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コンサート感想


2010年10月23日(土)16:00  愛知県芸術劇場
名古屋フィルハーモニー交響楽団 / ブラビンス 指揮
 チマローザ : 歌劇「ロンドンのイタリア女」序曲
 メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲
 RVW : 交響曲第2番「ロンドン交響曲」

(隊長作)

名フィルの「都市シリーズ」。今回は「ロンドン」と言うが、
どうせハイドンのロンドンだろうと鷹を括ってたら、思わぬ喜び、
RVW( Ralph Vaughan Williams )のロンドン交響曲を採り上げる
ベリーグーッ快挙。この曲は、まだまだ普及していないんですが、
実にエキサイティングで描写的。



大空からロンドンの靄を突き抜け、一気にロンドン市街地に
降り立つような冒頭シーンは何度聴いてもゾゾゾォーッとする。
ロンドン市街のコマゴマとした描写を縫って、美しい旋律や
心浮き立つリズムがこれでもかと押し寄せ、作曲家の才能と
ロンドンへの想いがテンコ盛り。

こんな素敵な交響曲の日本版、例えばキョウト交響曲とか
トウキョウ交響曲とか、どうして出て来んのかね?

(隊長作)     (隊長作)

ドイツ音楽やロシア(ソ連)音楽を別としたら、
次にどの国の音楽が好きですか?

(隊長作)

通常はフランス音楽が大きなシェアを占めているのでしょうが、
私はフォーレの室内楽くらいしか愉しまない。ドビュッシーや
ラヴェルに通じていたらお洒落かと思って聴き込んだ時期もあったが、
ベルリオーズともどもフランス音楽は性に合わない。

しかし、エルガーに始まった近代英国音楽はドンピシャに嵌った。
まずは交響曲からと、エルガー、RVW、パリーと徹底して聴き込んだり
CDを蒐集し、ヒコックス指揮する名盤「ロンドン交響曲オリジナル版」に
カプリングされていたバタワース「青柳の堤」にのめり込んだ。

今では「青柳の堤」CDの、既出の半分以上は集めていると思う。
中古CD屋に行く際も、必ず「B」へ行ってバタワースを探すのだが、
滅多にない。

ちなみに、同じBでもブリテンはお気に召さない。戦争レクイエムとか
シンフォニア・ダ・レクィエムとか一通りのCDは集めて聴いたが、
結局今は聴いていない。これ昔、シンプル・シンフォニーに
苦しめられた思い出のせい。幻想五重奏曲などは佳曲だから、
もう少し踏み込んで聴き込めば好きになれるかも。



さて、感想。
冒頭、ウェストミンスター寺院の鐘の音が、さも遠くの方で幽かに
鳴っているかのように現すように、ハープが小さく奏でる。
ちなみにハープ奏者が初老の男性だった。ハーピストといえば
女性の専売特許のようなイメージだったで珍しかったが、
これがまた上手い人だった。

このハープは日本の小中学校でお馴染みの「キーンコーンカーンコーン♪」。
弦の神妙な靄の掛かった様な美しい世界から鐘の音が遠くから聴こえたら、
一気に急降下!

この急降下が第一楽章の一つの山場なのだが、名フィル演奏は
駄目だった。神妙玄妙な世界から、一気に現実の都会の喧騒に
躍り出る目覚しいシーンのため、音力の振幅が重要。
しかしそれまでの神妙玄妙な静寂な冒頭の音量がミニマムでなく、
一気に加速すべきバーストも弱かった。

可笑しな話だけど、愛知県芸劇は音響デカ過ぎるワンワン・ホール。
微細な弦のパッセージは摩滅してガラス細工のようなアンサンブルは
楽しめないけど、靄の掛かった世界を表現するには向いている。
今はそうでもないらしいが昔はもやっていたという、ロンドンは霧の都。

ロンドン交響曲もその霧とか靄みたいな世界がよく登場するので、
そういったシーンは実に自然に仕上がっていた。こんなホール音響でも、
ためになる効果があったんだと驚いた。反面、一気急展開した後の
スピーディな展開では、残像がチラつくノリの悪さ。

高速でギュギュっとエッジの掛かった動きではブヮンブヮン。
ほんとに何とかならんのか、この音響。また、名フィルの打楽器は
相変わらず強力で音量は良かったけど、ノリが悪い。もしくは、
音響のせいで時間差が生じ、アインザッツが乱れたか?

ちなみに最近聴いたロンドン交響曲と言えば、大阪シンフォニカーを
統率できた大友直人指揮。あの大友直人が、あれほど熱い演奏が
出来るとは恐れおののいたが、あれは2008年に聴いたプロオケ演奏会
最高の名演だった
(アマオケ演奏では、ダスビのショスタコ11番が最高の年だった)。



あの大友演奏と何が違うのかと思い出しながら聴いていて、
気づいたことが二点。ホールが違うこと、座席がまったく違うこと。

ホールは大阪が誇るザ・シンフォニー・ホールと鉄板だったし、
座席が舞台横の爆音直撃ゾーンだった。今回もチケット代を奮発して
良さげな3階正面席にしたのだが、舞台から遠く、バランスの取れた
上品な音しか届かなかった。いびつなバランスかもしれないが、
直撃音ギンギンの舞台周辺席の方が、面白い。


(隊長作)
 

過去のコンサート感想。

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