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コンサート感想


2011年5月22日(日)14:00  ルネこだいら
オーケストラ・シンフォニカ・フォレスタ / 石川星太郎 指揮
 ニコライ : 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
 シューベルト : 交響曲第7番「未完成」
 ブラームス : 交響曲第3番

(隊長作)



第1回演奏会、いわゆる旗揚げ公演というのが好きである。
意気投合した仲間が集まり楽団創設を目論み、団の方針や選曲、
団員の確保、練習時間や場所確保、会計や予算、そして演奏会企画運営。
たった半年のうちでやらねばならない事はいくらでもある。

社会人オケともなれば本業の合間に雑事や練習をこなしてゆく訳で、
少数精鋭でも大規模でも大変なことは同じ。演奏巧者だが非常識な人や、
運営上手なんだけど演奏が独りよがりだったり。

派閥が出来たり、恋愛模様あり、選曲で揉めたり、
転勤で泣く泣く退団する人が出たり。

同好の士が集まってやるだけに拘束もできない、がんじがらめだと
反発者も出てくる。それでも新しいオケは毎年現れる。
だからこそ新しいオケが生まれるのかもしれないが、どれどれ?
今度のオケはどんなもんかな?と楽しみになってしまう。

数年前誕生したオケ、オーケストラ・ナデージダ。
アッテルベリやロシア音楽を主軸にしたコンセプト型専門オケが現れた。
第1回演奏会の出来は・・・だったが、回を重ねるごとに耳を疑うほど上手くなった。

きっと設立趣旨に賛同した巧者が、どんどん集結したのではないか、
と睨んでいる。何故なら、日本でアッテルベリをやりたきゃ、
あのオケに入るしかないんだもん。

今回設立されたオーケストラ・シンフォニカ・フォレスタは、
少々楽しみなコンセプトがある。当団HPによると、
「アマチュアオーケストラの中で、あまり取り上げられない『名曲』を
積極的に演奏していこうというコンセプトのもと、設立されました。」とある。

名曲なのになかなか採り上げられない、これにはいくつか理由がある。
最も当てはまるのは、演奏困難であること。むかしはベートーヴェンの第九が
そうだったように、大規模な合唱団や編成を要する大曲。

しかし最近ではマーラーの復活や第9番が頻繁に採り上げられ、
演奏されがたい名曲は少なくなってきた。

アマオケにとって避けたい名曲というのは今でもあって、
ブラームスといえば第3番だろう。大学オケの常連曲は第2番だし、
市民オケの常連曲は第1番や第4番。しかし、第3番はありそうであまりない。

とは言っても、「フロイデ」HPで確認したところ、
2011年だけで25公演も演奏されているんだが・・・。
もっと多くの作曲家を満遍なく聴きたい私にとっては、
「ブラームスは4曲中3曲も頻繁登場してるからもう十分やないか」
と言いたいんだが、世にブラームス・ファンは膨大にいる。

大志を抱いて楽団創設された訳だが、第1回演目からブラ3だと、
今後はチャイコフスキーのマンフレッド交響曲とか、
ドヴォルザークの初期・中期交響曲・・・?

フォレスタHPを覗いて見ると、なんとエルガーのチェロ協奏曲とベト2。
ベト2は付け合せとしても、チェロコンは意外だった。
「フロイデ」HP確認したところ、2011年は2公演だったので、
これは確かに少ない。やってそうで、やっていない名曲と言える。



話は変わるが、オケは5分野から成っている。
高弦、低弦、木管、金管、打楽器。ヴィオラは中弦やぞ!とか、
ホルンは木管よとか、ハープやピアノも入る曲があるんやけど・・・
なんてゴチャゴチャ言わんで欲しい。大雑把な耳には、5つくらいにしか
腑分けできない。この5つの大きな塊が単独になったり絡んだり、
壮大に混ざり合ってハーモニーを醸し出したり。

私はいつもこんな風に聴いている。主があって、対もしくは従がある。
さらに独立した三つ目の存在があればなお面白いが、大体にして
主と対がどういった鬩ぎ合いで進んでいくかを楽しんでいる。
主とは主旋律、メロディー・ラインだ。
朗々と聴こえてきて当たり前だし、ここがミスったら話にならない。

問題は対、対旋律もしくは従旋律で、ここをどう演奏しているか、
もしくは主とどう対抗しているかを楽しむ。誰もが知っている名曲は
主旋律中心で進んでいるが、えてして対旋律が面白い事が多く、
この対をどう料理しているかで演奏の出来も変わってくる。

(隊長作)

更に欲を言えば第三の存在が、CDなどでは聴き取れないライヴならではの
埋もれがちな存在を掘り起こしてくれる演奏だと狂喜乱舞だ。
ヴィオラ奏者やファゴット奏者は判るだろうが、CDからは
まったく聴き取れない音形やリズムを奏していることがままある。

いつもいつも脇役がしゃしゃり出てきてはまずいだろうが、
主旋律がフェードアウトする一瞬、タタタン!とスカートの影から
白い何かが一瞬見えたかのように演奏してくれると、
実に得をしたような、滅多に聴けない何かを得られたような
嬉しさが込み上げてくる。この辺を忘れないで頂けると、
ヴィオラやファゴットは実はかなり面白い数寄物な存在として活躍できる。

さて、新規創設された第1回演奏会。正直に言うと、
木管が文句なしに良かった。だから今後、木管が難しいゆえに
あまり採り上げられていない名曲を探した方がいいのかもしれない。

また、コンミスがプロの卵みたいな人なので、ヴァイオリン・ソロが
あるばかりに演奏され難い曲、例えばマーラー第4番とか、そういった曲を
選んではどうだろうか。 全体としては、ブラ3は荷が勝ち過ぎた曲だったかもしれない。
なかなか演奏されないのは、やっぱり理由があるんだなぁと感じてしまった。
もちろん、そこそこには完成された演奏ではあったのだけれど。

ブラ3演奏の出来が厳しかったからと言って、ブラ2とかドボ8にすれば
満点が取れたかと言うと、私はそうは思わない。ブラ3という大きな目標が
あったればこそ実力を超えた演奏会となったのだし、選曲レベルを下げれば
慢心と気力欠如も手伝って普通の演奏会に成り下がっていたと思う。

絶えず一手届かない目標を掲げ、あと一歩だったなという演奏にした方が、
気が付けば大きな存在になってしまえるんだと思う。もう今から、
エルガー・チェロコン演奏会の次に、どんな選曲がされるか、楽しみにしている。
こういった選曲にこだわっていく楽団が、一つでも増えていく事を望む。



(隊長作)

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