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コンサート感想


2011年6月4日(土)15:00  NHKホール
NHK交響楽団/ アシュケナージ指揮
 プロコフィエフ : 組曲「3つのオレンジへの恋」 (16分)
 プロコフィエフ : ピアノ協奏曲第2番 (33分)
 シベリウス : 交響詩「大洋の女神」 (11分)
 シベリウス : 交響曲第7番 (22分)

(隊長作)


2011年上期のN響プログラムは、半端なかった。

1月
チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(ペトレンコ指揮。)

2月
マーラーの交響曲第3番(ミュンフン指揮)。

4月
エルガーの交響曲第1番(ノリントン指揮)。

5月
エルガーの交響曲第3番(尾高忠明指揮)。


そして、今回の6月がアシュケナージのプロコフィエフだ。

しかもロメジュリだとか、キージェ中尉だとか古典交響曲といった
入門編でなく、一歩進んだ交響曲第5番でもなく、更に二歩
進んだ選曲と来た。

CDでは収録盤の多い組曲「3つのオレンジへの恋」だが、
こうやってナマ演奏に出会えたのは今回が初めてだ。

アンコール・ピースとして、たまに演奏される
第3曲「行進曲」が有名だが、今回は組曲6曲が
通して聴けれる超レア演目。

ちなみに、「3つのオレンジへの恋」という飲食店が
早稲田にあるそうで、一度は行ってみたいと思っている。


プロコのPコンと言えば第3番が有名すぎて、
演目に上がれば第3番ばかり。

第3番以外の演奏会なんてあったっけ?
と思うほど珍しいが、今回は第2番。

これぞプロコの「ザ・ピアノ協奏曲」といったガチガチの
アヴァンギャルドで、特に終楽章のピアノとオーケストラの
掛け合いは格闘技を聴くような激しさ。



Pコン第3番はアルゲリッチ&アバド盤で、しかも王道の
グラモフォンから出ているよね。

確かにアレはいい盤であるが、キタエンコ盤
(ピアノはクライネフ)のPコン第2番を聴けば、
後者は鳥肌が立つ凄まじさで、アルゲリッチには悪いが
クライネフが圧勝している。

このキタエンコ&クライネフ盤「プロコPコン全集2枚組」が、
なんと千円前後で売っている。こんな凄い演奏が、
あんなに安くで売ってもいいのか?!と哀しくなってしまう。

これはマリピエロの弦楽四重奏全集(2枚組)(オルフェウスQ伴が
千円前後で買えるのと同じくらい、嬉しくもあり、哀しくもある。

アルゲリッチ・ファンと対立したくないのだが、
Pコン第2番と第3番は出来具合そのものが根本から違うためであり、
第2番は攻撃力に特化した作品であり、これがキタエンコの芸風に
マッチしているせいだ。

演奏会直前までキタエンコ盤を聴き込んでいたので、
どうしてもリアル演奏(アシュケナージ)の安全運転が我慢ならなかった。
自滅覚悟でキタエンコ並み超高速演奏を敢行してくれていたら、
ライヴならではの奇跡的名演もありえたかもしれない。

そこまでの度胸というより、キタエンコのように
本曲の真髄「攻撃性」を見抜いていないアシュケナージの
取組み姿勢に、彼の能力の限界をまた一つ知った。



しかし納得ならんのが、演奏の曲順。前半のプロコフィエフは
2曲合わせて49分。

一方メイン後半のシベリウスは同じ2曲を合わせても33分だ。

明らかにプロコの方がメインを張れる規模と大きさを備えているのに、
日本ではまだまだシベリウスの方が集客出来ると云う事か。

もしくは、アシュケナージもN響もプロコPコン第2番(メイン)で
企画したが集客を不安視し、苦肉の策でシベリウスの短めの曲と
引っくり返したのか。

だが、これではどうしても後半へ体力温存せねばならず、
プロコPコンでの完全燃焼は恐れてしまう。
しかも前プロ「スリー・オレンジ」が爆音に次ぐ爆音だらけで、
これはこれで管楽器は疲れただろう。

不満は多々あれど、何はともあれプロコPコン第2番の生演奏が
初堪能できたことを喜びたい。様々な障害を恐れて、
プログラムに組む段階でボツになる楽曲でしょうから。

数年前までは読響が意欲的な演奏で、それはもうしょっちゅう
演奏会に行きましたが、昨今の読響は食指が伸びない。

安定したプログラミングゆえか、読響の収支も安定しているそうだ。
結局、2011年は一度も読響に行かなかったんだが、
次期プログラムがどうなるか、真剣に見守っている。

 

一方、N響2011年は後半も凄い。

9月、
ブルックナーの交響曲第7番(ブロムシュテット指揮)。

10月、
プレヴィン指揮で、ドイツ・レクィエム、組曲「ばらの騎士」。

11月、
マーラーの交響曲第4番、「大地の歌」(コウト指揮)。

12月、
マーラーの交響曲第8番、「青髭公の城」(デュトワ指揮)。

1月、
ショスタコ第10番、ペルト「フラトレス」(スラトキン指揮)。

2月、
カゼッラの交響曲第2番(ノセダ指揮)。

上記の演目は素晴らしい限りだが、その大半が土日に
やっている事がありがたい。

いかに珍しい演目でも、平日とか月末とかに演奏されても、
多くの社会人は聴きに行けない。

もちろん、平日休暇やシフト制の職場も増えてきたが、
日曜もしくは土日休暇の人が多いだろうから、
それにピタリと当てはまるN響は、最近一番ありがたい
楽団となっている。


(隊長作)

過去のコンサート感想。

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