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コンサート感想


2012年3月7日(日)14:00 サントリーホール
読売日本交響楽団 / スクロヴァチェフスキー指揮
 ショスタコーヴィチ : 交響曲第1番
 ブルックナー : 交響曲第3番



(隊長作)

本場のコンサートやオペラ観たさに、ベルリンやウィーンによく旅行した。
大都市は一区画ズレただけでも治安が物騒になる事が多く、
個人旅行だったので、コンサートホール傍の高いホテルに泊まった。

東京で言えばサントリーホールで聴くべく、ANAやオークラに泊まるような感じ。

ところが、高い金を出して泊まった都心のホテルは、
周りが官公庁・ビジネス街ど真ん中で、繁華街と云えるような商店街が無い。

ショップがあっても、ブルジョワ相手の高級店ばかりで、
ホテル代で散財してしまった貧乏人には、覗いてみる気力もない。

いよいよ東京オリンピックも決まり、放射能を気なしないで頂けるんなら、
東京も観光客が増えて来るだろう。富士山、芸者、アニメだけでなく、
私みたいな「旅先のオーケストラ」にも関心を持って旅行スケジュールに
組み込んでくれる旅行者も増えるだろう。

そんな客人がまず来るとしたら、サントリーホールは、最重要ホールだ。



ところが、このサントリーホール、六本木一丁目駅そばのアークヒルズという
高層ビル群の中心部にあり、人工的で高級なものしか周りに無い。

庶民的な定食屋とか、安いラーメン屋とか、
一本80円だけど、旨い焼き鳥を出す居酒屋とか。

テーマパーク的な慌てて用意しましたじゃなく、
昔から続いている汚い商店街が、近くにあれば最高なのに。

本当は吉祥寺や浅草の一角に、サントリーがあれば一番良い。
海外から来た旅行者は音楽聴いて、日本ならではの商店街で飲食して、買い物して。
クラシックは、上品な世界に置いておこうとしたのが最大の失敗。

コンサートホールや歌劇場は、映画館や劇場と同列であって、
娯楽施設の一つであるべきだ。

隣には百貨店があってもいいが、その周りには小さな商店街がひしめき合って、
素晴らしい音楽を鑑賞した後は、美味しいものを喰って買い物を楽しみたいのだ。
どうして、気取って澄ました高級街にあるんだ?



さて、今回はスクロヴァ爺さんのブルックナーだ。
実は今日、2013年10月14日もブル3(OB響)を聴いた。

今回の感想と、OB響の予習も兼ねて、ここんとこブル3ばかり聴いていたので、
ブル3そのものについて思うことがある。それは、第3番に関しては、
オリジナル(原典版)が最も面白いということ。

いろんな人に改訂すべしと言われ、本人の弄くり癖もあって、
最終稿も、なかなかの出来栄えに仕上がった。

ブル3最終稿しか知らなかったら、
これはこれで、十分素晴らしく美しい音楽に思う。

しかし、現代人はオリジナルも第2稿も知って、聴いている。
最終形態に進化を遂げる前の、ゴツゴツとした歪(いびつ)な原型は
不恰好な流れが多いけれど、作曲家が「本来」歌いたかった本心が、
最も、よく表れている。

特にブル3の極め付き、第2楽章。裏旋律のように現れつつ、
ブルックナー本体をも凌駕するワーグナーの圧倒的な旋律。

しかし、そのワーグナーをも飲み込んで変形させて、
ブルックナーと、同一化してゆく見事な変奏。
大好きな音楽を使いつつ、見事に自分の音楽に融合させてゆく流れ。
こんな素晴らしい流れを、最終稿では消してしまっている。

ところが厄介なことに、消した挙句に産み出した代わりの流れもこれまた良いのだ。
最終稿の最終形態しか知らなかったら、全く不満など思わなかっただろう。



演奏は、弦楽器が驚愕の美しさだった。弦のうねりがギュギュギュとウェーヴし、
これが日本のオケかと思うほどしなやかに鍛錬されていた。

指揮者ひとりで演奏はどこまで違うのか、とよく言われるが、
スクロヴァへの尊崇の念で、こうまでマッジクされるとは・・・。

スクロヴァ読響のブル2も同様の感慨を得たので、
もう、スクロヴァのブルックナーは絶対外れないことが断言できる。

ただ、その音を全身で浴びられる幸福に、身悶えする思いだった。
ちなみに、金管はそれほどまでには魔術が施されておらず、
金管の奥深さを、逆に感じた。

88歳(演奏時)にしてブルックナーを振ると、どうしてもテンポも高齢化、
遅くなるとお思いでしょうが、これが全く不思議。

ショスタコもそうだが、テンポが実にキビキビとしている。
速くなる箇所こそあれ、テンポが落ちることは無い。

座って振るでもなく、なんとまあ元気なマエストロだろう。
私は速目のテンポ設定が好きなので、ますます好みに合っている。

終演後の拍手は盛大だった。スタンディングオベィションをする人、
興奮と喜びを表わそうと起立して、拍手を送り続けた人が多かった。



そんな大成功の名演を堪能した中、いぶかしく思ったのが空席の多さ。
開演前は、「チケット求む」をやっていた人もいたくらいなのに、
実演が始まってみても、空席は目立った。

ドイツにはキャンセルシステムが発達していて、一定の規則を設けて、
空席である事が確定すれば追加入場とする制度がある。

夜7時開演だが、メイン開始は8時頃だと想定できる演奏会だと、
メインだけでも聴きたいファンは、買う場合がある。

そんな遅刻可能性がある情報も、事前にコンピューター登録しておけば、
ただ券バラ撒きの空席は、メイン開始十分前に再発売して上げればいい。

空席の目立つ演奏会より、ほぼ満席となった会場の方が演奏者は燃えるのは当然だし、
死ぬほど聴きたい聴衆が、空席に座れない矛盾も解消する。

一体そのシステムを完備するのに、どれだけのコストがかかると思ってるんだ、
と切り捨てるのは簡単だが、そういった対応もできないくせに、何が「おもてなし」だ。

ブルックナーはゼネラル・パウゼが有名だが、最後の最後の響きを
堪能するところまでがブルックナーだ。ところがフライング拍手、
又の名を拍手バカがどの演奏会にもいて、終わった途端に
これ聞こえよがしに拍手してしまうクソッタレがいる。

サントリーホール側もそうはさせじと、余韻を以って指揮者が手を
下ろすまで拍手するなと、開演前アナウンスで注意喚起していたのに
駄目だった。

こういう輩は日本野鳥の会の双眼鏡で特定してもらって、出入り禁止にすべし。



(隊長作)

過去のコンサート感想。

「スクロヴァ爺様のブルックナー」 な感想♪

2008年4月5日(土)14:00 東京芸術劇場
読売日本交響楽団 / スクロヴァチェフスキ 指揮
 ブルックナー : 交響曲第2番 ほか
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