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コンサート感想


2012年1月15日(日)15:00 新国立劇場中劇場
東京オペラ・プロデュース / 飯坂純 指揮
 プロコフィエフ : 歌劇「修道院での結婚」(日本初演)

(隊長作)


待ちに待ったプロコフィエフのオペラ「修道院での結婚」。
ご存じない方も多いでしょうが、ケーゲルの名盤でその凄さを確認して欲しい。
あの演奏を聴けば、このオペラがどれほど素晴らしいのかを。

今から十数年前、ケーゲルの衝撃的名盤が続々と話題となりました。
ビゼーのアルル、マーラー巨人、ジャンニスキッキ、パルジファルなど、
あれから十年以上ずっと聞き続けている名盤が実に多い。

ジャンニスキッキなんて普通なら聴きもしないのに、
ケーゲルの魔法に掛かれば、なんて見事な音楽となるのだろう。
ちなみに、ケーゲルの演奏は声楽、特に合唱が加わったものが特に素晴らしい。

よってオペラは驚くべき仕上がりで、また、録音が良いので
眼前で演奏されている迫力がある。

そんな名盤の中に、この修道院もあります。
プロコの音楽の中でも取り分け解りやすく、親しめて、華やかで盛り上がる。
聴いたことが無い人は、ぜひ「ケーゲル盤」で聴いて欲しい。
抜粋盤なのが残念で不可解だが、それも現在は廃盤なので中古で探すしかない。



でも探すだけの価値は大有り。
こういった驚くべき名曲名盤が、さして話題にもならず
廃盤になってしまっている世の中の不条理。

こんなことをしているから、CDが売れなくなってゆくのだ。
売れそうなものを大仰に祭り上げて売れるようにするんじゃなく、
凄いものを当たり前にプッシュしてゆくだけで、人々は戻ってくるのに・・・。


今回の演奏会場は、初台。
初台駅周辺は気に入った店が無いので、新宿五丁目駅までブラブラ。
駅南西に小洒落たイタメシ発見。



「ポポラーレ」というどっかで聞いた事があるような店名ですが、なかなか良い。
CPが高く、小洒落た所でありつつ腹一杯食べたい人向き。
味もなかなかなもので、また来たいと思った。

ランチ・メニューは、トゥデイズ・ランチ1050円、
ポポラーレ・ランチ1,300円など。



食いしん坊の私はポポラーレ・ランチにしたが、腹がふくれた。
パスタと肉料理と小皿前菜、パンにデザート、ドリンクと分量は
1,300円相当だし、旨いので満足感がある。
初台周辺で無理やり食事するより、ここまで運動がてら歩いた価値もあります。



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さて。
なんせオペラですから、チケットが高い。
アマオケ(1,000円)か、N響(E席1,500円)ばかり聴いているので、
最低価B席と言っても六千円は久々。

滅多に聴けない、しかも日本初演、かつ大好きなプロコフィエフと来れば、
一万円くらい出しても聴きたい演奏会です。

新国の劇場に初めて入ったのですが、
1,038席という座席数から想像していた以上に舞台との距離感が近く、
要するに「狭い!近い!嬉しい!」という感慨だった。

プロコのオペラをもっと多くの人に聴いて貰いたいけど、
こんな濃密な空間で堪能できるとは、新国中劇場いいぞ。



舞台装置は学芸会みたいでチャチかったが、回転四面舞台を
活用して舞台転換が多くて見飽きない。

オペラといっても喜歌劇なんで、舞台装置や背景に金をかける必要は無い。
衣装は意外と手が込んでいたので、予算配分がしっかりしていた。
演出面では、ピンクの衣装の子供天使がハートの弓矢を持ち、
手紙を渡したり心臓をチクリと刺したり、視覚的にストーリーを
解り易くしてくれた。

さてさて、肝心の演奏。
オケの演奏が、ゆるい。ゆるすぎる。
ゲルギエフDVD盤なら比較的入手し易く、誰もが視聴しやすいので比較しますが、
ケーゲル盤を愛聴していた私としては、ゲルギーはあまりにあまい演奏なんです。

そんなゲルギエフ演奏を思い出すようなゆるさで、これを聴いている人には
落胆も小さかったのでは。

ケーゲルが名演過ぎて、あれを聴き過ぎると多くの演奏は
凡演に聴こえてしまう。これは弊害だ。

(隊長作)

でも、劇場一杯にプロコの音が充満している、この嬉しさ。

(隊長作)

プロコの貴種なオペラが、ナマで眼前で展開されている驚異。
ケーゲル盤はドイツ語だったので歌詞が旋律から、あぶれていたが、
さすが本家ロシア語版はスムーズでイタリア・オペラやドイツ・オペラとは
全く違う雰囲気がある。

演奏プログラム裏面に、このオペラはロッシーニ風だと書いてあったが、
確かにプロコフィエフ・オペラの中では娯楽性が高く、音楽的にも楽しさが
充溢している。

修道院にて坊主たちが合唱するシーンがあるが、
ロッシーニ「チェネレントラ」を連想してしまう。

この修道院の坊主連合唱団のアンサンブルは見事で、
彼らが歌い出したらオケも乗ってきて、オペラ全体がウキウキしだした。
長帳場のオペラや大交響曲にはえてしてこういった事があり、
些細なキッカケから俄然音楽が輝き出すこともあり、またその逆もある。



演出面では、登場人物が舞台からオケピットに対して掛け合いがあり、
会場の笑いを取っていた。

太鼓とペットとクラリネットがお笑い担当で、セリフに「太鼓うるさい!」とか
「待って!今、手紙読んでるから、演奏やめて!」なんて遣り取りがある。

音楽的にも面白いが、舞台で観れば更に面白くなる。
前半はステージの動きが派手で観客を飽きさせなかったが、
中盤は観客の中でも子供がソワソワしだしたので、やっぱ子供は正直だ。

プロコフィエフ自身は9歳でオペラを書いたと言われるが、
天才と凡人の差は大きい。

こうして全4幕を見通してみて、ケーゲル盤がなぜ抜粋版にしたか判った。
うまく抜粋してあると感じるが、ケーゲル演奏なればこそ冗長な箇所も
良かったのではないか。

出来栄えの良し悪しを全曲版で是非確認したいが、
抜粋盤でさへ廃盤なんだから、本当にもう!

オペラとなると全曲演奏せざるをえないが、コンサート形式なら
抜粋1時間ヴァージョンで演奏会に載せやすくなるのでは?

たまに「道化師」と「カヴァレリア・ルスティカーナ」が同時上演されているが、
プロコも大作オペラ「炎の天使」とこの「修道院での結婚」を抜粋コンサート形式に
してくれれば、涙ちょちょ斬れもんなのだが。

そういったファンが喜びそうな、かつ啓蒙的なコンサート企画を夢見る。

(隊長作)


過去のコンサート感想。

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