12月15日(土)16:00 - 170 -
名古屋フィルハーモニー交響楽団 矢崎彦太郎指揮 名古屋市民会館
サティ バレエ「パラード」
プーランク バレエ「牝鹿」組曲
R・シュトラウス ブルレスケ
ストラヴィンスキー バレエ「ペトルーシュカ」1947版
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10月以来の名古屋。
久々の名フィルですが、
久々に行くだけの甲斐はあるプログラム。
我々はフランスものに弱いが、
こういった風に興味を引き立たせてくれる
組み合わせだと、聴いてみたくなる。
フランスものとして思いつくのは、
幻想交響曲やラヴェル、ドヴュッシー。
幻想交響曲の骨格はドイツ音楽だし、ラヴェル&ドヴュッシーだとガツン
と来るものが弱い。
今回のプログラムは天才興行師ディアギレフを中心とした選曲だそうで、
来期の名フィル・プログラムを予感させる好プログラム。
サティの「パラード」なんて、CDや話のネタでは知っていても、
こうやって実演に巡り合うとは思いもしなかった。
て云うか、サティのオーケストラ曲をプログラムに載せてるプロオケが、
日本にどれだけあるだろう?
この曲「パラード」では、
数々の小道具が音楽的に登場し、
実演こそ効果的な楽曲。
ラチェット(ガー!となる木製の歯車)。
タイプライター(改行時、チーンと音が鳴るタイプ)。
サイレン(2種あり)。
←終演後、ロビーにあった写真付き解説
その他、
ピストル(非常時を想定して、張り紙でピストル音を警告していた)。
回転する福引箱(まさにあのガラガラ音)。
水の音(どこでどうやって鳴らしていたのか気付かず。効果小) などなど。
特に私の注意を引いたのが「ボトル・フォーン」。
ペット・ボトルに小石が少量入っており、これを規則的に振ることで、
「ザッ!ザッ!」と音が鳴る。
それがセカンド・ヴァイオリン&ヴィオラの大多数に各自持たせて、
十数人で振らせたんだから、それはそれは効果的だった。
忠臣蔵の赤穂浪士が、雪を踏んで行進する時の効果音で使える!
※ボトル・フォーンは、こっち↓のコトかもしれません???
プーランクの牝鹿組曲は新古典派っぽい平明さで、プログラムにも良く出ていますよね。
これが今回の演奏会で、一番聴き劣りしていた。
他の楽曲が全て一癖も二癖もあるもんだから、少し場違い。
私だったら、ココにはディアギレフ繋がりということで、プロコフィエフの
「放蕩息子」をバチーンと入れちゃうんだけど、楽譜か難易度の問題の為か、
採り上げられていなかった。
本日一番期待して聴き、
これこそを目的として行った曲が「ブルレスケ」。
我が隊隊長が昔から異常に
執心してやまない曲でして、
アルゲリッチ演奏盤(LD)が
飛び切り素晴らしいだけに、
確かにこの曲は神掛かった
イマジネィションに溢れている。
リヒャルトは好きだけど、ブルレスケって何?という人がいらっしゃったら、
これは儲けモン。
アルゲリッチ盤を探し求めて、堪能して下さいませ。
あのアルゲリッチが本気120%になると、ああなってしまうのか、と
感嘆極まりない超名演です。
ちなみにこの日のピアノ演奏は若林顕でしたが、予想以上に力強く良かった。
隊長はもう少しテンポが「アルゲリッチ並みだったら」と言ってますが、
それは酷な話。
ただ、演奏を雑にしてでもスピード重視にした方が、
楽曲の興奮度は上がると思います。
メインは「ペトルーシュカ」。
ストラヴィンスキーについて普段、
四の五の言わない事からお察しの通り、
ほとんど関心がない。
こうやって聴いてみると、
なかなか良いネと思うんですが、
ストラヴィンスキーだけの演奏会だったら
恐らく行かないと思う。
ストラヴインスキーは演奏効果絶大なんで、今だに
プロ・アマ双方に愛されている作曲家。
しかしペトルーシュカを聴いて感じた事は、音楽構造が薄っぺら。
裏旋律やリズムの独立性、複線や同時進行して行く音系列が少ないんです。
同時に二つ三つの異なる旋律や主題が交差して、縺れたり解けたりしていくうちに
音楽が絶頂に向かっていくさまが好きなんですが、ペトルーシュカは
単旋律がほとんど。
解り易い構造を隠すかのように、突然違う素材を挿入して聴衆を煙に
巻きますが、小手先技法なんじゃないか、と思うわけです。
ストラヴィンスキーを愛好愛聴してらっしゃる人にすれば、飛んでもない
暴論・無知な感想なんでしょうが、漠然と聴いた限りではそう感じました。
あと、メロディー・ラインが好みで無いんで、バルトーク同様、
今しばらく彼らの良さに気付けないでしょう。
プロオケ相手にしばしば登場している指揮者矢崎彦太郎。
初めて聴いた指揮者でしたが、強烈な個性は無い。
これだけの選曲を指揮した人ですが、また聴きたい、とは思わなかった。