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コンサート感想


2009年4月5日(日)14:00 日野市民会館
オーケストラ・ナデージダ / 渡辺新指揮
 カリンニコフ : 劇付随音楽「ボリス皇帝」序曲
 ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第1番
 アッテルベリ : 交響曲第8番


4月4日夜のN響を聴いた後、
翌日のコンサートに備え八王子のホテルに宿泊。

(隊長作)

大昔、立川に住んだ事があるが、八王子「駅」には行った事がなかった。
車でなら数回街中を通過した事はあったが、立川で大体の用件は済むし、
遊びに出るなら吉祥寺や新宿がある。

そんな訳で八王子だって大きな街なんだけど、行った事がなかった。
そこで日野(私にとって初!)のコンサートに備え、八王子に宿泊し、
少し八王子を楽しもうと思った次第。

JR八王子駅から京王八王子駅を少し越えた所に、宿を取った。
その途中に、ブックオフ発見!しかも、そこそこ大きな店舗♪
ブックオフは大好きなので、1時間半ほど堪能。
気が付けば貴重な八王子散策タイムが減っている。
気を取り直して、何か八王子らしいものを食べようと調べたら、
「すた丼」が出てきた。



「すた丼」とは、「スタミナどんぶり」の略みたい。
豚バラ肉を特製あわせ醤油とニンニクを混ぜ込み、
ネギを絡めて炒めたものをどんぶりにしたもの。

載ってる肉の分量がかなりあり、
ボリュウムで不満を感じる人はいないでしょう。
肉とメシの間にノリを散らす、という小技が効いている。

生卵もセットされており、このこだわりようは
牛丼チェーンには見られない。
しかし、味の好みは・・・、私は吉牛派かな。
前から噂は聞いていたので、一度食べたかったので、良かった。

日野駅を初下車。
考えてみりゃ立川に住んでたころ、国立も国分寺も武蔵小金井だって
東小金井だって降りたりうろついたりしてたのに、なぜか日野や豊田や
昭島・青梅など、西側には全く行かなかった。
昭島や福生、青梅などに友人が点在していたが、皆が合うのは立川だった。



今の私なら、好奇心の塊で全駅下車したり、ホール突撃するんだけど。
でも、東海関西の突撃しているホールだって、結局偏ってる。
岐阜や静岡だってホールは一杯あるのに、いつも素通り。

将来、後悔しそう。
多摩方面でコレはと思う演奏会が開かれているのは、府中の森芸術劇場、
アミューたちかわ、パルテノン多摩、ルネ小平くらいだもんね。

どうやら今回旗揚げした楽団は多摩方面を地盤とするようで、今回が日野、
次回が八王子の演奏会となる。どちらも行った事が無い。

ただ日野や八王子なら横浜線で新横浜駅経由で帰途できるので、
今の私にとっては問題ない。逆に千葉・茨城・埼玉などで
コンサートがあるほうが、帰宅が困難になってしまう。

次回演奏会は大好きなステンハンマル(ピアノ協奏曲第1番)が
採り上げられるので、これも行くっきゃないでしょう。

(隊長作)

話は戻って、日野駅下車。
紺色スーツの初々しい女性が大量に溢れているなぁと思ったら、
実践女子短大の入学式が終わった後だったようだ。
八王子もそうだったけど、多摩方面は大学生が山のようにいますもんね。

日野駅南口を出て、延々と上り坂を西に行けば、日野市役所と地続きの
日野市民会館。徒歩15分と読んでたんですが、運動不足の私に
5百mの坂道がキツかった。実際二十分近く掛かった。

次回の八王子市芸術文化会館といいアミューたちかわといい、
どうしてこの界隈は駅から遠い所にホールを造るんでしょうね。
車社会だからか?



市役所前はサクラが満開。
日野市民会館は市役所に隣接しています。
お花見をしている人たちが多く、
今春のさくらを日野市で迎えようとは予想外。

この時の関東各地、どこもかしこも桜が
満開でした。暖かかったし。
日野市民会館は伝統的な
市民会館の造りで、音響はまあまあ。

特段の不満を感じなかったという事は、響き過ぎず&音が来ないという
事もなかったんでしょう。第1回演奏会だった事もあるのでしょう、
メインがアッテルベリだった訳では無いと思いますが、
集客面は致し方ないものがあった。

でも、それを差っ引いて考えれば、けっこう来てたと思うゾ。
特に老人多し。

前半二曲(カリンニコフとラフマニノフ)は全く判らず。
カリンニコフはともかく、ラフマニノフのピアノ協奏曲くらい判るでしょ?
とお思いのあなた!

第2番や第3番ならいざ知らず、第4番だって判ります。
しかし第1番はやっぱりこうやってナマで聴いてみても、なかなか掴みどころが無い。
あっそうだ!ラフマニノフの交響曲第1番の面白さが判る人なら、
Pコン第1番も判るかも。そういう曲です。

ラフマニノフの交響曲第1番初演は大失敗だった逸話は有名ですが、
この奇曲は思い入れたっぷり吹き込んでも難しい。
ましてや凡庸な演奏だと、良さが出て来ない。
でもでも、今日の演奏、ピアニスト石岡千弘さんは非常に秀逸。
オケと拮抗するくらいパワフル&ダイナミックな音量。
超絶演奏もちょこざいな、といった軽やかさ。
この人の演奏会は、要チェックです。石岡千弘さん。

(隊長作)


今回最も語りたいのは、「アッテルベリ」について。
最近大阪シンフォニカーが第6番を採り上げましたが、
今回の演奏会予告があるまで、私はアッテルベリについて知らなかった。

たまたま中古屋でアッテルベリのCD(ラシライネン盤)が数枚出ていて、
買い足していくうちに交響曲は全曲集まった。
最も有名な第6番から聴き込んでみたら、これがなかなか良い。

シューベルト没後百周年作曲コンクールで優勝し、賞金1万ドルを
ゲットしたばかりに現在も小バカにされているようです。

しかしね、第6番い限らず、どれもこれもなかなか良いんだわ。
第3番の終結部なんて、マーラー第3番より好きになったかも。
そして、今回の第8番。これが極め付け。

高校生の頃、マーラーが大好きだったのに実演に恵まれなかった。
大学生の頃、ショスタコの第7番や第10番を待望したのにライヴは聴けなかった。

今になってマーラーやショスタコは毎月のように聴けれるようになったが、
これが学生の頃だったら、どんなに楽しかった事か。



そして今、久々にハマってます。
しかも、旬な音楽のナマ体験が出来る。
なんと幸運な巡り合わせ。

とても興奮しているので、
冷静に感想が書けるかな?
現在二十五回目を聴き返したところ
ですが、第8番は好きになるばかり。

田舎臭い第一主題のあとの、なんとも堪らなく切ない第2主題を持ってくるのが、
第8番のチャーム・ポイント。各楽章第2主題の方が断然素敵なのに、
絶えず第一主題が立ち現われ、うっとりしてしまう第二主題の夢を壊す。

でもそんな鬩ぎ合いがたまらず、何度も聴かずにはいられなくなる。
まさにアッテルベリの術策にハマってしまう。

それから終楽章。
どうしようもない程、RPGの勇者の音楽。
好きな人には堪えられないんだろうが、この楽章さへ異なっていたら、
この第8番はシベリウスに並ぶ傑作とまで言える。

しかしアッテルベリはこういう勇者的な旋律が大好きなんですね。
他の交響曲でもバンバン出てきます。聴いてる方が恥ずかしくなって
しまうくらい、底抜けに前向きな勇者調マーチが。

この勇者調マーチが作品の品格を落としていると思うんですが、
自分の信じる道を大切にしたアッテルベリ。
他人の評価など気にせず、思うがままに書いた作品、
といった気持ちが伝わってきて頭が下がります。
あの流れで終楽章にあのマーチを堂々と提示してくるとは、
当時の批評も判らないでもない。
でも、なんか好きだな、こういう人。

(隊長作)

私は第一楽章から第三楽章まで、すべて室内楽的な展開部が好きです。
弦五部の透明な交叉とか、木管が絡んでくるくだりとか。
木管のリズムはまさに北欧的で、アッテルベリはスウェーデンの人なんですが、
北欧や英国やロシアの寒い音楽は本当に堪らない叙情性がある。

きっと彼らの世界では、妖精が実在するのですね。
日本には妖怪が実在するように。
アッテルベリは意図して書いたとは思えないんだけど、スウェーデン人として
滲み出てしまう北欧的切なさと、それを吹っ切ろうとする勇者調マーチの
目くるめく絡み合い。アッテルベリ独自の世界表現に成功しています。

さてさて、ナデージダの演奏については、いろんなことを感じました。
弦の各トップがプロフェッショナルで、それゆえか弦の音色がメチャンコ美しい。
チェロなんて5人で弾いているとは思われないような深く澄んだ音色で、
それいて張りも音量もある。木管も北欧的な柔らかさや軽やかさに富んでいて、
弦と木管の絡み合いはたまらなく良かった。問題は金管。

そもそもアッテルベリの第8番がおかしいのかもしれない。
これはラシライネン盤でもそうだから、オーケストレィション自体が
そうなんだろうけど、金管がどぎつく聴こえる様に書いている。



これが美しい弦と木管の世界に対立してしまい、
ある種の緊張感を孕んでしまう。

それこそがアッテルベリの
狙いなのかもしれないし、
私がもっとアッテルベリを理解していけば
判る特徴なのかもしれない。

終楽章の弦と金管の音量配分は実に良かった。

ラシライネン盤のようにやると田舎臭さ全開になっているが、今回の指揮者のように
音量配分(弦を全面に出し、金管の旋律を間延びさせることで和声進行のように
響かせる)させると、コラール風になって格好良かった。

こんな素晴らしい音楽が、日野市で日本初演なんて、本当に信じられない。
アッテルベリ、きっと人気が出ると思うよ。


過去のコンサート感想。

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