざまだった。
  
  また一般に、優れているとされているものを狂信的に支持する人は多いが、
  逆に人から貴ばれないものを掲げると賛同してくれる人が極端に少なかったりする。
  前者は多数決の論理であり、後者はカルト的な思想に繋がるからか、忌避さえされる。
  
  弊誌では、「クラシック・コンサート批評」とはせず、
  「クラシック・コンサート感想」としているのは、そんな経緯(いきさつ)があるから。
  批評だなんておこがましい、感想に毛が生えたものだ、と自分を諌めていたい。
  ましてや、批判などはもってのほか...なのかな。
  
  現代のクラシック界では、摩訶不思議な現況に置かれ続けている。
  特に挙げたい事例は、全く良くない演奏なのに、拍手している人が多いことだ。
  ブーイングをみんなでしよう!とまでは言わない。
  そこまではせんでも、拍手なんてしなくたっていいじゃない、と言いたい。
  
  高いお金を払って、遠い距離を移動したり、貴重な自由時間を費やして、
  人々はひとときの感動を求めて集まる。
  良いなぁと思えば拍手すればいいし、良かないと思えば「良くなかったね」
  と言ってあげたい。
  でも、折角足を運んだコンサートに、自ら感動しなかった自分を認める
  不快な行動はしたくないのだろう。
  ブーイングや拍手しない人はあまりいない。
  
  古来、拍手(かしわで)は、悪霊を追い払う効現があったと云う。
  魔物から身を守るように、カシワデを叩いているのか?と錯覚してしまう。
  
  少し大仰なるかな。
  ちょっと真面目に考えた。
  
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  今年50回目のコンサート、なのにコンサート感想が
  第43回って云うのは気にしない気にしない。
  聴きに行ったコンサート全部が全部、書ける演奏内容では無いんですよ。
  難しい大人の選択、というヤツです。
  NHK HALL
そんな玉石混交な中、天下第一と
自負していらっしゃるN響様に対して、
その耳くそで詰まった節穴をほじくり出してあげる
責務が我々熱心なファンにはある、と思うんです。

N響は決して実力が無い訳ではない!
ただ、やる気がないだけ。

  今回も少々辛辣な感想となるかもしれませんが、平にご容赦。
  
  まずはロッシーニ。
  彼の曲はどれも難しいとは思いますが、良い曲が多いですよね。
  しかも「ウィリアム・テル」とくれば、ショスタキストとしては黙ってはいらしまへん。
  ショスタコはこの軽快なメロディを交響曲第15番で思いっきしパクッて、
  いや引用して、一大おちゃらけワールドを展開しております。
  知らない人がいたら、一度はお楽しみ下さい。   うしし(隊長作)

笑えますよ。
  これが何故、ラスト・シンフォニーだったのかは理解し難いんですが、
  ニールセンだって第6交響曲でぶっ壊れていますから、
  未来の音楽はぶっ壊れた世界なのかもしれません。
  
  だけど、演奏は笑えなかった。
  この序曲の冒頭では長いチェロのソロが6人各々にあるんですけど、
  とーしろーが弾いてるのか?と思っちゃった。
  緊張されたのか実力だったのかは分かりませんが、自分が嫌になっただろうなぁ。
  芸事の世界は、残酷です。
  幾ら周りがどうこう言おうたって、自分が一番よく分かってるもんね。
  
  反転、モーツァルトは良かったです。
  凝縮したメンバーゆえか、サンティの意思がしんみりと浸透。
  第2楽章のトリオなどを絶品で、早くも
  「今日こそはN響絶賛メルマガが書けるかも!」と胸躍るひと時でした。
  
  メインが「新世界より」。
  これは期待してなかったんですが、やっぱり予想どおりでした。
  音楽本来がもつ雄弁さが、普通の演奏をカバーしてくれましたが、
  これならおうちで手堅い名盤を聴いてた方が良かった。
  奇を衒うのがいいわけじゃないけれど、あまりにも正攻法で、あまりにも
  没個性。
  モーツァルトで魅せた美しさには何かを感じさせましたが、
  ドヴォルザークに感じなかったのは私の耳と心のせいだろうか。
  
  来週土曜日はCプロです。
  大好きな「シンデレラ」序曲や「ローマの松」はあるし、
  ハイドンもかなり期待していい。
  それにしても、今年は妙にハイドン第88番が多いんだけど、
  何か訳があるんでしょうか?

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