は音(隊長作)

2004年10月16日(土)  15:00   - 48 -   訪問者数


    アシュケナージ指揮  N響  NHKホール
    
    R・シュトラウス   アルプス交響曲
    シューマン      ピアノ協奏曲イ短調 (H・グリモー)

  arnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarnarn

  【 アシュケナージとアルペン 】
  

NHK HALL

今シーズンよりN響音楽監督に
アシュケナージが就任しましたが、
我々のアシュケナージの想いでは
少し前からあります。


  今まで欧州旅行には、二人で7回行ってるんですが、そのコンサート聴きまくり旅行の
  数々のコンサートのうち、3回もアシュケナージの演奏会に出くわしてます。
  「出くわしている」なんて表現しますのは、我々が彼を求めていない所以(ゆえん)で
  ありまして、日程の都合上や何も聴かないよりはマシだろうとたまたまやっていた
  コンサートがアシュケナージ指揮する演奏会だった、などの
  消極的かつ失礼極まる理由からでした。
  
  3回のうち、2回がチェコ・フィルとの組み合わせで、曲目はドヴォ7やマラ7でした。
  場所はウィーン(コンチェルトハウス)でしたが、とにかく何も心に残っておりません...。   すし(隊長作)

しかし、あと一つの演奏会。
  99年ベルリンはフィルハーモニーホール(俗称カラヤンサーカス)、
  ベルリン・ドイツ交響楽団と行われた演奏会。
  これは、私の五指に入る屈指の大名演でした。
  前プロ?にブラ4を持ってきて、メインにアルペン、という
  ダブル・メイン・プログラムでした。
  
  この話は、かなり信じて貰えそうに無いので封印しておきたかったのですが、
  奇しくも今回、彼がN響とアルペンを演奏するとあっては思い出さずにはいられなかった。
  また、比較せずにもいられなかった。
  
  この時の演奏会は、今思いこしても陶酔感を味わえるほど黄金に光り輝く
  会場と伴に思い起こされ、聴衆のほとんどが唸るような喚(おめ)きと、
  津波のようなスタンディングオベィションが強烈に心に残っています。
  前半のブラ4からして異常な燃え上がりを起こし、もうこれだけでも
  ベルリンに来た甲斐が十二分あったと感動してました。
  万感溢れる疾駆するような異色のブラ4でしたが、咆哮と流麗な歌い廻しが絶妙で、
  あの夜のアシュケナージはきっと何かに取り付かれていたと思う。
  たとえば楽団の浮沈に関わるような時期だったとか、
  アシュケナージの去就が囁かれていた時期だったとか。
  あの名演はアシュケナージひとりの偉業ではなく、
  オケも有らん限りの奉答で応え、観客もまた然りでした。
  
  ベルリンではその後も何度か演奏会に行きましたが、あれほどの熱狂した
  聴衆は見れませんでしたし、私もあれ程の感動はロンドン・プロムスの
  チョン・ミュンフンしか得られていません。
  
  アルペンを聴いて深く感じたことは、彼らヨーロッパ人にとって
  アルプス山脈とは、共有しえる心の古里なんだ、ということ。
  我々日本人が、関東に住んでいようが関西に住んでいようが、富士山が心の古里で
  あるように、彼らは国境を越えてアルペンに対する想いが強烈無比なんです。
  そして、その愛してやまないアルペンが美しければ美しいほど、気高くて壮麗であるほど、
  その神秘性を恍惚に表現してくれる者に対しては、熱狂してしまうのである。
  
  私も部外者ながら、そんな感動のおこぼれを偶然あやかったのですが、
  その人「アシュケナージ」が日本で、N響を使ってその曲を再現してくれる
  と云うんですから、聴かない訳にはいきませんでしょう。
  
  fujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifujifuji
  
  今年9回目のN響鑑賞です。
  なんだかんだ言ってますが、読響の9回と並んでいます。
  
  アルペンに言及する前に、シューマンの協奏曲とエレーヌ・グリモーの感想を。
  読者の皆さんは意外に思われるかもしれませんが、私(隊員)、
  シューマンのPコンは何故だか、かなり好きです。
  シューマンの4つの交響曲よりも好きですから、その気持ちは分かっていただけると思う。
  そして好きな曲ほど、辛辣で意地悪な感想を書いている私ですが、
  このグリモーの演奏には感心しました。
  
  自分の中ではアイドル上がりの美形ピアニスト、なんて位置づけだったのですが、
  打鍵に力がありますし、強弱自在なタッチには惚れ惚れとしました。
  鬼女アルゲリッチにはまだまだ遠いですが、若手女流ピアニストとしてはかなりなものです。
  お陰で物凄く楽しい気分でメイン曲に臨めました。   ふじ(隊長作)

「アルペン・シンフォニー」
  どう飾って書いても陳腐な文章になってしまうので、
  私なりの思ったままの文章で書かさせて頂くと。
  
  国内オケの演奏としてはここら辺が限界なのだろうし、生まれて初めて「アルペン」の
  ライブを体験したとしたら感動してたんじゃないか、といった出来でした。
  予想していたよりも、遥かに良い演奏でした。
  いろいろと比較したり、細かい点を言い出したら折角のいい気分が損なわれる。
  とにかく今は、小さきながらささやかな幸せを噛みしめよう。
  そんなほんわかした感動を得られました。
  私のN響に対する厳しい対座にしては、素晴らしくウェルカムな受容でした。
  
  でもね。
  聴きながら、やはりベルリンでの感動と想い比べてしまっていた。
  彼らヨーロッパ連合によるヨーロッパ賛歌「アルペン」は、
  あまりに羨まし過ぎる土壌にあります。
  もし日本にも、「富士山交響曲」とかいう世界的不朽の名曲があればどうだろう。
  その曲が何らかな劇的なイベントで演奏されれば、大概の国内オケでも屈指の
  大名演を成し遂げるんじゃないだろうか。
  
  悲しくて悔しいが、日本にはそういった大交響曲がない。
  これこそ我々日本人を、日本そのものを表しているんだ、といった大音楽が無い。
  私はナショナリストでは無いし、愛国心もチッとも無いヤツですが、あぁいった
  ヨーロッパ全土が共有できるほど感動にノタ打ち回れる音楽が、
  彼らにある事が羨ましくてしょうがない。
  あんなに美しい曲、あんなに壮麗な音楽。
  それはその土地や風土を基に産み出されたと云う。
  日本、そしてアジアだって、欧州に負けないくらい良い所なのに...。
  
  日本を、いや、アジア全土を共有の感動で包み込むようなフトコロの
  でっかい音楽が、近いうちに現れる事を待ち望んでいます。
  

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