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コンサート感想


2007年12月31日(月)22:00 びわ湖ホール
大阪シンフォニカー交響楽団 / 沼尻竜典指揮
司会進行 桂小米朝 / ピアノ独奏 イム・ドンヒョク
 グリンカ : 「ルスランとリュドミラ」序曲
 ショパン : ピアノ協奏曲第1番
 プッチーニ : 「蝶々夫人」よりアリアなど約20分
 プッチーニ : 「トスカ」より「テ・デウム」
 プッチーニ : 「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」
 コープランド : 市民のためのファンファーレ
 R=コルサコフ : 熊蜂の飛行
 R=コルサコフ : ドゥビーヌシュカ
 プッチーニ : 「トーゥーランドット」より「北京の民よ」

(隊長作)

東京にいたら、上野の文化会館でベトベン・チクルス楽しんでたのに..。
しばらくはそんな益体(やくたい)も無い不満を燻らせていたが、
こっちはこっちなりで楽しみがあるはず。

思い直して、得意のネットサーフィン。
調べると云うほども無く、大晦日年越しコンサートがありました。



しかも琵琶湖、びわ湖ホール。
そのまま三井寺や比叡山に行ってもいいし、足を伸ばして八坂神社で
おけら参りも洒落ている。

所謂ジルヴェスターコンサートなんですが、
こういうおふざけコンサートは初めて。

コンサートと云えば、やっぱり交響曲だし、アリアや短い曲をちゃらちゃら
やるなんて、どうもなぁ。正直、そう思ってました。
頭かたいよね。

(隊長作)

司会進行は、桂小米朝。
米朝の息子さんで、昔NHKのドイツ語会話に出てたんで、
我が隊にとっては懐かしい人。
(隊長は長い間、ドイツ語会話、イタリア語会話の物凄い愛聴者だった)

電光掲示板が舞台奥に吊り下げられ、楽曲解説やアリアの歌詞などの
字幕が入り、実に痒い所まで手が届く配慮。ギリシヤ神殿風石柱を立ち並べ、
舞台前には花壇をしつらえたり、カーテンなどの装飾はジルヴェスター。

なんだかミーハーで恥ずかしいな、と思ってましたが、いつの間にか
ノリノリになってる自分に苦笑。
ここぞと言う時は、面白おかしい方がいいみたい。



初っ端のルスランは、盛大に高速演奏。
誰もがムラヴィンスキーの演奏を思い起こしただろうくらい、
かっ飛ばしたのには興奮した。

もちろんレニングラード・フィルの精度と比べてはいけませんが、
この暴走演奏からして今夜の意気込みは大いに期待できる。

前半は通常の演奏会形式のようで、2曲目はショパンの協奏曲第1番。
実はこの名曲、数年前にようやく大好きになった曲で、何を今さら、
なんて少しも思わない。

私は時々あまりにもベタな曲が好きなんですが、この曲はずっと好きだろうな。

この協奏曲は真実が語られてると思うし、ここまで切羽詰った表現を
これだけの旋律に乗せて歌い上げてる曲も無い。

ベートーヴェンやブラームスのコンチェルトとは一線を画くし、第1楽章
前奏部ではこのままオーケストラだけで聴き続けて見たいとさへ思わせる。
このままオーケストラだけで進んでも、メンデルゾーンのスコットランド並みの
名曲になっていたのでは無いか?

しかし、そんな所であのピアノが歌いだす。

ピアニスト、イム・ドンヒョクはオケに埋もれる無く強靭なタッチで、
さすが10歳からはロシアで鍛え抜いた技巧派だ。

これまたロシア・ピアニズムゆえなのか、音色が硬く、夢見るような
ショパンの旋律に硬く引き締まった音色は微妙だった。
しかし甘いとろけるような音色もいいが、これはこれで辛辣な演奏で満足した。

第1楽章では、急ぐソリストと抑えようとする沼尻のせめぎ合いだったが、
第2楽章以降はしっくりいく。

さすが自己主張がしっかりしてるし、どこかで彼の演奏会にまた出会えたらいいな。
アルゲリッチとツィンマーマンを尊敬している、という彼のコメントが
彼の志向性を表していた。



イム・ドンヒョク終演後は、ヨン様に扮した小米朝。

後半開始時は、チョビ髭に小粋なスーツを着た小米朝。

プッチーニのつもりだったとかで、一気に座が暖まる。
下手なアナウンサー上がりの司会ではこうはいかない、
さすが落語家だ。

小米朝は落語はまだまだだが、こういった座の盛り上げは実に上手い。
今回の演奏会が大成功だったのも、彼の気遣いあってのことだった。
来年も小米朝が司会だったら、楽しいこと間違いない。

0時前はカウントダウンが始まった。
真面目なクラシック・ファンの私は、学生の頃はFMラジヲでバイロイトを
聴いていたし、大人になってからもTVでカウントダウンに興じている
ブラウン管の人たちを小馬鹿にしていた。

しかし、大勢の人たちと大声でカウントダウンを叫ぶ連帯感は、
やってみなければ分からないもんだ。
10,9,8,7・・・と思いッきし叫んでいた。
コンサート・ホール内で、大声を出したことって、みなさんありますか?
(合唱団の人は除く)

0時ジャストと共に高らかに始まったのが、
コープランド「市民のためのファンファーレ」。

(隊長作)

この曲は正にこういった時に演奏されてこそ、最高潮に盛りあがる曲ですね。
きっとあの圧倒的な演奏で、コープランドに関心が出来た人が多いはず。

【こんな曲だよ♪参考動画。】
Copland: Fanfare for the Common Man - BBC Proms 2012 な動画♪


ゼロ時ちょうどにコープランドが始まったんですが、あれは感動しました。
永らくコープランド、特に第3交響曲が好きな私は感無量の演出でしたね。
あのまま終楽章として最後まで交響曲を演奏してくれたら、もっと良かったのに。

ファンファーレが高らかに終わると共に、爆発がして銀の紙吹雪が
ホールを舞い散りました。

隊長は爆音大好き♪とか日頃は言ってるくせに、火薬の爆発音に本気で大恐慌。

(隊長作)
「ぎええぇー!」と叫ぶもんだから、隣席の私はとても恥ずかしかった。

ちなみに、「市民のためのファンファーレ」は
交響曲第3番終楽章冒頭でも使われています。
あのファンファーレの後、静々と弦楽器が続いてゆくんですが、
まあその話はいいでしょう。

3階席両脇に、合計19人もの別働隊が伏兵しており、こいつらが四面八方から
こだまのように吹き返すから、音響がサラウンドのようにグルグル廻る。

あの音響効果は素晴らしかった。

さて、他には、と言うかプッチーニのアリア集もかなりの楽曲と時間を割いたし、
私はプッチーニも好きなんですが、あんまり詳しく無いので書けません。

ただ言える事は、指揮者沼尻はオペラ向きセンスなんじゃないか、と。
かつて名フィルでマラ6を指揮した時、あまりにも押せ押せ演奏に
辟易したんですが、オペラではこの押せ押せが実に小気味良い。

悲劇性たっぷりのオペラでは、これでもかこれでもかと、
泣かせに啼かせる演奏が続く。



そんな世界に、彼の演奏はぴったりで、この人のオペラなら面白いだろうと思う。
論理的な交響曲では、違うと思うけど。

アンコールは、ラデツキー行進曲。
終盤では、大お楽しみ会。スポンサーによる景気のいいプレゼント大会があり、
当選者数が余りに多くて盛り上がった。

もちろん我々はしっかり当たらなかったけどね!
(隊長作)

でもそんなことは大したことじゃない。
大当たりな演奏会こそが、我らの大当たり。
今年は、一つでも多くの大当たり演奏に出会えますように!


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