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コンサート感想


2010年7月17日(土)18:30  岡山シンフォニーホール
岡山大学交響楽団 / 保科洋 指揮
 保科洋 : 風紋(原典版、管弦楽版)
 レスピーギ : リュートのための古風な舞曲とアリア第2組曲
 リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェヘラザード」

(隊長作)

ときどき無性に遠くへ行きたくなる。
飛行機に乗って、海外へ行きたいというのではなく、電車を乗り継いだり
自分で車を運転したりと苦労して、遠くへ行きたいのである。
関東に居るころは、近いところで高崎へ行ったり小田原へ行ったり。
遠い所では青春18切符の各駅電車で仙台や新潟を廻った。

西方に来てからはマイカーを入手したこともあって行動範囲は広がった。
車で東京を往復するのは凄くしんどくて楽しい旅だし、信州北陸へも
複数行った。東海近畿はクルクル廻ってるけど、和歌山とか岡山鳥取まで
足を延ばせていない。旅好きを自認している私としては、非常に心苦しいものがあった。



そんな訳で、前から行ってみたかったんだよね〜、オカヤマ。
少し前まで、岡山大学出身のオッサンオブジョイトイという人が、
毎日メルマガを書いてたんよ。

日常のエッセイで、いつかは週刊誌のコラムニストになれるんじゃないか、
なんて妄想を抱いて毎日書いてたんだ。
自分がこのメルマガを始めた時期と変わらなかったこともあって、
一度メールの遣り取りもしたりして、毎日とても楽しみに読んでたんだよね。

ところがオッサン、家を買うことになって新展開?!と喜んでいたら、
節約倹約で文章に元気が無くなってきた。
たしか転職もしたりして、大変やと思ってた。
挙句にパソコンが壊れてメール配信が途切れ途切れ、
結局完全不通で終わっちまった。

あんなに毎日毎日愉快なメルマガを書いていた人が、少しづつ
変わっていく様がメルマガにも現れていて、残念で悲しかったよ。
岡山と聞けば、それ以来あのメルマガを思い出す。
あのメルマガのオッサン、いつか再開しないかなぁ。
いい味出してたんだけど、世の中は見る目がない人が多い。



さてさて、岡山への旅。
高速道路を使って、ひょいっと行っては面白くない。
一般道で行くんだ!と張り切って出発したものの、大阪神戸の大渋滞で、
あえなく高速へ。六甲あたりから高速に乗り、岡山入りしました。

ちなみに帰りは一般道オンリーで帰りました。
休み休み帰ったのもあるけど、帰宅できたのは翌日昼前。
神戸から岡山までの間が、予想以上に遠い事が実感できました。
これは浜松から熱海までがイメージ以上に遠いのと似ています。



紫色の円柱という、独特なフォルムの岡山シンフォニーホール。
岡山駅から後楽園への目抜き通りにそれはあります。
終演後、後楽園や岡山城に行ったんですが、このホールから
歩いていけます。お城はライトアップされており、四層六階黒壁、
天守閣の形態が安土城みたいで優雅かつ格好いい。



 

岡山大学は、地方大学と簡単に分類できないくらい大きな大学。
ふつう駅弁大学といわれる地方国立大学は、学部が3〜5学部程度。
ところがこの岡大は12学部もあると言うのだ。
もっとも12学部と言っても、マッチングプログラムコースを含んでおり、
マッチングプログラムコースって何なんだろう?

しかし12学部の大学ってでかいよな。
近くで言えば、神戸大11学部、広島大学11学部、鳥取大学4学部だから、
学部だけで大学の規模は語れないけれど、本格的な総合大学だということは
お分かりいただけよう。

なんで学部数に拘ったかと言うと、学部が多い=学生が多い=楽団員も
集めやすい、という図式があるから。
中小の大学だと学生が少なくて団員集めも大変、近隣の短大とか小さな
私大まで団員勧誘に廻るもんなんだよね。ま、それが意外な出会いを
醸し出して、面白い事になる場合もあるんだけどね。

岡山県内では、大学オケといえば岡山大学交響楽団しか見つけられなかった。
東の神戸も、西の広島も、百キロ以上離れている。
岡山県内で大学オケをやろうと望めば、ここに入るしか道は無いようである。

メンバー表を見ると、「清心」「川崎」「理大」と見受けられる。
「清心」はノートルダム清心女子大学、「川崎」は川崎医科大学か川崎医療福祉大学、
「理大」は岡山理科大学なのだろう。

理系は音楽好きが多いのでオケもありがちなのだが、大学HPで確認する
限りは無いようだ。自分は大学入学後は何を差し置いてもオケに入るんだ
と決めてたから、オケのある総合大学に固執してたけど、近隣大学のオケに
通うという手もあったんだな。

それはそれで面白かったかもしれない。

(隊長作)



今回はるばる岡山まできたの理由は「遠くへ行きたい」「岡大に興味があった」
こともあるが、何と言ってもプログラム。

吹奏楽では有名な保科洋の「風紋」(管弦楽版)が聴けること。
レスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリアが、滅多に聴けない
第2組曲を採り上げたこと。特にレスピーギは第1組曲もい第2組曲も
大好きなので、こいつはいいや、と思った次第。

さて、岡山の総力が結集している岡大響、やはり演奏面でも期待したとおり、
いや期待以上の演奏だった。そもそも演奏プログラムに一工夫してあるオケは
上手いもんだが、前プロは手抜き演奏が多い。

一年生初ノリと言うこともあるが、岡大の「風紋」は作曲家自身が
中後半プログラムの指揮者として控えている事もあってか、前プロなのに
充実した演奏だった。

もっとも楽しみにしたレスピーギも、私好みの速いテンポで
グイグイ攻め込み、難関の終楽章中間部からの緻密かつ微細な構造で
クレッシェンドしてゆく流れが本当に美しく、鳥肌が立った。
ああ、なんて美しい良い曲なんだろう、とここで演奏会が終わっても
岡山まで来た甲斐は十分あったと思った(おいおい)。



そうなんです、メインのシェヘラザードは一向に関心が無かったんです。
高校生の頃かな、クラシック初心者の頃好きな曲となり、ロマンチックな
物語と音楽のマッチにうっとりしたものです。

そういった心は大事にしなけりゃいけないんですが、いつしか心は
薄汚れてゆき、今ではほとんど聴こうと思わない。そのため、
このコンサート感想でも採り上げた事が、2005年4月の中野区民交響楽団
しかない。しかもその時の感想でも、やっぱりもう厭きたなんて書いている。
まったくリムスキー=コルサコフと中野区民響に失礼千万極まりない。

こういう風に書くのは、岡大響のシェヘラザードが驚異的な演奏だったから。
あまり彼の事ばかり書き連ねると、オケ全体が霞んでしまって申し訳ないし、
オケ全体がしっかりしていたからこそ彼のソロがより映えた訳だが、
もう何と言ってもコンマスのソロが驚異的だった。



メンバー表を見ずに想像すれば、どこかプロオケのコンマスを客演で
迎えたと言っても通じるだろう。音質、歌いまわし、そして何よりもあの度胸。
メンバー表では「医4」とあるので、医学部4年生ということか。
あの度胸っぷりなら、どんな繊細な脳外科手術だろうと心臓手術だろうと
可能だろう。

日頃腕自慢な奏者というのは、よくいる。
バッハの無伴奏を弾くヴァイオリニストや、マーラーやリヒャルトの
難しいソロを吹いているホルン奏者が学生にはいる。しかしいずれも
練習どきや遊びのときである。

大舞台において、一音も間違えられない、やり直しが聴かない場面で、
なおかつ歌心も忘れず演奏出来る人はなかなかいない。
彼がコンマスだからこそ、シェヘラザードを採り上げたんだろうとも思える。

まったく見事な作戦勝ちだし、その期待さへ驚嘆させてしまう名演だった。
さして好きでもない楽曲で、驚きの感動を得られる演奏会とは、なかなか
出会えるもんじゃない。




帰り道、岡山駅前まで出て、居酒屋「樽げん」にて夕餉。
車で行ったら当然お酒は呑めず、お茶とかジュースを頼むんですが、
お店の人に何となく申し訳ない。

だから「車で来たんでウーロン茶」なんて頼んでます。
アラ煮、いも煮、穴子の天ぷら、カモ葱焼き、チョリソー、塩焼きソバ・
・・とどんどん頼みます。

今度来るときは新幹線で来て、岡山の地酒も堪能したい。

  

       (隊長作)

過去のコンサート感想。

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