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コンサート感想


2011年2月11日(金祝)19:00  NHKホール
NHK交響楽団 / チョン・ミュンフン 指揮
 マーラー : 交響曲第3番

(隊長作)



今年はマーラーの没後百周年記念で、全国各地でマーラー演奏会がてんこ盛り。
名古屋のマーラー音楽祭が最も画期的で、東海地方のアマオケたちが
マーラー十曲をそれぞれが奪い合って演奏していくと言う、夢のような競演。

アマオケ各団の上手い奴等が集まってベストメンバーを作るのでなく、
今までの玉石混交なアマオケなままマーラーを各団一曲採り上げよう
という無謀な計画。

当然、第3番や第8番も無視する訳にいかず、
全曲やってしまうのが凄いところ。

アマオケ界でも完全にレパートリー化されたマーラーだからこそ
出来た企画だが、こうなりゃブルックナーとかショスタコでも
同様の企画を東京で実現してもらえないものか。

マーラーにせよブルックナーにせよショスタコにせよ、
演奏されるようになったとは言え、やっぱり
スタンダードナンバーが依然幅を利かせているわけで、
マーラーなら第8番、ブルックナーなら第5番、
ショスタコなら第4番をもっと毎年楽しみたい。

日本のアマオケ界は確実に面白い方向に進んでいる。

(隊長作)

日本のプロオケはどうか?
関東に戻ってきて残念なのが、プログラムの保守化。
先の見えない日本を反映してか、各団プログラミングが実に
堅実保守になっている。

先日のプロコ「道化師」演奏会でも書いたが、意欲的なプログラムは
一部のマニアは喜ばせるが、集客はやはり困難。
集客できないと団の経営に関わってくる。

赤字を埋めるスポンサーやパトロンがいればいいが、
そんな企業メセナなんてバブル期の夢になってしまった。

そんな中、ひとり気を吐いているのがN響だ。
散々N響演奏に失望してきた私だが、ここ数年の変わりようは本物だ。
一回や二回のクリーンヒットでなく、コンスタントに質の高い、
かつ面白いプログラムを提供し続けている。

実際今年上半期に行ったN響演奏会は、
1月、ペトレンコ指揮、チャイコフスキー「マンフレッド交響曲」
2月、ミュンフン指揮、マーラー「交響曲第3番」
4月、ノリントン指揮、エルガー「交響曲第1番」
5月、尾高忠明指揮、R・シュトラウス「英雄の生涯」
5月、尾高忠明指揮、エルガー「交響曲第3番」
6月、アシュケナージ指揮、プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」
  「3つのオレンジへの恋」組曲

どうです? ベートーヴェンやブラームスが好きな人には解らないでしょうが、
私と似たベクトルの人はきっと頷いてくれると思います。
正直、マーラーの交響曲第1番や第5番はもう食べ飽きたのです。

敢えてマーラーでなく、エルガーやリヒャルトが
今、私の食指が伸びる対象物なのです。

もちろんココにRVWやニールセン、アッテルベリ、マリピエロ、
バタワース、ステンハンマル、パリーあたりも加わってくれると
悶絶するんですが、まだ時代はやって来ないようです。



しかし今から数十年前、ここまでマーラーが王者になるとは思いませんでした。
マーラーはこんなにいい曲なのに、どうして滅多に採り上げられないの?
いつも、そう思ってました。

ところが現在、マーラーは完全に日本オーケストラ界の主役です。
ベトベンやブラームスが主役を明け渡した訳ではないですが、
主役の座を均等にシェア割りさせられたような格好です。

シューマンやシューベルト、メンデルスゾーンといった中期ロマン派が
衰退しているとも言えましょう。

さて、なかなか感想に至らない時は、お察しの通りです。
かなり好きな指揮者ミュンフン、マーラーの演奏珍しい第3番と
絶好なシチュエーションなのに、ほとんど感動しませんでした。

そもそもマーラー第3番はさして感興赴かず、それほど好きでもありません。
終楽章は感動的ですし、ソプラノの独唱や大合唱は荘厳ですけど、
どうしてか激しく好きになった時期も無い。

じゃあなんで聴きに行ったのだと問われれば、ひとえに「珍しいから」。
やっぱりマーラー第3番はまだまだ演奏されてないもんね。

そんな理由で行ったら、案の定、ぼんやりした受け止めしか出来なかった。
観客の受けはとても高く、ブラボーは飛ぶは、拍手は収まらないは、
大成功な演奏会だった。

その会場で冷めた気持ちでいると、疎外感がひとしお募るのだった。
多くの演奏会に行きたいけれど、興味の薄い演奏会に行ってもこうだ。
演奏会に行き始めた頃、ちょっとした事でも感動できた若き日々。
演奏会に行き続け、歳を取るというのは、哀しい時もある・・・。

(隊長作)


過去のコンサート感想。

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