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コンサート感想


2012年1月28日(土)18:00 NHKホール
NHK交響楽団 / スラットキン 指揮
 ペルト : フラトレス(1977/1991改訂)
 バーバー : ヴァイオリン協奏曲
 チャイコフスキー : 交響曲第6番「悲愴」

(隊長作)


N響客演指揮者と云えば、サヴァリッシュとかプレヴィンとか、
何の感動も呼び起こさなかった有名人が多かったけど、
最近のN響は熱演が多く、客演もなかなか良い。

2012年のN響はこのスラットキンのほか、
ノセダが、カセルラ交響曲第2番(2012年2月)という貴重な演奏会を開いてくれたし、
同年9月には再びスラットキンが登場し、なんと「レニングラード」をやってくれた。
出来は普通。

11月のデ・ワールトは演目が良くて、ヴァルキューレ第一幕コンサート形式と、
ブル8の両方を聴いちゃった。これも出来は普通。

そうは言っても、やっぱ東京の演目は贅沢だ。 ただし、東京の全てが良い訳でも無い。

今頃になって、名古屋の演目は面白くなってきてるし、
東京の大学オケ(2013春夏 シーズン)は、ドヴォルザークだらけで失笑。
全国の学生諸君!東京っつったって、大した事ないんだよぉ。

そんな中、昨日(2013年5月25日)聴いた青学のニールセン第4番は
選曲も演奏も 素晴らしかった。

慶應も来月(2013年6月)ショスタコ第10番を採り上げる。
早稲田も面白企画で対抗し、5月にワーグナー&ヴェルディ、10月は二夜連続で
ベートーヴェン交響曲を第1番から第5番までのハーフ・ツィクルス。

さぞかし団内では盛り上がって企画したんだろうが、これがアッテルベリとか
パリーとかニールセンでもRVWでもいいけど、そういった次世代の音楽を
ドカーンと持ってきてくれたら、もう倒れてしまうのにね。

東京のほとんどの大学がドヴォルザークやブラームスを繰り返しているが、
ほんの数校は意欲的な演目に挑戦しており、楽団内でどのような選曲会議が
繰り広げ られたのか妄想してしまう。

話をN響に戻して、指揮者スラットキン。
以前も書いたが、私はスラットキンを非常にかっている。
CDも買い込んでるが、そのCD演奏で大当たりした感動が大きい。
プロコフィエフ第6番がソレでして、未だスラットキン盤を超える6番を聴かない。

プロコCDでは、他に第4番ならクチャル盤、
ピアノ協奏曲なら、第2番のキタ エンコ盤が超オススメだ。



さて、今回の演奏会について。
こういったプログラム構成は、私の理想形だ。
ペルトを持ってき、バーバーまで入れちゃう。

この2曲だと客入りが不安だけど、メインの悲愴でバッチリ。
ペルトと悲愴は相性ばっちりだし、バーバーと悲愴も哀愁が通底する。

久々に演目組合せで感心した。 悲愴目当てのお客さんなら、
何割かはペルトやバーバーの哀しみに共感してく れるはず。
うまく考えたもんだ。

このメルマガを読んで下さってる方なら、ペルトなんて今さらでしょうが、
ペルトは、滋味に普遍性があって飽きない。ミニマムっぽい本曲「フラトレス」は、
決して、フラストレーションが溜まるよ うな意味ではない。
「親族・兄弟・同士」といった意味だそうだ。

音楽だけからは親族や兄弟を連想しないが、連綿とした小さなパッセージの連続が、
DNAの螺旋でも現しているんだろうか。現代音楽といっても、こういったメロディ有りも
あるのか、しかもメッセージ性も強いな、と多くの聴衆が感じてくれればと思う。

中プロはバーバーのVコン。 この曲はVコンの中では特に好きな曲で、
ショスタコやプロコのVコンより好きだ。

大好きな北欧英国系作曲家もVコンは、お付き合いで書いているが、
シベリウス、エルガー、ニールセン、RVW、ウォルトンほか色々ある。
考えてみたら、ヴァイ オリン協奏曲の中で一番好きな曲だ。

それだけ私の中では、Vコンの相対的地位が低いのだ。
私のお気に入りバーバーVコン盤は、アイザック・スターン盤。
女性指揮者オールソップもテンポを揺らしに揺らして、
本曲のロマン性を掻き 乱してくれる。

バーバーは言わずと知れたアメリカを代表する作曲家だが、
このVコンを知ら ぬ人に、どの国の音楽か問うてみたい。
きっと北欧系と答えてくれる人が多いだろう。 そう感じて欲しいほど、
透明性があって美しい。

三楽章形式なんだが、あのアクロバティックな終楽章さへ無ければ・・・。
弦楽のためのアダージョのような簡潔簡明な中に、しっかりした筋が透けて
視えるような終楽章だったら、どんなに現代で神格化されていたことだろう。

それでもそれでも、この協奏曲は第1・2楽章だけで十二分の価値がある。
第2楽章はオーロラが思い浮かばれるような寂しい夜の音楽。
この冷気と広漠とした世界で、静かな音楽がゆったりと歌われ出す。
こういった音楽をN響でやってくれた、スラットキンの見識に感謝。

ただし当日のソリストが今一歩で、線が細い。
音楽的にも線の細さが美しさに繋がる箇所は多いのだが、クルっと切り替えして、
骨太に歌う必要性も多い本曲、このソリストでは楽曲の真髄は現し切れなかった。

私は思っていないが、アメリカ人による悲愴なんて、と思う人はいるだろう。
実際は、スラットキンの悲愴は予想外に良かった。

第1楽章が終わった段階では「こりゃ、名演になりそうだ」と奇跡に立ち会える予感がしたが、
第2楽章でテンション落ちた。第3楽章で挽回して、そのまま終楽章も成功したけど、
一度緊張の糸が切れた 第2楽章がいつまでも私の中では引っ掛かった。
勿体無いことであった。

(隊長作)



【こんな曲だよ♪参考動画。】

『オランダradio4さんup♪ペルトの「フラトレス」。オランダ放送フィル&ズヴェーデンさん指揮 』な動画。

upされてる日: 2012/01/19
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