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コンサート感想


2010年3月13日(土)14:00  サントリーホール
日本フィルハーモニー交響楽団 / ラザレフ 指揮
 モーツァルト : ミサ曲ハ短調「大ミサ曲」
 プロコフィエフ  交響曲第4番(改訂版)

(隊長作)


今回は赤坂見附から出発。歩道が広くて、3月ながら気候良く、
気持ちよく歩く。

平日はオフィス街だからビジネスマンが足早に交錯して
行き交うんだろうが、土曜日午後のこの街は実に穏やか。

高層ビルが美しく、やっぱり私には
都会が一番!

ラザレフのプロコフィエフ・ツィクルス、今回は交響曲第4番(改訂版)。
毎度ながらモーツァルトの前座が付いているのだが、今回は「大ミサ」
という60分も掛かる大曲。

前座のくせに、態度デカ過ぎんちゃう?

(隊長作)

腹も一杯になって、休日の午後、気温は二十度を越える小春日和。
こんな麗らかな春の日に、一時間に渡る宗教音楽が寄せてきたら、
睡魔に勝てる方がおかしい。

ミサ曲が始まって数分は、心が洗われるねぇとモーツァルトに浸っていたが、
レクィエムほどインパクトに欠けるナンバーが続き出すと、意識が少し遠のきだした。


モーツァルトだって、才気走った
エキサイティングな楽曲は多い。

メインのプロコを引き立たせるためとは言え、
ここまで眠くなるような大曲を
持って来んでもええのに。

(隊長作)

どうせモーツァルトに一時間を使うんだったら、戴冠ミサと
ミサ・ソレムニスを組み合わせて、一日に2曲も聴けた
と思わせる手もあったのに、ラザレフは珍しい選択をしたかったのだろう。

一時間もの大曲をぶつけてきた割に、ラザレフのモーツァルトは
眠くなる演奏で、この後のプロコ演奏を考えると
「どうしてモーツァルトを敢えて持ってくるんだろう?」
と首を傾げてしまう。

プロコをやる代わりにモーツァルトをやってくれと、裏取引でもあったのか?

ラザレフが本心から演奏したいと思った曲とそうでない曲、それが
プロコとモーツァルトではないか?と言ったら、言い過ぎだろうか。

今回はプロコ4番なのだが、まず、私の理想的演奏(CD)をご紹介しよう♪



ナクソス盤というだけで軽んじて聴こうとしない人がいるかもしれないが、
クチャル指揮ウクライナ国立響(カタログ番号 8.553055)
によるナクソス盤はトンデモ盤である。

今、私のアイポッドにはプロコの第4番が、キタエンコ(30年版と47年版)、
ロジェストヴェンスキー(47年版が2種)、マルティノン(30年版)と
入っている。ロストロポーヴィチとかオザワは、もう聴いてない・・・。

プロコは一等好きな作曲家なので交響曲CDは大概保有しているが、
取捨選択していった結果、上記指揮者がアイポッド内に残っている。

その中でも圧倒的、まったく圧倒して爆演なのが、クチャル盤。
ロジェヴェンやキタエンコだって、単一で聴けば十二分に恐ろしい秀演なのだが、
このクチャル盤を聴いてしまうと全てが色褪せてしまう。

生演奏さへ凌駕してしまう優秀録音なため、今回のラザレフ演奏会でも
ついクチャル爆演を思い出し比較してしまって参った。

ナクソス盤で入手しやすい上に安価だから、一度買って聴いてみて欲しい。
更にヘッドホンで聴いてみれば、なぜそこまでクチャル盤を推奨しているのかが
解かって頂けよう。


そうは言っても、やっぱりライヴ。
CDには収まり切れない微細なパート演奏まで聴こえてしまい、
日頃CDで愛聴している音以外が各所から聴こえて来る事は、
やっぱりどうしようもなく面白い。

こればかりはCDで味わえない醍醐味であり、
プロコフィエフみたいに精緻な書き込みを
している楽曲だと、いかにCDに収まり切れてない
パッセージが多い事かに驚く。

ラザレフという指揮者はそこを良く解かっていて、
通常では控え目にしてしまうような動きまでも
特徴付けた解釈をするもんだから、演奏はますます面白くなってしまう。

第1〜3楽章まで聴いて、これは超名演に立ち会えたか!?と
王手飛車取り心境になった。

しかし終楽章、ここに私の鬼門がある。
ピアノがゴンゴンゴンゴンとリズムを取る上をスネアドラムが
「竹箒で水面を叩く」ような壮烈な描写があるのだ。
私はココが大好きで、プロコ4番でどこが一番ゾクゾクするかって言うと、
ココを置いて他に無い。
しかし!・・・ラザレフは、ココが駄目だった。

皆さんも自分の好きな曲には、ココゾという名場面があるでしょう。
私にとってのプロコ4番は今言った終楽章のスネアドラムがそうで、
ココを完璧に演奏しているのがクチャル盤だけなのだ。

逆にクチャル盤以外の全ての演奏は、それほど大見得を張った
スネアドラムでは無い事から、クチャル盤だけがトンデモ演奏を
している危険性がある。

派手好きなロジェベン盤2種でさへスネアドラムはそっけない叩き振りだし、
キタエンコも毅然とはしてもスネアドラムは圧倒的な音量では無いので、
クチャルだけが楽譜に反した演奏をしているのかもしれない。


しかし、たとえ楽譜に反した演奏をしていようとも、
このクチャル盤こそプロコ4番を完全体にしてしまっている。

勝手な妄想だが、クチャル盤をプロコフィエフ本人が聴けば、
クチャルの演奏どおりの楽譜指示にプロコは絶対
書き換えるのではないか・・・

そこまで思ってしまう。

だって、それほど良いんだもん。

さてさて、ラザレフ演奏。
第3楽章までは好調だったが、終楽章のスネアドラムで私を落胆させた。
しかもそこからのドキドキ追跡シーンのようなスピード音楽が理想なのに、
ラザレフ演奏はモタモタ。

終楽章ラスト4分は兎に角「速く」が理想。
流れるような各パートの演奏、各パートが追い駆けっこして、
追いつきそうになったり追い抜きかけるようなハラハラするスピード感が醍醐味。
そして、非常に難しいパッセージの連続。

神でも舞い降りてこない限り、モタモタ演奏になるのは仕方ないのかもしれない。
しかしラザレフだったら「神」演奏をしてくれるかもしれない、と期待
してしまうじゃないの。

しかし、残念ながらラザレフにも神は舞い降りてこなかった。
第3楽章までの演奏からして、もしかしたら今日は神が舞い降りるかも
しれないと手に汗握っただけに、ラストで、もたついてしまって、ガックリ。

東京駅近くのビル


ラザレフはプロコフィエフ・ツィクルスという
重いプロジェクトを敢行している割に、終演後は
なんだか軽々しく、客席中央席はもちろん、
左翼側にも右翼側にも、仕舞いにはP席側にも忘れず
投げキッスを連発。

笑いも取って本人楽しげ、
「のだめ」シュトレーゼマンを地で行くようなキャラクター。

本当に、凄い奴かもしれない・・・。


過去のコンサート感想。

過去の 『ラザレフ&日フィル プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト』 な感想。

2009年6月
* 交響曲第2番 他
2009年10月
* 交響曲第3番 他

過去の 『プロコさん交響曲』 な感想。

アマオケ学生
* 千葉大学管弦楽団 金聖響指揮 / プロコフィエフ 交響曲第5番 他
* 神戸大学交響楽団 奥田恵悟、河合悠吾指揮 / プロコフィエフ 交響曲第5番 他
* 大阪府立大学交響楽団 加藤美那子指揮 / プロコフィエフ交響曲第7番 他
アマオケ社会人
* フライハイト交響楽団 井崎正浩指揮 / プロコフィエフ交響曲第5番 他
* 俊友会管弦楽団 堤俊作指揮 / プロコフィエフ 交響曲第5番 他
* 名古屋シンフォニア管弦楽団 堀俊輔指揮 / プロコフィエフ 交響曲第5番 他
* NTTフィルハーモニー管弦楽団 田代詞生指揮 / プロコフィエフ 交響曲第5番 他
* オーケストラ・ディマンシュ 金山隆夫指揮 / プロコフィエフ交響曲第6番 他
* 吹田市交響楽団 新谷武指揮 / プロコフィエフ交響曲第5番 他
プロオケ
* NHK交響楽団 ボレイコ指揮 / プロコフィエフ交響曲第5番 他
* 新日本フィル ハルフター指揮 / プーランク ピアノ協奏曲、 プロコフィエフ 交響曲第3番
プロコフィエフ・ツィクルス
* ロンドン交響楽団 ゲルギエフ指揮 / プロコフィエフ交響曲第2番 他
* ロンドン交響楽団 ゲルギエフ指揮 / プロコフィエフ交響曲3番 4番 他
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