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コンサート感想


2011年10月1日(土)18:00 青山学院大学ガウチャー記念礼拝堂
青山学院大学聖歌隊 / 那須輝彦 指揮
 ラター : レクィエム ほか

(隊長作)

私は無宗教でして、自分自身は無論のこと、親の時も
宗教の絡まないお別れ会をしたいと思ってます。

そんな不信心極まりない不心得者ですが、「レクィエム」に対しては
人一倍アツイ関心を持って、生きてます。

ミサ曲には惹かれないのに、レクィエムだと俄然
重々しく神々しいものを感じてしまう。
レクィエムを書いた作曲家への心情に、思いを馳せてしまうのだ。



有名なフォーレのレクィエムは亡き父への鎮魂曲で有名だが、
このラターも亡き父のために作曲されています。
亡き母でなく、亡き父への鎮魂曲というのが、良好な親子関係を想像させます。

2011年9月に文京シビック合唱団&芸大フィルの大合唱管弦楽版で
バッチシ聴いたばかりなのに、2011年はラターの当たり年だったようで、
翌10月も連続で聴けれました。

しかも、「教会」 「聖歌隊」 「室内楽バージョン」 という
全く異なるシチュエーション。

場所と編成が違えばどう変わる?
これは楽しみです。

ただ一点残念なのは、全曲版(7曲)でなく抜粋5曲だったこと。
しかし、その演奏に接すれば、不満は全く解消しました。



さて、青山学院大学(東京青山)構内に入る。
資格試験で来たことはあるが、ガウチャー記念礼拝堂に入ったのは初めて。

ここの食堂は安くて旨いらしいので、もっと早めに来て
定食でも食べればよかった。

礼拝堂は2000年に新築されたそうで、今もピカピカ。
教会というと古くて石造りなイメージがあったが、
ここはコンサートホールとも講義室ともつかぬ心地良い空間だった。
純粋な音楽ホールでは無いわけですが、音響に違和感は感じなかった。

カットされたのは第4曲「サンクトゥス」と第5曲「アニュス・デイ」。
華やかなサンクトゥスを何故カットしたのか訝しいが、
アニュス・デイのカットは何となくわかります。
聖歌隊定演には似つかわしくないオドロオドロしさに溢れてますからね。

でも、あの地獄の淵を彷徨うような世界を経てから、
第6曲に進んで欲しかった。
まぁ、専門家ならではの事情があるのでしょう。



先月9月の演奏と、どうしても比較して聴いてしまう。
文京シビックは年輩者ならではの暖かい思いやりがいっぱい包み込んできて、
人生の酸いも甘いも掻き分けた抱擁力があった。

ところが、今の若者も負けていない。
技術面で難はあったけど、音楽と信仰と鎮魂への想いが渾然一体となって、
とんでもないハーモニーを作り上げていた。
若い純粋な力だけが産み出す、何かこう、真っ直ぐな気持ちが伝わってきた。


2011年は未曾有の大震災があったゆえ、冒頭挨拶がありました。
「歌は歌うものであって、聴くものではない。自分で歌うか、
もしくは、誰かに代わりに歌ってもらうもの。今、歌いたくても
悲しくて歌えない人がたくさん居る。その人達の為にも、
その気持ちを持って、歌います。」と語られました。



悲しくて歌えない人の為に、歌う。
ああ、そうだね、そういう歌もあるんだね、聖歌隊って凄いね、
と心から感動してしまった。

終演後ホールから出ると、礼拝堂出入口にズラリと聖歌隊が並んでいる。
全員で花道を作っていて、「ありがとうございました!」と何度も笑顔で
言ってくるんですよ。

これで二度グッと来ました。
小規模でアットホームな聖歌隊が、そう多くは無い聴衆を見送ってくれる。
胸の中がとても暖かくなり、青学すげーな、と思った。




過去のコンサート感想。

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