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コンサート感想


2010年8月1日(土)18:30  豊田市コンサートホール
東京大学音楽部管弦楽団 / 三石精一 指揮
 ボロディン : 歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
 スメタナ : 連作交響詩「わが祖国」より「モルダウ」「ボヘミアの森と草原から」
 チャイコフスキー : 交響曲第4番

(隊長作)

東大音管の公演は、全国行脚が定番。
有名私大や京大などの伝統と実力を誇る国立大学も
いくつかは全国公演を行っている。

今年の東大は、つくば市、東京文京区、豊田市、伊丹市、
鹿児島市と北から南へと駆け抜ける道程となっている。

毎年同じ場所、たとえば札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡といった、
海外大物アーチストの来日公演日程みたいにせず、少しズレた中都市を
選んだ姿勢が面白い。

名古屋を選ばず、敢えて豊田としたところが
豊田市としては凄く嬉しいはずだから。



東大ともなると、全国に超強力なOBが君臨してるだろうから
各地で公演も上手く行くだろう。しかし、意外と地方では
コンサートという文化に飢えているので、有名大学がやってきたら
結構面白がるもの。

ちなみに、この日の観客動員は8割を超えていたように見えた。
1階はほぼ満席、地方公演としては大成功だったんじゃないだろうか。

東大生の対応は、実に良かった。
入口やロビーには団員と思しき下級生が受付係や案内係を
しているわけだが、そのしっかりとした挨拶やトイレを探して
キョロキョロしてるとすかさず案内してくれる手際の良さ。

この学級委員的な優等生さを、社会に出ても失わないで欲しいもの。
私の身の回りでは、東大や京大卒の人はスマートで気さくな人が多い。
逆に東大に行けなかった人の方が厄介な印象がある。
みなさんはどうでしょう?



腹ごしらえの話を少々。
豊田市に行く途上、愛知県大府市明成町にアピタ大府店という
スーパーがある。ここの西隣に、喫茶店「コルシカ・ロイド・ハウス」が
あったので、そこで昼食。

東海地方では、昔からやっている中規模喫茶店というのがそこそこ
残ってまして、少し古い建物なのに車が多く停まってるな、と見えたら
大抵「アタリ」。

喫茶店が多い分だけ競争も激しく、その戦いに勝ち抜いてきた店
なわけだから、味もまたその通り。



魚フライと生姜焼きセット、あんかけスパを頼んだが、
どちらも非常に旨い。あんかけスパは名古屋市だけでなく、
その近辺の喫茶店でも普通に定番メニューに入っている。

旨みと絡みが絶妙で、万人受けする味だろうから、
流行りだしたら速いと思うんだが、東京ではメジャーじゃない。

定食にはオクラのおひたしが添え物として付いていて、
家庭的なサービスが嬉しかった。



(隊長作)

さてさて、豊田市コンサートホールに到着。
ここは名鉄豊田市駅の東口駅前にあり、ロケーションは最高。

豊田参号館というガラス貼りのハイテクビル8階に位置し、
このビルには能楽堂も併設されているし、館内は吹き抜けに
なっていて非常にモダンな設計。



しかし我らクラシック・ヲタは、音響こそ重要。
以前も書いたが、音響はワンワン・ホールでして、もう少し時間を
経れば音響も落ち着くのかもしれぬが、最近の新造ホールは
基本的には豊潤な響きが受けるのかもしれない。

個人的には、そこそこ芯のある、響き過ぎない音響が望ましいんだが、
なかなかそういった適度なホールは見当たらない。

受付で受け取ったプログラムを開いて、驚いた。
東大音楽部部長が伊藤元重(東大大学院教授)となっているのだ。
伊藤元重といえば、ワールド・サテライト・ニュースでおなじみだし、
彼の本を学生時代テキストとして読んだ人は相当いるはずだ。

ここの団員になったらどれくらい部長に会えるか分からないが、
あの先生と話が出来るかもしれないというだけで、東大人脈の
底深さが窺い知れる。

あと団員名簿欄に、通常は学部と学年だが、東大は学部と出身地が
載せてある。全国公演するから、うちの都道府県出身は何人いるのかな?
と思う人も多いのだろう。他大学の学生は紛れ込んでいないようで、
完全自給自足できているは流石だ。



なんといっても東大なので、いっちょ書いてやろうと意気込んで
聴いたのだが、思いの外、アツい演奏なんだな。

超名門大学というのは、クールで計算的な演奏が多いと感じていたが、
ここ東大は神戸大や名大のように演奏にかける情熱がとてもアツい。
いや、いつの東大音管もそうだとは言い切れないけれど、今の世代は
非常にアツい音を出している。

ホール収容人数1,010人とキャパが小さいこともあってか、
一曲目のボロディンからして完全に音響がオーバーキャパしている。
それだけ演奏に勢いと言うか音量があると言うわけだが、
ホールの小ささに合わせずガンガン行くとこに好感を持った。

しかし、選曲プログラムには疑問を感ず。
ワセ響は昔から意欲的プログラムを年一回以上は入れてくるし、
最近は東工大や東京理科大、それに触発されてか東京外大まで
面白いプログラムが出てきている。
しかし天下の東大はマイペース。

過去3年のプログラムが載ってあったんだけど、フランクの交響曲、
チャイ5、スコットランド、幻想交響曲、ブラ4、ラフマニノフ第2番、
そして今回のチャイ4、次回のマーラー第1番。

どうです?おお!これは思い切った!!というのが無い。
2009年定演はラフマニノフ第2番と組み合わせて、
RVWノーフォーク・ラプソディ第1番とエルガー序曲「コケイン」に
ハイ・センスを感じるくらい。

ここの演奏レベルと最高度な知識水準を鑑みれば、
チャイコならマンフレッドくらいやってくれたっていいものを。
日本の保守本流は、これからも東大にしっかりと守り継がれて行きそうだ。



チャイ4演奏として感じたのは、「久々に心底デカイ音を聴いた♪」。
全国公演という長丁場の真ん中で、何が彼らをこんなに
張り切らさせているんだろうと思ったほど。

チャイ4だし東大だし、やっかみ半分で聴きに行ったけど、
予想外の爽やかな好演で楽しい気分になった。

おまけには面白い余興があった。
その地域出身の学生が指揮を執って、ドイツ民謡「歌声ひびく野に山に」
をオケも観客も全員がで輪唱する趣向だ。

毎回やっているようで、手はずは実にスムーズ。
ホールでは聴く一方の観客も、なんだか訳が分からない内に輪唱に
参加して、自分の声がホールに吸い込まれる体験が面白い。

こういうのは恥ずかしがらずに人一倍頑張って歌った方が
楽しくなるもので、まさか豊田で大声張り上げて歌う羽目になるとは
思わなかった。

(隊長作)
 

過去&未来のコンサート感想。

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